1.宝塚市における斑状歯間題

 

 宝塚市では飲料水中の高濃度のフッ素が原因で歯牙のエナメル質の形成が障害されて斑状歯が発生し大きな社会問題となった。そこで市は供給飲料水が原因と推定できる斑状歯に対して、公費での治療を行なう制度すなわち斑状歯認定制度を設けた。

 その後、宝塚市は1983年に “フッ素問題の科学的な解決と共に、フッ素の医学的、歯科学的な問題を調査研究” のためにフッ素問題調査研究会を設置した。調査会の活動の一環として行なわれた研究が、1988年、『宝塚市における斑状歯認定検診資料の解析』として日本公衆衛生雑誌に発表されている。 男1049名、女1149名、計2198名の認定検診の資料を基に以下のの2点について詳細に報告されている。

 (1) 斑状歯の発生に対する飲料水中のフッ素の影響を評価すること。

 (2) 齲蝕と斑状歯の関連性を評価すること。

 

 これによれば、以下の3点 が言えるとしている。

 @ 飲料水フッ素濃度が0.5ppm程度を超えると、斑状歯の重症度が増すということが他の斑状歯地帯のデータと整合している。

  A 飲料水中フッ素濃度と斑状歯との相関で0.8ppm付近に閾値があるとは認められなかった

  B 斑状歯の重症度とう蝕のなりやすさに正あるいは負の相関がみられない

  C 飲料水フッ素濃度がう蝕に対して、生活習慣より大きな影響を持っているわけではない

  ただ、斑状歯の罹患と齲蝕率との直線的な関係に関しては、特別な関係は見られなかったが、認定・予備認定者の生年分布が広い範囲にわたっており、その間には齲蝕を促進する因子と予防する因子が大きく変化しているから、その要因の影響のほうが大きいためと考えられる、と結ばれている。