HOMEoriginal>暗黒童話 …今宵はどの御伽噺をお聞かせしましょう 
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ヴァンパイア [2014.9.14.]


  「ラミア、貴女は私の物にはなってはくれないのね」
  「おや奇遇ですね. 私も今同じことを考えていましたよ?シュメラーネ」

死人よりも冷たい掌で頬を撫でる仕草は品があり、手厚く育てた甲斐があるというものでしょうか.
"普通の人間"であれば途端、凍てつく彼女の膝枕も、【私】には無縁の効果
心地好さに瞼を閉じながら永い生涯の中、観てきたつまらぬ人間話を懐かしみながら暇潰しにと聞かせていたのですが―

  「どうやら御話しにも飽きてしまったようですね」

異質の身体―【アイスクイーン】はその名の通り冷たい此の館でしか生きられない.
いくら外界を見たいと願っても永久に叶わぬ御伽夢物語
ならばせめて、つまらぬ夢物語の滑稽で哀れな末路を迎えた彼らを描いた、現代に謂われる【童話】として語っていたのです.


さてはて、退屈とは困りましたね.
ヴァンパイアである私が彼女を連れ込んだのは、成熟したその生き血をすするため.
しかし人間ではなかったために
また彼女も、どうやら私を凍射止めたかったようですが、同じ理由で叶わずもどかしさを抱えたまま.


こうして居る間にも、幾度、氷の口づけを交わし、私の牙を向けても交われることはない.
皮肉なものです.

方や餌とするため
方や虜とするため
偶然を装い接触したというのに




まるで自ら語った童話のような滑稽さに、笑みの吐息が零れる.




   なるほど
   私たちもまた、つまらぬ童話を飾る、役者ということだったのですね



-END-


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