プロローグ



 死というものを意識したことがあるだろうか。自分の死を、そしてどうやって己が死をむかえるのか、ということを。
 17年間生きてきて、自分の中では己の死というのはずっと遠くにあるものだと思っていたし、まだまだどこか他人事だった。それでもこの数ヶ月、死が唯一の肉親を連れ去り、また死という存在が身近にあることで、それをちゃんと考える機会はいくらでもあったはずだと思う。
 けれどまさかこんなふうに唐突に死を突きつけられるとは思わなかった。


「痛っ」
 壁に叩きつけられ、その激痛に思わす声が漏れる。
 ヤバイなって思う。たぶん肋骨あたりが折れているんじゃないだろうか。
 動きたくてもとても動ける状態じゃない。
 体力には自信があったんだけどな。喧嘩にもね。でもそれが全く役に立たなかったことに苦笑いが零れそうになった。
 俯いていた顔をあげる。薄暗い部屋の中、死はすぐそこにある。正面から軽薄な笑みを浮かべながら近づく奴を、目を逸らすことなく見据えた。
 ここでたぶん自分は死ぬだろう。
 でも、それでいい気がした。
 彼の身代わりに死ねるとしたら、それはそれで悪くない気がした。
 彼を守って死ぬ、それは誇らしいことのような気さえする。
 後悔はしない。ここに来たことを、そして彼に出会ったことを。
 ここで自分の生命が途切れても、彼に出会えたことは自分の人生の最大の僥倖だったのだと胸をはって言える。あの幸福な日々の代償がコレでも全く構わない。
 息を吸った。呼吸に胸が痛くなる。それでも迫り来る死に言わなければならないことがある。
「ルルーシュに手を出すな」
「……いいだろう。あちらさんが復讐などといった暴挙に出なきゃな」


 意識が朦朧とする中で、最後に彼の顔が目に浮かんだ。
 もう一度会いたかったな、と考えながらも、意識が沈んでいくのを止めることはできなかった。







[2012/09/01]


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