大谷石をめぐる課題と展望 2 塩田 潔
■主役になれない石、他とのコラボレーションで活きる石・大谷石
F・Lライトが旧帝国ホテルに使用し、一躍大谷石が注目を浴び我々の心を捉えて止まないのは、スクラッチ煉瓦及びテラコッタとの
見事なコラボレーションがあったからである。私は、改めてライトの感性のすばらしさに敬服している。スクラッチ煉瓦、テラコッタなくして
「大谷石建築」は存在しなかったのである。近年、素材としての大谷石が様々な分野で使用されてきており、行政サイドも奨励して
いる事は大変喜ばしい事である。しかし、やたら大谷石を使えばよいというものでもない。使い方を誤ると、せっかくのすばらしい素材
を殺すことになるし、将来酷評される事になる。大谷石は特に、他の素材とのコラボレーションで活きる素材である。旧帝国ホテルは
スクラッチ煉瓦やテラコッタを引き立てつつ、自ら引き立ってしまった大谷石建築である。大谷石は、樹木の「緑」や、風にそよぐ「竹」の
柔らかさとの相性が見事との評価が高まっている。又、「光」の演出効果、あるいは「音(クラシック、ジャズ等のコンサートの空間)」との
相性もすばらしく、さらなる多次元での可能性が高まっている。しかしながら、建築基準法による組積造としての制約や、石としての
もろさ(風化、凍害等)、高価格といった マイナス要素も様々な可能性に対しての足かせになっている。もろさに関しては、化学的な
解決策(硬化剤等)により克服しつつある。今はむしろ、基準法に関わらないインテリアやエクステリアの分野での使用方法に活路を
見出しており、最大の特徴である大谷石の持つ、やわらかさ、あたたかさ、やさしさが引き出され、その付加価値が高まり明るい未来
が開かれて来たと実感している。
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