スピーチ 退社記念パーティー スピーチ(1)
   

退社記念パーティー スピーチ(1)

 私は1999年10月末でプレジデント社を辞めたのですが、11月19日に退社記念パーティーを自分で企画して、有楽町の外人記者クラブで行いました。いちいち飲み会をやっているとたいへんなので、一時に済ませてしまおうという魂胆です。
 以下は、その時のスピーチです。あれからずいぶん経ちますが、私が追いかけているテーマには変化がない……というか進歩がないなあと実感します。現在、やっぱりこのセンに沿った次回作を準備中です。プレジデント社売却を機に、初心を思い出そうと考え、掲載しました。


 本日はみなさま、わざわざご足労頂きましてたいへん恐縮です。
 本日こちらにご足労頂きましたのは、実は私10月末でプレジデント社を退社いたしまして、けじめだけはきちんとつけないといけないと思いまして、人生の区切りとしていままでお世話になった皆様に一言御礼申し上げたいと存じましてこのような集まりを開催させていただいた次第です。
 本日こちらにお見えの方々は、私にとりましては本当に貴重な、金銀財宝よりもプレシャスな方々でございます。まずは深々と頭を下げまして、一言、御礼申し上げたく存じます。プレジデント社在職中は本当にありがとうございました。

 退社するということに関しては、私はそんなに違和感を持って受け止めておりません。この場にいる多くの方が「なーんだ」と思っていらっしゃるはずです。それは、「あんなデブのくせに協調性のない人間が今まで組織人として保ったことの方が異常だ」という認識が一般的であるという意味ではございません。実は昨日、本日ご臨席の方のリストを数えてみたのですが、この場にいらっしゃる方のうちの45%の人は転職経験者か、フリーの方なんです。そしてみなさん立派にやっていらっしゃいます。

 それで、おそらく皆様いちばん疑問に思われているのが、「こいつはプレジデント社を辞めて何をするのか」というということだと思います。実はそれを一番知りたいのは私でございまして。
 まあ、食いつなぐことは何とかできるとして、どのように世の中のお役に立ったらよいのか? これから半年間はじっくり勉強をさせて頂くつもりです。辞めることがもっと早く分かっていれば準備をしたのですが、思いつきで辞めたものですから、よくご質問いただいたのですが戦略的に考えて次の仕事を決めてから辞めたわけではないのです。だから「次何やるの?」と聞かれましても「わかりません」としかお答えしようがないのです。

 ただ、今私が一番興味を持っていることは、辞めたばかりということもありますが、「働く」とは一体どういうことなのかということなんです。
 企業に勤めていらっしゃる皆さんは、一生懸命額に汗して働いておられます。ぜんぜんサボってるわけではないのです。でも、それは意味のある働きなのでしょうか?

 ここにある企業を想定してみましょう。
 仮にH製作所という社名に致しましょうか。売上高8兆円。6万7000人もの優秀な社員、ノーベル賞級の頭脳を抱えているH製作所は今年の3月に3380億円を超える赤字を出しました。ROEは11%のマイナスですよ。これは一体なんなのか。普通の人ならそう思うだけですみますよね。でも私はH製作所の株を持ってるんです。10年塩漬けです。責任者でてこいーっ、と言いたくもなりますよね。
 これで経済雑誌を作っているとは、今までは恥ずかしくて言えなかったのですが、それにしましても働いて付加価値が出ないのであれば、彼らがやっているのはいったい何なのかという疑問は残るわけです。
 H製作所の2002年の目標ROEは8%ですよ。今週ある外資系企業の社長さんと話していたら、その人の会社は伸びているのですが、オーナーから「銀行借り入れはダメ」と言われているそうです。そうすると20%程度の利益率で行かないと、運転資金が追いつかない。間接金融システムが日本の企業経営者を甘やかしているということは事実だと思います。
 なぜH製作所は優秀な人材を抱えていながら赤字を生んでいるのだと思われますか?

 「スピードが遅いから」(N村証券アナリストI氏)。

 そうですね。経営が悪いんですよね。私もそう思います。でも経営者だって優秀な人たちですよ。では、優秀な経営者でも経営を誤ってしまう社内風土、空気があるということですね。そして私は、それは日本企業にとって一般的な傾向だと思うんです。

 

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