帯域外の音は必要か


CDの音が悪いのは20kHz以上の帯域が再生できないからだと主張する反デジタル派の人がいます。20kHzからのローパスフィルターのオンオフによる生録実験をして20kHz以上の帯域の有無で音の違いを認識できたという論文を発表した大学の先生もいます。その20kHz以上の帯域は必要だという大学の先生の論文の主張が朝日新聞に掲載されていたこともあります。この朝日新聞の記事を見て呆れ返った人が多かったんじゃないでしょうか。私の周りでも。このいいかげんな話に怒っていた人も多かったのです。その理由は、その当時も今も同じです。

音が違って聞こえるのは、20kHz以上の帯域の有無が原因なのか、20kHzからのローパスフィルターを入れることにより可聴帯域に影響して音が変化したのか原因が特定できないからです。たとえそのローパスフィルターが100kHzだろうが1MHzだろうが可聴帯域に影響を及ぼさないようにフィルターを入れることは不可能なのです。このことはオーディオが好きでいろいろ実験している人ならほとんどの人が認識していることです。

これと同じ話ですが、可聴帯域外の音は必要であると主張する人が多くいます。でも、誰も前記したように、音が良くなったのは、可聴帯域外の音が聞こえるからなのか、可聴帯域外に帯域を広げたことにより、可聴対域内に影響して音が良くなったのか特定できて主張している人は私の知る限りにおいてまだ一人もいません。可聴対域外まで広げることにより可聴対域内の音を良くできた、と主張するなら判るのですが、何せ聞こえない音ですからね、聞こえない音が必要と言うのにはそれなりの根拠が必要なんじゃないでしょうか。

一度15kHzのハイパスフィルターを入れて、15kHz以上の音だけを抜き出して聞いたことがあります。ノイズと時々シンバルや何かの音がじゃりじゃりした感じで小さく鳴るだけだったので、私の個人的感想では、15kHz以上はそれほど必要な帯域ではないんじゃないかと感じました。確かに弦楽器など可聴帯域外の音が出る楽器はいくらでも有るでしょうし根拠が無いとは言えないのも確かですけれども、一度15kHz以上の音だけを抜き出して聞いてみることをお勧めします。

もしかしたら、オーケストラに犬笛などで可聴帯域外の音のだせる楽器をいれて、可聴帯域外の音が常に出ているような曲を作って演奏したらどうなんでしょうかね。可聴帯域外の楽器の有り無しで、音がどう変化するか興味があります。うーん、やはり無駄な実験かな??。今の私は、周波数特性は可聴帯域まで必要と断言はできないでいます。私が経験してきた中で音の素晴らしさに感激したのは、どれも広帯域のシステムではありませんでしたし(こんなのは理由にはなりませんけど)。

さらに低域は20Hzはおろか10Hz以下まで必要と言う人がいます。同じ事がここでも言えます。私は、モーショナルフィードバックのかかった完全ピストン運動をするスーパーウーファーで低域が本当はどのように聞こえるか試してみたことがあります。このスーパーウーファーは片チャンネルで畳2畳分の面積を持ち、振動版は発泡スチロールでできていました。つまり畳4畳分の面積を持つ振動板がいっせいに動くのです。

40Hz台は豊かな快感を感じる音でした。30Hz台になるとこれが・・・、圧迫感と不安感を感じる嫌な音でした。圧迫感で耳に痛みさえ感じました。

20Hz台に入るとほとんど聞こえなくなり、20Hz中間になると低音は全く聞こえませんでした。目の前で発泡スチロールの振動版がすごい勢いで振動しているのですが低音が出ているのかどうか判らないのです。

周波数が周波数ですので試聴位置を移動して聞いてみても判りませんでした。そのうちに眩暈を感じたのでそのまま40Hz台に周波数を切り替えてしまい、試聴室が爆発しそうな音に仰天した記憶があります。そう言えば、あの時は上の階から赤い顔をして、怒った責任者が飛んできましたっけ。共振周波数が部屋と一致していたら窓ガラスが吹っ飛んでいたかもしれません。駆動したパワーアンプには1500Wの大出力アンプを2台使っていましたから。このときも私は少なくとも低域の周波数は20Hzまでは要らないんじゃないかと感じました。なにせ聞こえないのですから。

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