Terrible Booing Soccer

アルビレックス新潟に軸足を置いてサッカーを論じる、時にブーイングを放つサイト。



●アルビレックス・ゲームレポート2008
第1節 vs大宮アルディージャ(AWAY) 2008/3/9


(文:オヤジ 2008/3/17)


 3月9日にJリーグ開幕戦のトリとしての登場であった(※1)アルビレックスであったが、その出来は惨憺たるもので、J1残留に関してかなりの不安を残す内容となった。


予想以上に響いたマルシオの不在

 マルシオの不在により、アルビのオフェンス力は以下のようにダウンしてしまった。

 ・タメが作れない
 ・ワイドに(ピッチを横一杯に使ったサイドアタック)攻撃できない


 タメが作れないのはシルビーニョが去ったということもあるが、昨年のアルビはマルシオが右サイドや中央に積極的に顔を出し、ボールをもらってはドリブルで仕掛け、またはキープするなどし、味方の動きを巧みに引き出していた。しかし、この試合のアルビの中盤は全くタメを作ることが出来なかった。大宮の早いプレスに無駄な横パス、バックパスを出すことが多く、鈴木監督の提唱するポゼッションサッカーは完全に鳴りを潜めてしまっていた。

 またマルシオの不在により、迫力のあるサイド攻撃もできなかった。マルシオは実にオールラウンダーな選手で身体接触にも強く、パスの精度も高い選手である。そのマルシオが不在のアルビは、タメを作れないばかりか、中盤のパス精度とスピードが落ちてしまい、パスを通すには全体的に狭いエリアでプレイすることが多くなってしまう。その結果、大宮は狭いエリアでプレスをかけることができ、アルビはボールを絡め取られることが多かった。また、中盤がサイドバックと連携してサイドを崩すこともほとんど出来なかった。


限界の見えた寺川の起用

 昨年の11月から両サイドの攻撃的なMFで先発している寺川だが、この試合でも何も出来なかった。

 寺川の起用は鈴木監督のポゼッションサッカーに対する固執の表れだと言えるが、実際に右サイドで先発した寺川は全くタメを作ることが出来ず、またかつてのスピードも無く、1対1でドリブルを仕掛けることも無くなった。つまり相手にとってはパスの選択肢しかない選手となり、マッチアップするには非常に楽な選手の一人となってしまった。

 そのような怖さの無い選手を起用することに意味があるだろうか。今の寺川であれば、ボランチの控えとしてベンチに取っておくことが上策であり、松下、亜土夢、河原のいずれかひとりをサイドに据えるべきである。

 松下には強烈なミドルがあり、亜土夢はスピードと運動量が魅力、河原は第3のFWとして積極的に相手DFを脅かすことが出来る。攻撃的な中盤なのだから武器のある選手の起用が当然であろう。

 自分のサッカーに固執するようでは残留争いをする監督は務まらない。これ以上寺川の起用に固執することは鈴木監督が自らの首を絞めていることに他ならない。寺川のサイドでの起用を継続することで、アルビは確実に降格に近づいてしまうと予言したい。

 もうテストは十分だろう。今の寺川は及第点からは程遠い。


誰にも語られることの無い審判についての問題

 今年のゼロックススーパーカップでは家本主審がカードを適正に扱えなかったことが問題となったが、この試合を裁いた片山主審も相当の贋物のようだ。

 この試合の大宮は大変ラフプレイの多いチームだった。
 特にCBのレアンドロは酷い。貴章との競り合いの際には必ずといっていいほど膝蹴りなどの「先制攻撃」を仕掛け、また危なくなれば、引き倒しや肘うちなど当たり前に行う。

 片山主審の眼は余程のガラス球で出来ているのだろう、これらのラフプレイが全く見えないようである。最初のいくつかのラフプレイでカードどころかファウルすら取られないことを確認したレアンドロは次第に調子に乗り、その悪辣ぶりは一層酷いものになって行った。片山主審は見逃してしまったことに気付いていたのかもしれないが、「一貫性」を求められる日本の主審は決して自分のジャッジを修正しない。

 そして注目すべきはレアンドロがファウルを取られないことを確認した大宮の選手たちは試合が進むにつれ、ラフプレイを躊躇しなくなったことである。特に試合が進むにつれ冨田のプレイも汚くなっていった事は見逃せない。アルビレックスの失点はこれらのラフプレイに対する抗議を行おうとした瞬間に早いリスタートをされてしまったもの。直後、永田がペドロ・ジュニオールに振り切られて失点した。

----

 審判が公正な眼を持った人物であったとしたら試合はあのように汚いものにはならなかったかもしれない。家本主審のように意味も無くバランスを取るために乱発することも考え物であるが、的確にカードを提示できない審判もまた問題である。
 片山主審は昨シーズン15試合登板、1試合平均の提示カード枚数が2.0枚(参考資料)とのことであるが、この結果は彼が的確にカードを出せない(出さない)事実を裏付けるものである。

 昨年に引き続き、大宮とのアウェーには胸糞の悪い、レベルの大変低い主審が続いた(※2)。そのせいだろうか。私はどうしても大宮のサッカーにも同様に胸糞の悪い印象が付きまとってしまう。


対応力の低さが如実に現れたアルビレックス

 さて、大宮が審判を上手く利用して(欺いて)試合を運んだこととは対照的に、アルビは試合中での対応力の低さを見事に露呈してしまった。

 試合後の会見で鈴木監督は「1失点目は選手に原因がある」という内容のコメントを発している。その理由を随分と自分勝手に説明しているが、鈴木監督はリスタートに注意しろと伝えていたようである。しかし、選手はリスタートであっさり裏を取られて失点している。注意したにもかかわらず失点しているのだから「私は悪くない」と主張したいようである。なんとレベルの低い敗戦の弁だろう。私が選手ならば、このような発言をする監督には疑念が生じる。

 「リスタートに注意しろ」と漠然と伝えられて、選手がそれを完璧に遂行するには試合前そして試合中も、選手と監督は対戦相手を分析し続け、様々な状況を判断するという練度の高い能力が要る。特集「俺たちはJリーグで6番目に強いチームじゃない」(4)でも書いたように鈴木監督は分析能力に難のある監督である。その監督に指導されている選手たちも分析・対応力は期待できないであろう。まずは監督から適切な分析力と対応力を持って欲しい。監督からガイドされて初めて選手は理解し、実行できる。

 対して大宮はどうであろうか。大宮はこの試合で審判に上手く順応したばかりでない。あらかじめアルビが高いディフェンスラインを取ってくる事を想定した上で、ペドロと吉原の「足が速く、裏が狙える」FWを用意し、ロングフィードで何度もアルビゴールを脅かした。そしてアルビの中盤のパス精度が昨年に比べ低くなっていると見るや、中盤に早いプレスをかけ、ボールを奪う作戦に出る。入念な事前分析もあるだろうが、試合中に対応できるだけの訓練を日頃から積んでいる集団に見えた。

 一方、アルビの対応力の低さは全く変わらない。そしてその対応力の低さがまるで去年の後半の悪い部分を全て引きずっている原因となっている。


その他の気になる点

・千葉と本間のパスミスの多さとポジショニングの悪さ

・永田と千代反田のパフォーマンスの悪さは本人のコンディションが低いからなのか?
それとも中盤のパフォーマンスが低下していることに起因するしわ寄せなのか?

(これらの点については次節FC東京戦で探ってみたい)


おわりに

 アルビの開幕戦はこれまでも最悪な結果ばかりだった。2005年はFC東京に4失点。2006年は川崎に6失点。
 しかし、今年の2失点はそれ以上の衝撃に私には感じられた。この感覚が降格への予感に変わらないことを切に願いたい。次節のFC東京戦、ナビスコ杯大宮戦でこの感覚が払拭できればいいのだが。



(解説)
※1:3月8・9日に開催されたJリーグ開幕戦全16試合のうち、新潟vs大宮戦は一番遅い3月9日16時にキックオフされた。
※2:2007年6月16日・アウェー大宮戦、長田和久主審は片足を上げてジャンプしただけの松下に2枚目のイエローを提示。試合を壊され1-2で敗戦。


BACK