午前7:00、ブライアンはまだ寝ていた。今日は仕事が休みだからだ。

だが、そんなときに突然電話が掛かってきた。

「はい、ブライアンですけど」

「僕だ、ジョニーだ」

「ああ、あのハチロクのチームのリーダーね、再戦の申し込みかい?」

「それは当分後だ。それより昨日は迷惑かけてすまなかったな」

「あれか、あのいきなりメガホンで怒鳴って来たやつのことか?」

「そうなんだ、今後はああいうことのないように厳重注意をしておいたか

ら、許してくれ」

「なんだ、それだけで電話してきてくれたのか」

「まあその件もあるんだが、君に挑戦状が来てるんだ」

「え?誰だよ?」

「マサオってやつでな、昨日の君の走り、つまり昨日君が対戦した時だ、

あの時にマサオってやつが偶然見ていたらしくてな、是非対戦したいって

言ってきたんだ。どうだ?ダメなら断るけど」

「あれは俺が運転してたんじゃないんだよな」

「なんだって?だったら誰が?」

「リサって人、俺のチームの人なんだけど、とにかく上手くてさ。オンナだか

らって甘くみちゃいけないって改めて思い知らされたって感じだったな。凄

いぜ!」

「じゃあそのリサって人が俺のタクヤ、いや昨日の相手に勝ったってことか?」

「そうなるな」

「そうか、じゃあその人に言ってくれないか?」

「何を、バトルの申し込み?」

「いや、逢ってみたいって人がいてな、オンナだけど」

「ああいいけど、でもすぐに受け入れてくれるか分からないぜ。いきなりだし」

「とりあえず聞くだけ聞いてみてくれればいい、お願いだ」

「分かった。じゃあそうやって言っておく。でも、相手に断られたとしてもストー

カー的な行為はするなよって言っておいてくれよ」

「それは絶対言っておく」

「じゃあ電話切るな」

「わざわざ悪かったな、こんな朝早く」

「いや、俺も今起きようと思ったところだったから気にしてないぜ、じゃあな」

「それじゃあ」

ジョニーからのモーニングコール、いきなりだったので少々困惑気味かと思った

ら意外に冷静に対応していたブライアン。ただ眠いだけだったのかもしれない。

今日は久々にスポコンショップ、「ハーリーショップ」に行く事にした。主にシビック

等を得意とするショップで、この辺のスポコン野朗にとってはうってつけの場所だ。

まだ開店時間からは程遠かったので彼は眠る事に決めた。

その頃、あるチームが会話をしていた。

「例の「ユーロスペシャル」はどうだ?」

「ああ、まあ現在準備段階だ。凄い車になりそうだぜ!」

「そいつは楽しみだ。昨日は調子こいてる金持ちセブン軍団をやっつけたから気分

いいぜ!」

「あの空御寺兄弟とか言ってほざいてる奴ら、上等なんだよ!」

「金持ちは嫌いだからな、昨日は徹底的に叩きのめしてやったぜ!」

「あいつら今ごろ同金持ち仲間に顔合わせできないぜ!」

「だって、セブン乗りがステップワゴン乗りに負けたんだぜ!(笑)」

「車の性能が出し切れてないんじゃねえの?」

ユーロスペシャル?車のようだが、なんなのか?話からしてみるとステップワゴン乗

りがいるチームみたいだ。5台体制、あちこちから違うジャンルの音楽が聞こえてくる。

トランスにヒップホップ、クラシック、ラップ、そしてユーロビート。セブンのチームを倒した?

一体このチームは?

ブライアンが目を覚ました。丁度9:10位だった。すぐ着替え、昨日買ったおにぎりをほう

ばり、急いでショップへ向かった。自宅からショップまではおよそ20分程度。付いた時間

は9:40分を示していた。ショップの駐車場にはなんだかオーディオカー的な車の集団が

停まっていた。だが、エンジン音は大きい。それにボディグラフィックスが入っている。って

ことは…?ブライアンはその彼らに話し掛けてみる事にした。

「君らさあ、今来たとこ?」

「俺らか、あんたはどこの走り屋だ?」

「俺か、俺は首都高だ。そっちは?」

「俺らは3京で主に走ってる。他のやつらもチームの一員だ。チーム名は「MUSIC EX

PRESS」だ。あんたはどこのチーム所属?」

「アトラクションであったような名前だな、俺はイエローフレイムズってところだ。レベルは中壁程度だ」

「そうか」

「そうだ、名前聞いてないな、名前は?」

「マサオっていうんだ。そっちは?」

「俺はブライアン」

「聞いたことのある名前だな、確か…。いやなんでもない」

「知り合いにブライアンってやつがいたのか?」

「ああ、あんたじゃないけどいたんだ」

「そうかい。車はどれ?」

「この黒のアコードワゴンSIRだ」

「スポコンはいってるじゃんかよ、中々いいな」

「そうだろ、自慢の車なんだ。オーディオじゃ誰にも負けない仕様になっている。自信ある

ぜ。勝負するか?」

「音の大きさ勝負してどうすんだ?俺のはあのシビックタイプRだ。ターボをつけたんだ」

「ボルドインターボか、タイプRに入れるなんて、変わってるな」

「環状線じゃあ当たり前だぜ。峠走るわけじゃないし、あれくらいが丁度いいくらいなんだ」

「ほう、分からんもんだな。おっと、開店の時間らしいぜ」

「じゃあな、俺はすぐ買うものがあるんで。そっちは行かないのか?」

「俺らは用ないからさ。じゃあな。バトル出来たらしような!」

「もちろん、望むところだ!」

ブライアンはマサオと話しているうち、何かに気づいた。「ブライアン」という名前。そういえ

ば自分以外にも…。

ブライアンは店に入っていった。新しいホイールを買う見たいだ。

「いらっしゃい、ブライアン。なんのようだ?

「テンゾRのホイールを買いに来た」

「テンゾRか、今人気で中々仕入れできないんだよな。一応これならあるけど」

「POKE−10か、それじゃなくてRS−5ってのが欲しいんだ。あるかな?」

「そりゃないな。皆買っていっちまうからさ」

「おいおい、常連の俺に取っておいてくれよ…」

「そりゃしたいけど、どっかの客がたくさん買出ししちまってさ、それで今日は品揃えが悪

いんだ、すまないな」

「店長のせいじゃねえよ。その買出ししたやつが悪いんだよな。で、あとは何がある?」

「ミーン6と、フュージョンRってのだな」

「じゃあミーン6でいいや」

「本当悪いな。一週間待ってくれば多分届くと思うがな」

「いいや、でも買出しなんて、チームで買ったのかな?」

「そうみたいでさ、6セットは買っていったかな、おかげで人気のテンゾRは持っていかれち

まったってことだ。断る訳にはいかないだろ」

「そりゃそうだろう、商売だしな。ま、いいさ、あとテンゾRのステッカーも貼っておいてくれよ」

「分かった。じゃあ近くにゲーセンあるから遊んでいてくれ、できたらメール送る、じゃあな」

「宜しく!」

ブライアンはホイールの装着が終わるまでゲーセンで遊んでいる事にした。

店内に入ってみると普通のゲーセンだった。まあ普通なのは普通なのだが…。

(クレーンゲームで遊んでるか)

彼はクレーンゲームで遊ぶ事にした。久々のクレーンゲーム。100円を入れて、クレーンが

動いた。お目当てのミニカーの真上にクレーンをつけ、そして…?残念、失敗だった。

(あーあ、やっちゃった。まあしょうがないな)

諦め、他のビデオゲームをやろうとしたその時、ある客が店に入っていった。なんだかきょろ

きょろしている。まさか強盗?だがその客は奥の方に入っていった。

(何だ?あんなところになんか有るのか?)

ブライアンは興味深々だった。そして、こっそりとその人の後をつけ、見てみると、その客が突

然喋りだしたのだ。

「758493610372858374927583926598474860364062046326。雷と羽根!」

どうやら暗号のようだ。だがこれほどの暗号を覚えるにはよっぽど記憶力がないと無理だろう。

と、突然ドアが開いた。彼はそのままなかに入っていった。ブライアンも入ろうとしたが、すぐ閉ま

ってしまった。

(暗号が必要なのか、ちきしょう!あんなの覚えられる訳ないだろ!)

ブライアンは最後に言っていた暗号を言った。

「雷と羽根!」

すると、ドアは開いた!

(なんってこった!開いちまった!やべ、気づかれるかも!)

彼はいそいで隠れようとした。だがムダだった…。

「誰だ!?」

「ああ、ここトイレじゃないんですか?失礼しました」

「君は…ブライアン君?」

「何故俺の名前を?」

「私だよ、ビリーだよ」

「あのイギリスでBMWZ3乗ってたビリー博士?なんでここに?」

「まあ後で説明するから中に入ってくれ」

「じゃあお邪魔します」

ここは一体?何がなんだかわからなく混乱しているブライアン。ビリー博士がそんなブライアンに

話し掛けた。

「まあここにでも腰掛けなさい」

「すいません、でビリー博士はなんでここに?」

「ああ、実はある死亡事故の検査をしていてな、その原因解明をするために日本に来ているんだ。

まあ公の場所でやってもいいのだがな、ちょっと事情があってここで検査しているんだ」

「事故って?」

「首都高で5年前に起きた「シビック事件」ってのを知っているか?」

「事故なのに事件?殺人でも起きたんですか?」

「いや、そうじゃないんだが、不思議な事故でな、説明しよう。私の知り合いのトシオ教授が丁度仕事

が終わって帰る途中、まあ夜だったかな、丁度走り屋が走っている時間帯で、その時だった。教授の

目の前で走り屋と一般車の事故があったんだ。派手な事故でな、教授もびっくりだったらしい。教授の

話だと車種は走り屋のほうがホンダシビックEG6型、相手の一般車のほうがホンダシビックVTIだった

らしんだ」

「博士、その教授ってどうやって車種を特定できたのさ?車の専門家とか?」

「まあ車の専門家といえばそうなるな。教授は工業科の担当だったからな。車は大好きみたいで、学校

内でも有名だったらしい。それは置いておいてさっきの続きだが、そこからが大変でな。一般車の方

は母親と子供が乗っていて、車から「助けて!」って声が聞こえたらしい。教授は車をとめ、まずはその

親子から助けようとしたんだ。そしたら、突然走り屋のシビックが爆発しだしてな、これにはまわりもびっくり

したらしく、すぐ近くを走っていた走り屋が駆けつけて、仲間を呼び、車内に備えていた消火器で火を消そうと

したんだ。だが、火は全く消えなくてな、教授は親子の方を助けようとしていて、それど頃じゃなかったらしい

みたいだったけどな、でもその時はよく覚えているらしいぞ」

「で、その走り屋はどうなったんだよ?」

「無事救出はされた。レーシングスーツにヘルメット装着で助かったらしい。だが親子の方は子供はかすり傷

で済んだのだが、母親のほうは…」

「亡くなったのか?」

「亡くなってはいないのだが、息はしているのに目は覚まさないんだ…」

「それって、植物人間ってこと?」

「そうなるな。だが、この事故、いやこの事件の重要な点は爆発シーンなんかじゃない。事故の原因なんだ」

「事故の原因?」

「そうだ、実は走り屋の方は停まっていたらしい」

「…ん?停まってた?」

「そう、停まってたんだ。そこに一般車のシビックが突っ込む形で…」

「それじゃあ、責任は走り屋じゃなくて一般車?」

「そういうことになるな。で、実はその走り屋と親子の関係は家族でな」

「家族?どうしてだったら突っ込んだりするんだ?」

「それが、その時母親が運転していたんじゃないらしいんだ」

「何で分かるんだ?」

「運転がおかしかったからだ。それに、運転席の人の首が横になっていたのも教授ははっきり見えたらしい」

「居眠り運転じゃないの?」

「だが、その時周りの見ていた人の証言だと娘がハンドルを握っていたとか…」

「なんだって?!、だったらその娘が…」


過去の事故?ビリー博士とは?そして5年前に起きた事故の真相とは?ブライアンと何の接点があるのか?

第10部に続く!

今回は長くなってしまいました…。それにしても、何部まで続くんだろう…。