夜11:30、ブライアンは環状線内回りで何度もタイムアタックして

いた。もちろん、最速記録の更新でもあるが、例の伝説の走り屋

に会うためでもある。このTAは個人でやっているので、公にその

タイムが公表されることは恐らくない。あったとしても、誰も証拠が

ないから信じてくれないだろう。

(もう5周は走ってるな。さすがに疲れた…。これで最後にするか)

隣に座っているリサはまだ寝ている。これほどのGを全く感じない

のか、リサは不思議と目を一度も開けていない。

車は芝公園シケインに入ろうとしていた。その時だ、一台まぶしい

HIDライトの車がこっちに近づいてくるではないか。例の走り屋か?

「来た来た!やつだ!今日こそは逃がさないぞ!」

と、準備万端のブライアン。だが、

(あれ、なんか違うぞ、あんなにスピード遅かったっけ?)

どうやら違ったようで、ブライアンの勘違いだったみたいだ。もう諦め

かけた、その時、

「なに、パッシング?俺と勝負する気か?」

なんと後ろから来るライトの眩しい車がブライアンのシビックにパッシ

ングしている。どうやらバトルの挑戦状みたいだ。

「上等じゃねえか!今日は物足りなかったからな。ぱっぱと終わらせ

てやる!」

ブライアンはいつでもOKな状態だ。そして、スピリットメーターのスイッ

チがONにされた。そして、いきなりメガホンで叫んでるのが聞こえた。

「おい、聞こえるか?聞こえるならハザードランプをつけろ!」

後ろのパッシングをしてきた走り屋みたいだ。何かメガホンで喋ってる。

「俺はタクヤだ、お前はブライアンってやつだろう!ジョニーさんがお前を

倒す前に俺がお前を倒してやる!覚悟しろ!俺は、拓海みたいなやつ

でな、テクニックだって自信あるんだ!お前なんかイチコロだ!シビック

なんか上等だ!俺のハチロクに比べればカスにすぎない!悔しかったら

俺に勝ってみろ!」

ブライアンは相当キレていた。リサも起きたようだ。だが、ブライアンはどう

せ馬鹿が喋ってるだけだろうと無視しているふりをしたが、リサは、

「何あの人!自分は拓海だって!アホじゃないの?」

「そうだな、アホの塊だな、ありゃ。精神科行った方がいいかもな」

「ねえ、悔しくないの?あんな事いわれて!」

「相手にしてないから、どうせああいうやつに限ってつまらないんだよな」

「だったら、ウチにやらせて!」

「ええっ!なんだって!?」

「いいでしょ?ああいうやつムカつくの!」

「まあいいけど」

「じゃあすぐ交換ね!」

「ああ」

リサがバトル!?ブライアンは驚いた!これほどまで怒ったリサを見るの

は初めてだからだ。二人はすぐ席を交換した。

「ねえ、この車って駆動方式何?」

「FFだよ」

「ありがとう、ウチ絶対に負けないから!」

「ああ、俺はじっくり走りを見せてもらうよ」

ブライアンはどちらかというと争いを好まないほうで、今まで喧嘩などほと

んどした事がないというほどだ。それに対し、リサは…。カウントがスタート

した。

「3,2,1、GO!」

バトルスタート!丁度シケインを抜けたところで、次はヘアピンにさしかか

ろうというところだった。相手のタクヤ、彼は86POWERSの一員で、ジョ

ニーの心酔者でもある。なので、ジョニーを侮辱したやつには復讐するという

アブないやつでもある。自意識過剰で、自分のことを「拓海」と思い込んでい

る。乗っている車ももちろんハチロク。トレノGTVだ。

「ねえ、この車アンダー強いね」

「まあな、FRと違うからな」

「でも結構いいかも」

「そりゃありがとう、でもこいつそう簡単には乗りこなせないんだよな」

「ウチのセブンよりかは扱いやすいわよ」

「あああれね、あれは別だけど」

リサの突っ込みはものすごいことで有名だった。チームではナンバー3の実力

の彼女の走りは、ブレーキングの達人とまで言われている。実際は、凄い度胸

の持ち主で、その度胸のおかげで、あの突っ込みができるのだ。

(なんだ?俺なんかより凄いよ、体がこわばってるぜ、こいつはすげえかも…)

ブライアンでも拒否反応するほどの突っ込み、リサの度胸がどれだけ凄いかが

分かるだろう。ブライアンはチームではナンバーワン、その彼でさえ、彼女の突

っ込みにはビビっている、それほど凄いのだろう。

(なんでだ?ブライアンとか言うやつ、強い!)

自意識過剰なタクヤはブライアンをなめていたようだ。しかし、運転しているのは

リサなので、相手がそれを知ったら…。

勝負はあっという間についた。リサのSPはまだ80%もあった。

「はあ、疲れた。なんか凄くすっきりした感じだよー」

「そりゃ良かったな…。でもマジで凄いよ、君の突っ込み…」

「そう?これでも遠慮したほうなんだけど…」

「ええっ?!あれで!?マジ!?」

「そんな驚いた顔しないでよ(笑)。本当だよ」

「そうか、別にいいんだけどな…」

ブライアンは一気に眠気が覚めたような感じだった。

「なんてことだ、これじゃあジョニーさんに顔向けができないじゃないか…」

タクヤは、自分の情けなさをつくづく感じた…。

その後、二人はとりあえずブライアンの家に向かった…。結局今日は伝説

の走り屋に会う事が出来ずに帰ることとなった…。


リサの走りにブライアンびっくり!いつ伝説の走り屋に会うことができるのか?
第8部に続く。