original> жMourn 彼は恋惑わされたのではない。愛してしまったのだ |
世界の声[2013.7.4] |
"彼の世界"に音という物は無い。 それでも、彼は"観る世界"の賑わいに思わず笑みを浮かべる。 彼を囲む、幾つもの水晶の一片。 穏やかな声・透き通った少女の声… 外界で「声」と呼ばれる振動が伝わってくる。 ふと目を向けると、なるほど。 見覚えのある5つの顔ぶれが何やら談話をしているようだ。 ツンとすました少女と哀しげな瞳の男性はすぐに去ってしまった… が、残った3名はなかなか盛り上がっているように観える。 いったい、何を話しているのだろう。 先に少女と去った男性とよく似た、同じ哀しい色を帯びた青年がの口元に珍しく 微かな笑みが浮かんだ気がする。 "話す"ということ− "声" というもの− 水晶の化身である"彼"には無縁で、望んでも到底叶わぬ世界だが 映し出された水晶を通して流れる振動から、喜楽なものだと想像できる。 願うならば― クリスタルの薄い壁を砕き、彼らの世界へ…同じ空間へ行き、時間を共に過ごしたい。 "声"が聞こえずとも、己が発することができずとも、"話し"てみたい。 我が身を包み、生を支える水晶籠がこんなにも皮肉に思えたのは "彼"に恋してし、自ら転生を行った以来だろうか。 この狭い世界で観ることは出来ても、手を伸ばし、触れることも儘ならない クリスタルの中でしか生きることができないもどかしさ 我は水晶の世界で生きるクリスタルの化身− 彼らは水晶に映し出された世界に住む住人− 眠る夢の中でしか 会うことは赦されない < back ▲ next > |
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