カウントが始まった。いつもの通り専用の機械「スピリットメーター」がカウント

をする。

「3、2、1、GO!」

バトル開始!立ち上がりではマイケルのGT−Rが圧倒的に勝っていた。ブラ

イアンも負けじとアクセルを踏む。最初のコーナーとなる芝公園シケイン、元々

ドリフトな得意で、ほとんどのコーナーをドリフトでクリアするブライアンだが、今

日は敢えてグリップ走行でクリアした。相手のマイケルは迫力の4WDドリフト

をぶちかました。

(たかがシビック、モンスターのR32には勝てるわけがない。馬力が全てなんだ

よ、この世界は!)

マイケルは見た目に合わず、豪快にコーナーを攻めるタイプで、そのためには

馬力が全てだと考えていた。だが、その考えが今回の結果を生むことになるとは、

誰が予想していた事か…。

「今日は路面が悪いんだよ、いつもよりなんか滑るんだよな」

「そんなことまで分かっちゃうんだ!でも前のGT−R、凄い派手なドリフトでクリア

していったよ、よくスピンせずにクリアできたよね」

「それは相手の車がトラクションコントロールつけてるからだろ。でもあんな走りして

たらタイヤがすぐダレるぜ」

ブライアンはあらかじめ作戦を立てていたのだ。ここ最近のR乗りは豪快な走りをす

るのが特徴で、特にドリフト走行がR乗りの中で一般的となり、今までの安定走行

とは全く違う物となってしまったのだ。そして、馬力を上げてナンボと言う感じにもなっ

てしまったというのも事実。それで、小中排気量の車を追いまわすR乗りが増えたのも

この「馬力主義」の影響だと思われる。その性質をブライアンは上手く利用して…。

(なんてやつだ、私のRについてきている。いや、それは間違いだ。どうせ直線で引き離

すんだ、何にも心配はないはずだ!)

ブライアンのスピリットポイントが少なくなっていく。だが、ブライアンは余裕の表情だった。

そう、この出来事が起こるのを彼は待っていたのだ。

環状線外回りでも難所とされている千鳥ヶ淵コーナーが迫ってきた。

(どうした?やたらと滑るな、タイヤが擦り減ってるのか?それともTSCが壊れてるのか?

どういうことだ、でもあのコーナーを抜ければ、私の勝ちは目前だ!あのコーナーさえ抜け

れば!)

だが、そんなマイケルの考えは外れていた…。

ブライアンのシビックが右車線にきた。相手のマイケルのGT−Rは左車線にある。そして、

両者フルブレーキング!だがここで明らかな差が出てしまったのだ。シビックはグリップを掴

めたのに対し、GT−Rは突然フロントが言う事を聞かなくなったのだ。アンダーがもろにでた

証拠なのか?全くハンドルをきっても曲がらない、焦るマイケル。さらにステアをきり、それで

も車は曲がってくれなかった。とうとう、挙句の果てにはウォールヒット!サイドミラーが潰され

た状態になり、車の左側はボロボロの状態だった。

「なんてことだ、私のRが負けた?いや、私が負けたのだ。私が甘い考えをしていたからだ…。

ブライアンか、なんてやつなんだ、普段は派手なドリフトをすると聞いたのでどんなのか楽しみ

にしてきたと思ったら、グリップ走行で…、あれにも訳があったなんて…。それに気づかなかった

私が馬鹿だった…」

そう、ブライアンがいつものドリフトをやめてグリップ走行にした訳は、実はアスファルトの荒れ方

が酷かったからだ。いつもはない砂と埃、彼はこれに気づき、とっさに変換したのだ。ドリフト走行

は派手な分、タイヤを余計に消費する走行方法なので、増して滑りやすい路面でスピードの出る

首都高でドリフトをしたら後先どうなるか・・、ブライアンは先に予想していたのだ。

その後、レッカーがやってきた。左サイドがボロボロだった。

「まあこいつは酷いな。車に謝っといた方がいいぜ」

「そうだな、今日はいい経験になったよ、ブライアン」

「もっと中排気量の車からきっちりと練習した方がいいぜ。Rは乗る人を選ぶからな。そうだな、

インテグラはどうだ?初心者は大抵そこそこ馬力のあるインテを選ぶから、乗り換えれば?」

「そうしたいが、チームがR主義だからな」

「そうか、じゃあしょうがないか、だったらNAのGTSをR風にして乗るとか?」

「そうするように努力するよ」

その後、マイケルは仲間の車に乗ってその場を去った。

「今日凄かったじゃん!でもなんで路面が荒れてるって分かったの?」

「さあな、勘ってやつだよ」

「勘でも凄いじゃん!」

「そう?(笑)」

「そうだよ!さすが!」

「そういわれるとなあ(笑)」

二人を乗せた車は辰巳PAに再び戻った。そこにはメンバーが二人いた。

「凄いな、お前!最初の頃と比べるとずいぶん成長したな!」

「ありがとう、シンジ」

「そうっすよ、ブライアン先輩かっこいいっす!」

「コウジもありがとう」

「でも今日はやる事ないな、もう帰るか」

「そうするか」

「あれ先輩、リサは?」

「ああ、彼女なら俺の車の中だ。今寝てる」

「へえ、それじゃあ今日は解散だ」

「じゃあな、二人とも」

ブライアンは辰巳PAを後にした。

そして、今日のもう一つの目的、例の「走り屋」に会いに行く事にした…。



例の走り屋に再び会うことが出来るのか?第7部に続く!