「いっしょに歩こう」 たなかしんこ
私がシルキーでデビューしてまもなく、「新人に3回シリーズをやらせてみようという企画があるんだけど」と声をかけてもらって描くことになったシリーズです。
初めてのシリーズ!!
3回も描かせてもらえる!
・・・でも1ヶ月に1本も描くなんてできるかなあ・・・。
そんな不安と期待でいっぱいになりつつ、企画を提出しました。
いろいろ頭をしぼって ストーリーをいっぱい書いて出したのに、担当さんの目に止まったのは 最後に一言だけ書いた「盲導犬の話」という言葉。
「これでいきましょう!」と言われたとき、実はなんにも内容が決まっていませんでした。
いつか画力がついて、盲導犬についてゆっくり調べてから描くことができたらいいな、と思っていたのに・・・新人の私には担当さんにさからう、なんていうことができるはずもなく・・・それから必死で準備したのです。
当時は「取材」なんてしたこともないし、「漫画家」なんて名乗るのもおこがましいような立場でどうやって取材できるのかもわかりません。
でも もうあともどりはできない!というわけで必死で取材です。
北海道盲導犬協会の電話番号を調べて、思い切って電話をかけて、他の見学者にまじって見学させてもらって。さらにお願いして 訓練士の方にお話をきかせていただいて。
さらに 紹介していただいたボランティアの方にお話をきかせてもらって、その方にまた別の方を紹介していただいて・・・。
そうやってお話をきかせてもらいながら・・・思わずもらい泣きしてしまうような話や 憤りを感じるような話もきいて、 私の中にむくむくと「この話を描かなくては!もっとみんなに盲導犬のことを知ってもらわなければ!」などという使命感のようなものがわいてきて熱くなりました。
そういうわけで、必死で3本のプロットを作って担当さんに送ったところ・・・「期待していたより、いい話ができていますね!」とお褒めの言葉をいただきました。
さらに、その2作目を描く頃に「評判がいいので もっと続けましょう」という夢のような言葉をいただくことができたのでした。
というわけで、結局23本の話を描いて、コミックスも2冊出してもらうことができました。
フィクションではありますが、本当にあったエピソード入れていたために受け入れてもらうことができたのだと思います。
私にとって、思い出深い1作です。
残念ながらコミックスは絶版。なにやら携帯の白泉社のサイトからダウンロードして読めるようですが・・・
たまに 古本屋でみかけます。多分100円コミックスになっているので ちょこっと手にとっていただけると嬉しいです。
2006.7.31
さらに裏話を読む
「ハッピー!」(波間信子先生)と 「いっしょに歩こう」
なぜ、コミックスが「ジエッツコミックス」になったのか
初コミックスがでたときの私と家族
1996年7月発行
1997年3月発行