二台の車が外を出て行った。ジョニーはハチロクを侮辱して許せない気持ちで

いっぱいだった。そもそも何故これほどまでにトヨタに心酔しているのか?それ

はいずれか物語が進むうちに分かるだろう。

二台は大黒PAを出て、現在横羽線経由で環状線へ向かっている。

(あのジョニーとか言うやつ、どっかで見たことあるなあ。確かリバプールで…)

ブライアンが何か考え事をしていた。何かリバプールであったのか?

二台は環状線にまもなく到着するところだった。今回のバトルはもちろん「スピ

リットポイントバトル」。ルールは首都高バトル0と同じ様な感じだ。車内には「ス

ピリットゲージ」なるものが搭載されており、相手の車を入力、相手もその操作を

し、準備が整ったらカウント、バトル開始である。両者、緊張感に包まれていた。

そして、カウントがスタートした。

「3、2、1、GO!」

両者一斉にローリングスタート!みるみるうちにスピードが上がっていく。今日は

いつもよりも対向車が少ないような感じだ。二台は環状線内回りでバトルしている。

環状線内回りは、基本的に外回りと逆の事をすることになるのだが、こちらはオービ

スが無いと言う事でも有名だ。オービスがない分、バトルに集中できる。そのため、

TA大会等、とても白熱するスポットとなるのだ。全開走行で両者一歩も譲らない勝

負となった。ブライアンはお得意の慣性ドリフトをぶちかます!FFは元々アンダーが

多く、ここ首都高でもFFはグリップ走行が当たり前だった。しかし、ブライアンは敢えて

ドリフトに不向きのFFで、まるでFR顔負けのドリフトをかます。きっと藤原拓海や高橋

兄弟もびっくりの迫力だろう。一方、ジョニーは堅実なグリップ走行。ハチロクは、大抵

ドリフト走行になってしまうのが一般的だが、彼はそれが嫌でこのスタイルにしたのだ。

地味だが、決してミスをしないのがジョニーの特徴だ。両者熾烈な争いが繰り返されて

いた。ところが、その緊迫したバトルも、意外な形で幕を下ろすことになった。芝公園辺

りで、それは起きた。

「もう一周しちまうのか、はやいもんだぜ。ん、ヤバ!サツだ!」

なんと普段いるはずのない警視庁のパトカーが取り締まりをやっているではないか!

ブライアンはとっさに気づき、スピードを緩めた。このことをジョニーも知り、ブライアンと

同じ行動をとった。

(アブねえ、もう少しで罰金だったぜ。でもおかしいなあ、だっていつもならたまに銀座線

でやるくらいなのに、何かあったのか?)

ブライアンが考えていたその時!猛スピードでブライアンの車に近づいてくる光がやって

きた!

(なんだありゃ?げ、こっちに来る!自殺行為だぞ!ありゃ!)

ブライアンがすぐ車を路肩辺りに止めた、こんな警察の前でとばすなどほとんど自殺行為

だという事を知らないようだ。そして、

「うわあ!なんだあれは!?!?」

ジョニーが一瞬心臓が止まるほど驚いた。ジョニーは100キロまでスピードを落としていて

、相手は恐らく240キロ上であのコーナーを曲がっていってしまった。なんてクレイジー

なやつなんだ!本当に死にたいのか?だれもがそう思う瞬間だった。もちろん警察も動か

ない訳がない、はずだ。しかし、

「何故だ?何故捕まえにいかない?気づいてないのか?あれほどのスピードじゃあ誰もが

気づくはずなのに、どうして?」

警察に全く動きは見られなかった。何故?あれほどのスピード違反を捕まえれば御手柄を

あげられたのに、そこらのルーレット族とはわけが違うスピードで違反をしたのに、何故?

「何でだ?まあそんなことよりバトルだ!あれ?車が…?」

ジョニーの車が突然、オーバーヒートを起こした。どうしてなんだ?ジョニーは信じられなか

った。さっきまで元気に走っていたあの2JZが、どうしていきなり?それに気づいたブライア

ンは、ジョニーの元へ駆けつけた。

「オーバーヒートか、まあ今日のバトルは…。引き分けだな」

「悪いな。僕も今日は絶好調だと思ったんだが、でも不思議だ」

「何でだ?」

「今までトラブルなんて起こった事ないんだ、このハチロク。今日だってさっき店でメンテや

ってきたところなのに…」

「まあその店に文句言うんだな。知り合いにレッカー持ってる奴いるからそいつ呼ぶわ」

「すまねえ…」

こうして、二強の第一回バトルは引き分けという形で幕を閉じた。だが、ブライアンは心残り

が多いバトルとなった。ジョニーをみたことがある、しかし思い出せない…。そして、あの正

体不明の車。今日はブライアンにとって不思議でわからない一日となった。


意外な?結末で終えたバトル、そして、ジョニーとブライアンの過去の接点とは?あの「正
体不明の車」の正体とは?第三部に続く!