憧れのベントレーに乗れると思うと、心臓が破裂しそうな感じ
でしょうがないブライアン。
「すみません、リサという者なのですが、娘さんに頼まれたベン
トレーお届けにきました」
「あら、それはどうもですわ」
「あと、出来たらでいいんですけど、そこの彼がこのベントレー
に乗りたいといってるのですが…」
「ええ、いいわ」
「どうも、ブライアン君、大丈夫よ!」
「マジで!?やった!今日は最高の日だ!」
ベントレーに乗れることが決まるとブライアンはもう我を忘れてい
た。そして、憧れのベントレー・アルナージに乗り込んだ。
「これだよ、このスピリット感がたまんねえ!」
彼はそこの家の庭にあるテストコースを走らせてもらっていた。
高級感のある内装、だがブライアンはそれが目的ではなかった。
このアルナージは、「世界で最も楽しいセダン」とベントレーが自負
する車で、名前の由来もル・マンのコーナーの名前からとっている。
ブライアンがこの車に乗りたかったわけは、この車の性能を楽しみた
かったのと、ある深いわけがあってのこと。ある深いわけ、先ほどリサ
が見つけたあの写真が関係している。
午後9:00、その社長令嬢が帰ってきた。
「今日はありがとうね」
「いいえ、とんでもないわよ」
「で、車は?」
「今お母さんの許可をもらって私の友達が走ってる」
「ふうん、物好きってことね、その人」
「そうね、ベントレー大好きだからね」
「あ、戻ってきたみたいよ」
ブライアンはもとの玄関のところに戻ってきた。」
「あ、どうも、あなたがあの社長令嬢さん」
「まあそう言われるとねー。今日は修理ありがとうね」
「いいえ、仕事ですから。この車走ってて面白いですよね」
「ええ、私も気に入ってるのよ」
「そうですか」
「あ、ちょっと用があるからこれで失礼するわ、今日はありがとうね、二
人とも」
「それじゃあ」
彼女は家に帰っていった。二人はシビックに乗った。
「ねえ、さっきの写真のこと、話してよー」
「あああれか、あれは俺がまだマン島でローリングライダーやってた時
の話だ。俺は一回クラッシュして死にそうになった事があってな」
「ウソお?本当に?」
「ああ、酷いクラッシュだった。それで俺は病院に運ばれたんだ。その時
俺は酷い怪我をもちろんしていた。まあ死にそうだった位だからな。医者
の話だと、俺は手術が必要になったらしんだ。でも、俺は保険に入って無
くてな、親はいないし、かといってとっても高いからぱっと用意できるような
金じゃないし、ローンって手もあったけど、それじゃあ時間がかかる、結局
手術できない状態になっちまったんだ。そんなときに、一人の紳士、俺の命
の恩人がお金を出してくれたんだ。その時はびっくりしたな。顔もお互い知ら
ない同士で、初対面の人に莫大な金を俺にくれたと思うと、なんか仕組んで
るか、心のやさしい人なのか、よく分からなかった。手術は成功した、まあ成
功しなきゃ俺は今ここにいないけどな。それから、俺はその人にお礼が言い
たくてその人を捜したんだ、でももういなくてな。その後俺は3週間で退院した
んだ、医者もびっくりのスピード回復だったかな(笑)。退院した後すぐ、その人
を俺は捜し続けた。なんとしても絶対見つけ出してみせるってな」
「で、その人見つかったの?」
「ああ、ロンドンで宝石店をやってた人だって分かってな。俺は15回は頭を下げ
まくった。その紳士は「いいえ、ほんの手助けをしただけですよ」って言ってたけど
俺に取っちゃ命をもらったもんだからな。で、金は絶対返すからといったら「なあに、
お金は心配ありませんよ、それより元気でなによりです」と一言いって、「ちょっと用が
ある」って出かけちまって、せいぜい記念、まあ記念じゃあおかしいな、とにかく写真を
一緒に撮ってもらうことにしたんだ。その時、後ろに写ってたそのベントレー、俺はそれ
を捜してるんだ」
「でもイギリスにあるんじゃないの、それ?」
「それが、俺もそうおもってイギリス中を仲間に手伝ってもらって、捜したんだ。けど見つ
からなくてな、しかし、ある情報が飛び込んできてな、「そのベントレーは日本にある」だ
なんて情報が飛び込んでな、「その持ち主も日本にいる」って情報も入ってきたんだ。そ
れで俺は日本にやってきて走り屋稼業やりながら、ベントレーオジサン捜してるってわけ
だ。そのベントレーには特徴があってな、ホイールがブラバス製で、普通のベントレーとは
違う音がするんだ、なんていうかスーチャーの音が」
「それであんなに乗りたがってたのね」
「まあ元々ベントレーが好きだってのもあるけど、さっきいった理由の方が大きかったな」
「へえ、あ、もうすぐ辰巳PAだよ」
「そうだな、今日はどことだっけ?」
「今日は「カード・スペシャリアン」ってチームよ」
「対戦相手は?」
「マイケルって人、ブライアン君と同じイギリス国籍で、出身はポーツマスだって」
「ポーツマスか、あそこはカードゲームの闇世界があることで有名なところか、怪しさ満点
だな、で車種は?」
「車種はニッサン・スカイラインGT−Rだって」
「GT−Rか、あんまり好きじゃないんだよな、R乗りはさあ、馬鹿にするんだよな、テンロク
のこと」
「最大馬力は900馬力だって、あと特徴は燃料に「ガイアックス」ってのを使ってることかな」
「ガイアックスか、ここ最近は流行ってるんだよな、で、シンジとかコウジとかミカさんとかはど
うなるん?」
「他の三人は今日はバトルしないみたいよ」
「あとさ、車種になっちまうけど、それは32、33、34のどれか分かるか?」
「32みたいよ」
「ありがとう。さあ今日も一暴れするか!」
二人は辰巳PAに到着した。まだ他のメンバーは来ていないようだ。相手チームはもう全員
到着しているみたいだ。どうやらカードの話題で盛り上がってるようだ。ブライアンは挨拶をし
にいった。
「ようオタク諸君、チームイエローフレイムズのやつだけど、俺の対戦相手のR乗りは誰だ?」
「オタクとは言ってはいけないよ、まあ私達はオタクだがね。そうだ、君の対戦相手は私だ」
「あんたがマイケルって人か、俺もイギリス出身なんだ、よろしく」
「こちらこそ。で、どこでバトルするんだい?」
「新環状だとマシンのポテンシャルに差が出るから、環状線ってのはどうだい?」
「ああ、テクニックで勝負を決めたいからね、どっち周りがいいんだい?」
「あんたが決めていいぜ」
「じゃあ外回りでいいかな?」
「ああいいぜ、あそこはオービスあるけどいいのか?」
「かまわん」
「そうか、だったら早速バトルスタートだ!」
「そうするかな」
交渉を終えたブライアン。どうやら外回りでの対決みたいだ。
「リサちゃん、君も乗るかい?女の子一人じゃあ危ないからな」
「でもチームの皆に知らせなくちゃ…」
「大丈夫だって、あいつらが遅刻するのが悪いんだから」
「でも約束の時間より40分も早く来ちゃったんだから遅れるのは当たり前よ」
「大丈夫だよ、とにかく乗って!」
「そう?じゃあ遠慮なく!」
リサはブライアンの全開走行を助手席から見るのを今まで楽しみにしていた、理由はもちろん
好きだからだ。
相手チームのマイケルは何かカードに祈りをささげている。
「偉大なる魔術師ブーガよ、私を守りたまえ!私に勝利を!」
何かお祈りをしているようだ。これを見てブライアンは、
「うへ、キモ!どういう趣味してるんだ?」
「ああいう人だっているのよ、でも確かにキモいよね…」
二台は辰巳PAを出て行った。そしてレインボーブリッジを通り越して、いよいよ環状線に突入
し、バトルの開始がカウントされた…。
果たしてブライアンは勝つ事が出来るのだろうか?第6部に続く!