道に迷わない為に


これは私が設計したアンプを使っているユーザーさん宅に伺ったとき、そのユーザーさんからお聞きした話です。そのユーザーさんがオーディオを始めた時、有名店のオーディオ担当者の方からこのような助言をいただいたそうです。"オーディオ機器を選ぶには、先ず半年間は自分の好きな音を探してください" 凄いですねー、こんな素晴らしい助言をする方がいらしたんですね。私は、これがオーディオ販売店の本来あるべき姿の一つのような気がします。しかもそのオーディオ販売店の担当者の方は良い音を再生していると自分が感じている他のユーザーさんに連絡をとり、様様な再生音を一緒に聴き歩いてくれたそうです。自分がオーディオが好きでなければそこまで面倒見てくれませんよね。こういう販売店さんが最良の販売店さんなのでしょう。そう言えば、私が秋葉原の某オーディオ店の試聴室にアンプのデモンストレーションに立ち寄ったとき、オーディオ欲しいのか!何!予算150万だって、そんな金じゃいい音はだせね−よ、最低250万は必要だ!とやくざな口調で対応していた担当者がいました。昔、秋葉原には結構このての販売員がいたのですね。ですから、最初に自分の好きな音を探すように助言してくれる販売店の担当者と最初に出会いたいものです。やくざのような人に出会ってしまたら、オーディオなんて嫌になってしまうでしょうから。

さて、”オーディオ機器を選ぶには、先ず半年間は自分の好きな音を探してください”と言うのは道に迷わない為に最も大切なことだと私も感じます。そして聴くのなら一流品を聴いて欲しいのです。逃してはならないのは、ウェスタンの音です。それも、ちゃんとした劇場用のウェスタンスピーカーをウェスタンの劇場用に設計された管球アンプでドライブしている音を聴いて欲しいのです。そしてウェスタンの他に、面音源のスピーカー(できたら片チャンネルで、畳で言ったら2畳ぐらいの面積をもつスピーカー、)を広いリスニングルームで再生している音を、そして昔の音場型のフロア−スピーカー(私の知っているところでは、ラウザーやワーフェデル等等、でスピーカーユニットが後ろを向いていたり上に向いていたりするスピーカーです)、そしてシーメンスのクランフィルや昔のJBLやALTECやジェンセン、ヴァイタボックス等をそして最後にフルレンジスピーカーを直熱三極感で鳴らしている音を聴いてみてください。これらの音はみなオーディオの世界における高い峰なのです。さらに私の知らない、高い峰といえる音がまだまだ存在すると思います。それらの今となっては骨董品のようなシステムの音を知ってから、現代で評判になっている様様なシステムの音を聴いてみてください。

私は何も、上に掲げたシステムの音が現代のシステムの音より良いと断言はしていません。ただ聴いてみなくては始まらないというところも有ると思うのです。そして注意して欲しいのは、これらのシステムの音に魅力を感じなかったらそのシステムが本来の実力を出していないと思ってください。本来の魅力を出していないそのシステムの音を聴いて、俺はその音を聴いたことがあると判断しないでください。その魅力を知らなければ音を聴いたとはいえないと思うのです。一流とされてきた機器には必ず人を引き込む魅力があるのですから。

そんな音は何処で聴くの?と疑問に思う方も多いと思います。これには私も返答しかねるのですが、個人個人の努力と熱意としか、私には言いえません。オーディオが好きな人には好きもの同士で通じることも多いと思います。つてを頼って色々な人に甘えてみるしかないんでしょうね。

私がオーディオがすきでオーディオの仕事を始めた頃、本物を知るには一流品を知ることが大切だと、口を開く度に教えてくれた方がいました。元気でいらっしゃったら、今はもう80歳ぐらいになっておられるであろうこの方には感謝の一言有るのみです。そして、オーディオを趣味としている人達と話をしたとき、意見が異なる原因の大半は、私が聴いてきたこれらのシステムの音を聴いたことが有るか無いかというのが大きな要因を占めていたように思います。

オーディオには高い峰が幾つもあります。その英知の塊のような高い峰を知らなければ語りえないことがあると思うのです。昔のシステムが必ずしもいい音を出しているとは限りません、でも私が挙げたこれらのシステムはちゃんと鳴らすと、どれも人を魅了する大変な魅力を持っているのを自分の耳で確認してください最初はともかく聴いて聴いて聴きまくるしかないと思います。本当に良い音を、自分がどんな音に魅力を感じるか、それを知ることが第一歩です。そして当然、生の楽器の音を聴きまくってください。生の楽器の音を聴きまくることも、オーディオで何が大切かを知るための必須条件のように思います。


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