時は2003年。ここ首都高は相変わらず昼から渋滞の嵐だ。

今日もさまざまな車が行き交う。事故が今日もまた多発し、警

察が、それの対応をする、いつも目にする光景となってしまった。

しかし、夜はがらっと雰囲気が変わる。そこは血に飢えた狼たち

が出現する、全く違う光景。そして、信じられないスピードで走り

去っていく「狼」達。奴らは何を求めてここに来るのだろう?スピー

ド?快感?それとも…?そして派手な車から、はたまたタクシーを

改造してある車までさまざまに集結する大黒PA。車のエキゾースト

ノートがじりじりと聞こえてくる。まるでオーケストラでもやっているか

のように。彼らは会話を楽しんでいる。車の事、最近の近況、はたま

たオンナのこと、オススメのラーメンの店のこと、等さまざまだ。そんなP

Aに、スポコン風の改造車5台で一列にやってきた。車種はホンダ・シビ

ック+ターボ、インテグラ+NOS、VW・ジェッタ(左ハンドル)、マツダ・RX

−7、ニッサン・パルサーVZ−R+スーチャー。どうやら「狼」みたいだ。

「おい、ブツが来たぜ!」

一人の男がそう言った。彼の名は「ジョニー」。チーム「86 POWERS」

のリーダーだ。ハチロクの性能に惚れこみ、仲間と共にワンメイクチーム

を設立。今ではトップクラスのチームとなった。ジョニーは外人。アメリカL.

A.出身の元ストリートレーサー。根っからのトヨタ党で、トヨタ以外の車は

乗った事がないほどのオタクぶり。ハチロクを知ったきっかけは「頭文字D」。

店で勧められ試乗したときに感じたあの乗り味、乗っていると分かる楽しさ、

4A−Gのなんともいえない吹け上がり、彼は病みつきになり購入を決意。本

国仕様は安かったが、彼は右ハンドル仕様が欲しかった。少しでも主人公

「拓海」気分を楽しみたかったからだ。だが、彼の変わりぶりはここである、

敢えて自分の惚れこんだ4A−Gとはおさらばし、スープラに搭載され、アメリ

カでは伝説のエンジンとされている2JZをスワップしたのだ。彼の行動にまわ

りは唖然…。性能をぶち壊すようなことをしているとしか考えられないからだ。

何故ゆえに、4A−Gを捨てたのか、実は彼はパワーが欲しかったのだ。古い

ハチロクでもGT−Rのようなハイパワーの車を煽るような、そんなパワーが欲

しいが故にこのようなスワップにしたのだ。彼のことをまわりは「シビック キラー」

と呼んでいる。アメリカではシビックは若者に大人気で、カローラ以上と言われて

いる。そのため、ジョニーはそんなシビックに強いコンプレックスを抱いているため

か、シビックが相手の時はとにかく派手かつとんでもない走りをするのでこの名が

付けられた。

「今日は俺の最大のコンプレックス、シビックが相手だ。絶対にしくじるわけにはい

かない」

ジョニーがそう言い放つと、5台が停車した。そして、車から降りた。シビックに乗っ

ているのは今作の主人公「ブライアン」。イギリスリバプール出身、以前はよく二輪で

マン島を走っていた一人。つまり二輪から四輪に乗り換えたことになる。大のビートル

ズファンでもあり、バトル以外ではよく聴いている。その中でもポール・マッカートニーの

ファンで、ポールのことなら専門家に惹けをとらない位よく知っている。エンジンはタイプ

RのB16Aにターボという仕様。最大馬力は480馬力は軽くでるという。そのため、とても

ピーキーで乗りにくい車となっている。それでも平然と乗りこなしているのはさすがといった

感じだ。本人曰く「コケる二輪よかは扱いやすい」らしい。そして、インテグラに乗っているの

は、ブライアンが日本に来た時に最初に走り仲間となった「シンジ」。小さい頃から車に親しみ

過去にレーサーを目指していた。しかし、両親の反対から断念。こっそり走り屋生活をし

る。ヤンチャな性格のブライアンに対し、物静かな感じの性格、でも曲がった事は許せない

感じの正義感溢れる人間でもある。それから、ジェッタに乗っていたのは「コウジ」。大の外車

好きで、そして大のドイツ車好きである。元々改造はやらない方だったが、シンジの影響で

始めてしまった。趣味がミニカー集めで、ホットウイールズやジョニーライティング、トンカ、トミカ

チョロQ等、さまざまな種類のミニカーが自宅には総勢5000台は置いてある。また、走り屋界

でも知らない人はいないほど金持ちで有名で、普段は大手IT事業の社長を務めている。RX−

7に乗っているのは「リサ」。活発で、明るい性格、中学校のころからモテることで有名だった。

もちろん走り屋界でも彼女を好きな人は多く、そんな彼女は「ブライアン」を気にかけている。

チームに入ったのも彼に近づくためで、シンジやコウジなどがその手引きをしたのでも有名。た

だ、当のブライアンはそれに全く気づいていない様子なのが三人も不思議でしょうがないのが

実情だ。パルサーに乗っているのはシンジの彼女「ミカ」。付き合い始めて1年くらい、リサとは

高校時代からの親友で、チームに入ったのも、彼女を後ろから応援するため。性格はおとなしめ

。シンジとはある車のイベントでリサといったときに知り合った。彼の正義感に惚れて、彼女から

言ったという。そんなこんなで個性溢れる?5人がいるチームの名前は「YELLOW FRAMES」で

ある。リーダーが付けたもので、チーム全員の車には黄色いフレイムのステッカーが貼ってある。

「おお、おたくが例のハチロクマニアか。ほう、いつの車だ、それ。あ、なるほどトヨタね。へえトヨタ

もそんな車作るんだ」

「そっちこそ俺の車を侮辱する前に、自分の車のみじめさを感じる事だな」

「ほう、トヨタの4A-GがホンダのB16Aに噛み付こうってか?格が違いすぎるっての!」

「残念だが、これは4A-Gじゃない、2JZだ」

「ほう、やっぱりボロエンジンかどうにもならないから、せいぜいターボのエンジンに取り替えて、

テンロクに挑もうってか?湾岸だとアリかもなあ、そういうスワップ。でも俺らが対戦するところは

環状だぜ。テクニック、マシンの総合性能、そして度胸。パワーで物をいわせるようなやつじゃあ

勝てないぜ、あんたみたいな」

「それはどうかな、君の車も後付けのドッカンターボをつけているじゃないか、そんなピーキーな車

でどこがトータルバランスだい?」

「じゃあ証明してやる!」

「望むところだ!」

こうして最初の二強対決はスタートした。




果たして、どちらが勝つのだろうか?その結果は第二部で!