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GA-8INXPの蹉跌

LastModified 03/05/11

 「これや!」「いやでも」「やっぱり。」
(岡田斗司夫著 「オタクの迷い道」より)

というのはプラモデル業界から古より伝わる伝統芸能「買うた・やめた音頭」の事だそうな。模型屋で、プラモの箱を半分出しては眺め、また戻す仕草がまるで盆踊りでも踊っているかの様なのでこの様に命名されたものらしい。

と偉そうに言ってみましたが、かつて模型少年だった四万十川も実は結構散々踊った記憶があるなんて事は、口が裂けても言えない、もとい書けません。

しかし、それもこれももう過去の話。今じゃ模型とも足を洗って、すっかり堅気となった四万十川ですが、考えてみればPCショップにいったら実は今でも大して変わらん事している自分がいたりいます。

事の起こりは2003年2月初頭。GF4 Siuro4200がイマイチFSB133で安定せんのは、マザーのせいじゃないかと思い始めた矢先、当時入手困難と言われていたIntel7205搭載のGIGABYTE GA-8INXPが数枚店頭に並んでいるのを見掛けてしまいました。折りしも時刻はまだ午前。おそらく午後になれば無くなってしまうのは、火を見るのは明らか。

「GA-8IRXも、もう1年たってるしなぁ」
「いや、でももうすぐSpringdaleも出るし」
「やっぱ、ええ加減マザー変えても良い頃やで」
「それにしても、RAIDやらSirialATAやら、どうせ使わんもんばっかついてる物、わざわざ買わんでも」
「しかし、そうこうゆーとったら無くなるで」

と、気が付いたら小一時間も「買うた・やめた音頭」を踊っていた四万十川でありました。まあ、最終的には、

「貰える物は、ゴミでも貰え!」
「買わずに後悔する位なら、買って後悔しろ!」

という今は無き祖父の遺言に従って、買ってしまいましたよ、ええ。
Springdaleが予想より前倒しで4月にもリリースと知ったのは、買ってきたその日の晩の事でありましたとさ・・・

という訳で、GIGABYTE GA-8INXPのレビューです。が、今更デュアルチャンネルDDRが性能的にどーだとかゆーてもしゃーないので、あくまで四万十川的なチェックおよび改造ポイントについて記してみたいと思います。まあ、起動確認直後にハンダ鏝入れてしまったので、実は良くわかっていないというのが本音なのですが(自爆)


1. CMOSクリアは必需品

GA-8IRXの時もそうでしたが、今回のGA-8INXPにもCMOSクリアジャンパがありません。最近のGIGABYTEって全部そうなんでしょうか? 電池を抜けば良いって意見もあるかもしれませんが、OverClockを前提に考えた場合、やはりCMOSジャンパは最後の心の拠所みたいなものです。かなわんなあと思いつつ基板をチェックすると・・・・ 

おっと今回も、電池の横に [CLR_CMOS] なんて書いてありますね。試しに、ドライバの先にショートさせた所、そのままで機能するみたいです。

よってジャンパポストをつけるだけで、CMOSクリア機能が復活しました。ふぅ。

メーカとしてはユーザにあまり弄らせたくないという事かもしれませんが、これ位はつけておいて欲しい所ですね。

今後、[CLR_CMOS] パターンすら無くなっていく方向なのでしょうか?年々弄る余地が無くなっていくみたいで悲しいですなぁ。


2. アソコが熱いのはイ・ヤ

ノースブリッジ(Intel7205)には、金色のチップクーラが装備されています。大きさ的には、昔の無印Pentium(P54C)の頃のCPUクーラクラスといった所でしょうか。どうせ熱伝導シートでしょうから、一旦ひっぺがしてみます。

チップクーラを外してみた所です。熱伝導シートは、1mm程度の厚みがあり、熱伝導の観点からはあまりよろしくありません。ここは綺麗に剥がしてグリスを塗り直してやりませう。

剥き出しになったIntel 7205(Granite Bay)には、


RCF7205MC
SL65P
L301A194


と刻印されていました。

ま、効果の程は不明ですが、ま、お約束って事で・・・・・


3. TurboPLL取り付け

さて、お次はTurboPLLの取り付けです。随分と検索してみましたが、マザー側の機能で1MHz単位でFSBを変更可能な今時に、PLL改造しようなどという物好きな方はそうそうおりません。(いや、GA-INXPに限らず本当に驚くほど改造の事例って無いですね。)

当然ながら、改造箇所も自分で解析する必要があります。GA-8INXPは、クロックジェネレータICはCypress社のCY28378OCを使っています。しかし、悲しいかなデータシートは公開されていません。メイルで問い合わせしてみましたが、当然ながら無視されてしまいました。

うーむ、これはヒロ坊さんに泣き付くしかないかなと思いつつ、できる限り調べてみるかとパターンを当たってみる事にしました。手持ちのテスタで調べられる事といえば、Xtalへの接続、GND、3.3Vへの接続程度です。まあ、これだけでも48pin中18pinですので、やらないよりはマシですわね。

調べてみると面白い事がわかってきました。同じCypress社の他の48pinのIntel845用クロックジェネレータIC CY28323, CY28324CY28349と全く同じpinアサインなのです。そして、よくよく考えてみると、これはGA-8IRXで使われているクロックジェネレータICのはICS社 ICS 950208とも全く同じなのです。

2つの会社の違うチップで全く同じpinアサイン?? 偶然な訳はないですよね。

調べていくうちに、IntelがクロックジェネレータのデザインガイドとしてCK-408なる規格(?)を出しているらしいという事がわかりました。内容の詳細については判りませんでしが、これらクロックジェネレータがこのCK-408に則って設計されているとすれば、違う会社のチップが同じpinアサインという事も納得できます。今後の事を考えると、是非詳しい中身を知りたい所です。

CK-408についてご存知の方がおられましたら、是非ご一報下さい。

クロックジェネレータのpinアサインが判れば、後は勝ったも同然(-_☆)キラリ

clockの出力pinが接続されている抵抗をテスタで確認して、30Ω前後のダンピング抵抗が接続されているかどうかを確認する事で、clock注入ポイントを特定していきます。

1pinからの出力は1kΩ(R142)を介して3.3Vに接続されていたので、改造不要と判断しました。また、23pinからの出力が24MHzか48MHzか判断がつかなかったのですが、22Ω(R151)を介してSuperIOチップ ITE8712の49pin(Clock入力)に接続されていた事から24MHzと推定しました。

ICS 950208 のピンアサイン

Turbo PLL の取り付け

という訳で改造個所です。

48pin → R148(15Ω)右      14MHz(黄)
22pin → R150(33Ω)左      48MHz(白)
23pin → R151(22Ω)右        24MHz(赤)
3pin → Xt'al左       可変クロック(太いシールド線)

TurboPLL01(今回 AX6BC TypeR VspecUから取り外しました)の基板もいつもの様にギリギリながら、AGP横の取り付け穴に固定可能でした。ハンダ鏝2刀流でXtalとチップ抵抗を外して4本の接続を行います。久々の改造でしたが、割りとスムーズに作業できたのは意外でした。下手な鉄砲も数打ちゃって所でしょうか。

コントローラを接続して、どきどきしながら起動チェックを行うと・・・一発であっさり起動しました。いやあ、データシートも無い状態からの取り付けだったのと、PCI/AGP固定モードはどの様に影響するか不安だったのですが、少し拍子抜けです。

肝心のPCI分周比ですが、BIOS側でFSB=133, PCI=33に設定した上で、TurboPLLコントローラのBsFSB設定を133MHzに設定すれば、PCI分周比=1/4に設定可能な事を確認できました。

やっぱGIGABYTEのマザーはええなぁ、Epoxやったらこうはいかんで。

と根拠も無く思う四万十川でありました。

[2003.05.05追記]

すみません、上記全て大嘘を書いておりました。一旦は、BIOS起動レベルでは動作したと思ったのですが、実際にWindowsを起動しようとすると以下の現象が発生しました。

1. AGP/PCI固定モードに設定すると、HDDのマスターブートレコード読み込みを行わない。
2. BIOSでFSB=133に設定(AGP/PIC同期)すると一見PCI=33でwindowsは起動するが、非常に不安定でかつ、サウンドが認識されない。
#PCガイガーによるPCIクロックの読み込みはBIOS起動の一瞬のみ可能だが、それ以降はPCI供給クロックが停止するので確認不能。起動時には、確かに設定通りになっている模様なのだが・・・

という訳で残念ながら、TurboPLL取り付け改造による悪影響が発生してしまっています。2003.3.6付けでCY28378OCのデータシートが公開されていますが、これを見る限りではpinアサインは予想通りです。

固定Clockの使い方に何か問題があるかもしれないと考え、14MHzを出力する1, 48pinを足上げし、14MHzを使用しているパターン全てに固定clockを注入してみました。

CY28378 のピンアサイン

Turbo PLL の再取り付け(Xtal部はソケット化)

Xtalの接続部をソケットに変更し、Xtal直接続 とTurboPLLの可変clockを切り替えを何パターンも試してみましたが、どうにも可変clockを接続した際には、安定して動いてくれません。やはり、現状AGP/PCI固定モードでは、源発信乗っ取りは通常の方法では困難な模様です。

AGP/PCI固定モードにおいて、源発信乗っ取りに成功された方は是非、四万十川までご一報下さいませ。

仕方が無いので、今回はTurboPLL取り付けは断念せざるを得ず、全ての改造を元に戻しました。ただ、その際に48pinの接触不良によって全然起動しなくなり、原因の特定に1週間もかかってしまいまいました。

 


4. Vcore改造

GA-8INXPは、Vcore電圧、メモリ電圧、AGP電圧がBIOSから変更可能という昨今のマザーらしく結構OverClockを意識した設計となっています。BIOSで変更できても、起動時にはデフォルトの電圧で起動して、BIOSが動き出してから電圧を変化させるというのが通常のパターンです。

よって、高clockでの起動の為に今回も改造してしまう事にします。

電圧レギュレータチップはHIP6301が使用されていますので、GA-8IRXと全く同じ改造方法です。前回同様Valkyrieさんここここいとうさんここを単に真似しただけです。

ちなみに、HIP6301の位置ですが、丁度12V補助コネクタの真下になります。実はこれも今回、GA-8INXPを購入したポイントだったりします。845PE, 845GE系マザーの場合、大体Socket478の近傍に配置されており、リテンションの真下になります。

845PE系マザーがリリースされた際には、店頭で見て改造が面倒そうだったので購入を見合わせたもんで、1年もマザーを変えそこなったという経緯があったりします。ま、普通はそんな所見ないでしょうが・・・・

 

下左図の回路で改造したした結果が、下右の写真です。案の定、pinの足上げの際に12V補助コネクタを焦がしてしまっているのがご愛嬌(笑)

この改造によって、ロータリースイッチとジャンパにより以下のVcore電圧設定が自由にできる様になります。FBピンにつないだ可変抵抗でフィードバック電圧を弄る事で少し高め(BIOS読みで1.9V, Win起動後で1.85V位迄)に設定可能となりました。

以下の表は、ロータリースイッチによる設定です。負論理のロータリスイッチの手持ちがなかったので、正論理スイッチを使用しています。負論理スイッチを使うと、スイッチの数値を上げていくに従って電圧が上がっていくのでスマートなのですが。

VID4  VID3  VID2  VID1  VID0  VDAC SW VID4  VID3  VID2  VID1  VID0  VDAC SW
0 1 1 1 1 1.475 F 1 1 1 1 1 OFF F
1 1 1 0 1.500 E 1 1 1 0 1.100 E
1 1 0 1 1.525 D 1 1 0 1 1.125 D
1 1 0 0 1.550 C 1 1 0 0 1.150 C
1 0 1 1 1.575 B 1 0 1 1 1.175 B
1 0 1 0 1.600 A 1 0 1 0 1.200 A
1 0 0 1 1.625 9 1 0 0 1 1.225 9
1 0 0 0 1.650 8 1 0 0 0 1.250 8
0 1 1 1 1.675 7 0 1 1 1 1.275 7
0 1 1 0 1.700 6 0 1 1 0 1.300 6
0 1 0 1 1.725 5 0 1 0 1 1.325 5
0 1 0 0 1.750 4 0 1 0 0 1.350 4
0 0 1 1 1.775 3 0 0 1 1 1.375 3
0 0 1 0 1.800 2 0 0 1 0 1.400 2
0 0 0 1 1.825 1 0 0 0 1 1.425 1
0 0 0 0 1.850 0 0 0 0 0 1.450 0
VID4ジャンパーショート VID4ジャンパーオープン

という訳で、Valkyrieさんいとうさん有難うございましたm(__)m


5.  秋月温度計の取り付け

さて、残るは秋月温度計の取り付けです。GA-8INXPのモニタチップはGA-8IRX同様に、ITE社IT8712Fが使われています。丁度、マザー基板の左下に配置されています。

実装パターンを確認した所、GA-8IRXと全く同じでした。マザー上での接続は、CPUのB3アノードがR349(30kΩ抵抗)左側ランドに配線されており、IT8712Fの87pin(TMPIN3)に配線されています。R349の右側は90pin(VREF)に接続されています。

よって、87pinを足上げした上でR349を取り外し、B3が接続されてるR349左側ランドよりCPUサーマルダイオードのアノード出力を取り出します。

 

本来、87pin(TMPIN3)に入力されるべき信号を途中で乗っ取っる訳ですが、SuperIOチップ側でシステムのモニタができなくなる事で、パフォーマンスに悪影響(勝手に[Themal Throttling]が機能)を与える可能性があります。これを避ける為に、90pinから出力されるVREF信号を200kΩ可変抵抗を介して足上げした87pinに接続して、ダミー信号とします。IT8712のpinアサインと回路図を以下に示します。

ちなみに、久しぶりの改造だったのでどーゆーふうな回路かすっかり忘れてしまっていました(笑) 回路を思い出すに当たってはおのさんのサイトを参考にさせて頂きました。おのさんいつも、ありがとうございますm(__)m

ハードウェアモニタチップ IT8712Fピンアサイン

改造パターン

これによって、BIOSでモニターされるCPU内部温度を200kΩ抵抗で調整して適当な温度とする事が可能となります。実際のマザー上での配線は下の写真の様になります。

GNDを2箇所から取っていますが、これは周辺からGNDに接続されている適用な空きパターンを探して接続しているだけです。

改造の一番の難点は87pinの足上げでしょう。非常に細く、隣の足とも密接しておりハンダ鏝を当てるのも至難の業です。

結局、彫金用の精密工具で慎重に引っ張った所、加熱しなくても簡単に外れてしまいました。

しかし、非常に細いので、すぐにでも折れてしまいそうです。リード線を接続したら、余計な力を加えて折ったりしない様にすぐさま、ホットボンドで固定してやりました。

ここさえクリアできれば、後は抵抗をひとつ外して、ランド両方に接続するだけなので、特に難しくはないでしょう。

改造の結果、200KΩの可変抵抗を調整する事で、BIOS画面の読みでCPU温度が20℃になる様に調整できる事を確認しました。


6. All Systems Go !

今回はDDR電圧の改造箇所の特定ができなかったので、最終的には以上の5項目について手を入れる事となりました。サーマルダイオード出力の取り出しについては、拡張ブラケットにRCAコネクタを設置する事で取り回しを容易にする様にしています。

改造を終了したGA-8IRX

上の写真では、CPUおよびKENDON CPU Radiator(KR-1) 用取り付けステーを取り付けています。

ふう、やっと準備が整いました。此処までの改造で1ヶ月もかかってしまいました。これより、マザー交換によるCPUの空冷限界チェック、メモリ限界チェック、UltraVapoによる冷却動作チェックに入っていきたいと思います。問題は、Springdakeが出る迄にできるかどうかですね・・・・


7. 独り言

という訳で、なんとかGA-8INXPを使う準備が整いました。四万十川的には、前回のGA-8IRXから1年を経て最近のマザーに対応する為(来るべきSpringdaleに備えて)の調査を兼ねて・・・・という意味合いでしたが、内容的にはGA-8IRXと内容的には殆ど同じという結果になりました。

しかし、よくよく考えてみれば、TurboPLLの取り付け、Vcore可変改造、秋月温度計の取り付けといったこれらのテクニックは、440BX時代に確立された技術です。つまり4年前から殆どやってる事は同じという事になります。。

半年も経たないうちにプラットフォーム(チップセット)が切り替わるという昨今の状況についていくのがやっとという側面もありますが、それにしても進歩が無い・・・・

まあ、そんな事言いながらもSpringdaleが出たらまた買ってしまうんでしょうね、きっと・・・

 「僕は天国と地獄をいったりきたりしている気分で、[買うた・やめた音頭]を
踊り続けるしかなかった。」

(岡田斗司夫著 「オタクの迷い道」より)

[2003.05.05追記]

という訳でTurboPLLの改造の失敗であーだこーだしてる間に、結局Canterwood(875), Sprindale(865)の発売には間に合いませんでしたとさ。

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