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パリ旅行記

1997年の10月末から2カ月ほどロンドンでホームステイしていました。12月になるとイギリス飯にも飽きたので、ユーロスターに乗ってパリに足を伸ばしてみました。ロンドンからパリに行くと、イギリス人がパリにあこがれを抱くのがよくわかるような気がしました。パリはまさに「華の都」、世界の首都ですよね。ちょっと趣味の偏った、2日間の旅行記です。

 12/13 土曜日

 8:00起床。爆睡して、昨日の疲れがとれている。牡蛎が食べたいのでパリに行くことにする。クリスティーナに「これからパリに行く」と言うと、目を丸くしていた。以前、安売り£3で買ったミシュランのパリガイドだけが頼りだ。6年前に行ったときに見逃したところも見ておこう。

 パソコンをかついで出発。しかし、CDドライブを置いてくるのを忘れたのでやたら重い。また、デジカメ用のPCカードを忘れる。ほとんどパソコンを持ってきた意味がない。

 うちの前に、オックスフォード行きのエクスカージョンに参加する学校の生徒が列をなしている。この連中をやり過ごしてクロックハウスへ。
 9:25の電車でウォータールー・イーストへ。そこからウォータールー駅まで渡り廊下を歩く。10:10ウォータールー・インターナショナルの窓口へ行って「エクスカージョン」というと、10:23発の列車の切符を用意してくれた。ホントは30分前購入が条件なのだが。窓口のお姉さんはとても親切で丁寧だ。

 すぐに自動チェックインを通って、次にX線装置を通り、ホームに向かうが大混雑でなかなかエスカレーターにたどり着かない。エスカレーターでも検札しているのだ。

 ユーロスターの車両自体は非常に洗練されたインテリアで、絶対フランスのデザインだ。なぜならイギリスの車両デザインは、信じられないほどひどいからだ。乗り心地は素晴らしく良い。私は車中ずっとパソコンを打って過ごした。

 発車して20分後、列車はベッケンハム・ジャンクションの駅を通過。ロンドン市内を脱出して、しばらくすると素晴らしい田園風景が広がる。
 いい天気だ。1時間後、「パスポート・シルブプレ」といって、係員が回ってきた。ちらっと見るだけである。やがて、「数分後にユーロ海峡トンネルに入る。通過時間は20分。パリ時間は1時間早いから、時計を1時間早くしろ」というアナウンスがある。トンネルの直前には、高速道路にも通関がある。やがて列車はトンネルへ。気圧が変化して鼓膜が痛い。20分後列車はフランスに上陸。田園風景の中をひた走る。

 さらに20分ほどすると、「列車は現在時速300キロで走っている」とのアナウンス。このアナウンスはイギリス国内では英語が先で、トンネルを越えるとフランス語が先になる。

 2:17列車はパリ北駅に到着。可及的速やかに宿を探さなければならない。駅構内の紹介所に飛び込むが、なかなか自分の番にならない。やっと順番が回ってきて「100ドル程度の宿を」と頼む。紹介料F40が払えない。とりあえず両替所で£40=F363両替して戻り、レシートを受け取りホテルを目指す。ホテルは北駅にすぐ隣接している東駅の前のデンマークホテルである。

 ホテルに到着して鍵を受け取り、荷物を置いてフロントのお姉ちゃんにオルセーに行くにはどうしたらいいのか、ベルサイユに行くにはどうしたらいいのか、牡蛎はどこで食べられるのか、根ほり葉ほり聞く。東駅のメトロの窓口に行って、「明日ベルサイユに行きたいけど、今日から使える乗り放題の切符を」と言うと、ちゃんと用意してくれた。F175。他の所でもすべてそうだったが、英語は喋ることができなくても、理解することはできるようだ。おお、それなら俺と一緒だ。

 これでどこへでも行けるようになった。サン・ミッシェルという駅でメトロと国鉄を乗り継ぐ。

オルセー美術館 4:00、オルセー美術館に到着。地下鉄の出口を上がると、セーヌ川を挟んで対岸にルーブルの全景が見える。パリだ!! 6年前に凱旋門を見たときもそうだったが、パリの建築は見る者に不思議な昂揚感を与える。こいつらは、美的感覚については天才である。そしてこの点こそがイギリス人とフランス人を圧倒的に隔てるものである。

オルセーを見たいというのは、私の宿願だった。現金がないので、後ろに並んでいた日本人女性3人組に「CDは何時まで開いているかご存知ですか」と訪ねると、「てゆーか、わたしパリのこと、よくわかんないしー」との返事。これは日本語か? しばらく日本を離れている間にずいぶん日本語も変わったものだ。聞くんじゃなかった。


 入場料F39、学割はないと言われた。まずカフェテリアに向かう。カードは100ポンド以上じゃないと使えないといわれるが、そんなに食べるつもりもない。しかし現金はF50しかない。結局計算して、チョコレートケーキとカプチーノ(F48)を食べる。美味。しかも、このカフェは天井が高く壮麗な装飾に囲まれた良い雰囲気のカフェである。何と素晴らしい。これで一文無しになった。

オルセー美術館 さっそく最上階に向かう。世界最高の印象派のコレクションである。恥ずかしい話、これだけ世界中の美術館を回って来たのに、今日までシスレーとマネの違いが分かっていなかった。マネの絵には、明るい光が描き込まれている。よくテレビで「マネは光の画家」などと言っているが、テレビの画像でこれが理解できるはずがない。どうしてこんな事ができるのか、まさに天才の所行である。ルノアールも凄い。人間が描いたものとはとても思えない絵画だ。ゴッホ、ドガ、セザンヌ、ピサロ、ゴーギャン、スーラ、ロートレック……と堪能して腹一杯になる。ごちそうさまでした。ここにはフランスの宝が集まっている。
 2階を通り抜けて、1階へ。バルビゾン派を見る。ミレーの「落ち穂拾い」が光っている。ルソーやコローもある。クールベの巨大な絵を見る。5:50終了時間が来て追い出されてしまう。しかし、主要な作品は見ることができたと思う。

 インフォメーションでCDの位置を聞いて、F800を引き出す。メトロに乗ってまっすぐバスティーユに向かう。208年前、ここで人類の歴史にとって偉大な出来事が起こった。そして今、この地には第2オペラ座が建っている。もっとも至極なことだと思う。

 「チケットオフィスはどこだ」と係員に聞くが英語が通じず要領を得ない。今日の演目が分からないのでは、どうしようもない。列に並んでいる日本人らしいのに「今日は何をやってるんですか」というと、「レイモンダ」という有名なバレエだという。知らんぞ、そんなの。グラズノフのバレエである。彼女は日本語の劇場案内を持っていて、明日は「薔薇の騎士」をやるということがわかる。なんということだ。それなら明日の夜も居るんだった。
バスティーユオペラ しかし、明日ガルニエの方で3時から「メリー・ウィドー」をやるという貴重な情報を得る。素晴らしい。彼女の旦那はどこかの役所からOECDに出向できているらしい。そういう連中が他にもたむろしている。なんとこの地では、オペラ座が日本人の社交場の役割をしっかりと果たしているのである。彼女はオペラの方はさっぱり知らないらしく、バレエの方が親しみやすいということもあるのだろう。バレエならボーッと見ていても「なんとなくきれいねえ」ということで、理解可能である。

 6:45チケットボックスが開く。「学割は」と聞くとあっちの列に並べと言われたので、めんどくさいのでこちらで買うことにしてF395の席を買う。オーケストラのど真ん中。前から10列目の中央という最高の席だ。これが8000円というのだから、信じられない金額である。バーでビールを飲みながら開演を待つ。


 80年代後半にできたこの劇場は、私が今まで訪れた世界の劇場の中でも間違いなく最高の部類に属するものである。なんといってもデザインが見事だ。機能的であって、それでいてオペラ座にふさわしいある種の威厳を備えている。「輪奐の美」という言葉があるが、まさにそれを感じさせる建物である。特にロビーのデザインがよい。十分な広さと、視覚的な面白さを備えている。客席への誘導路もわかりやすい。ロンドンを引き合いに出すと、前世紀の建築であるRAHはもちろん、バービカンセンターと比べても圧倒的にこの建物の方が優っている。

 古典バレエを見るのは初めてだ。「レイモンダ」は、チャイコフスキーの後任として白羽の矢が立ったグラズノフが最初に作曲したバレエである。3幕物で、筋は中世のどこかの王国にサラセン人が攻めてきて、そこの姫君にサラセンの王子が横恋慕するが、白馬の王子が助けましたとさ、というどーでもいいようなものだ。

 しかし、この舞台は素晴らしい。優雅の極致である。おそらく世界最高水準だろう。衣装にもセットにもふんだんに金がかけられている。バレリーナの技術も最高。演奏も素晴らしい。これだけの完璧な古典舞台芸術は、ロンドンには存在しないと断言できる(ロイヤル・バレエはスペイン公演中で見られなかったが、RFHでやるのなら状況は推察できる)。
 しかし、この環境を実現し、素晴らしい技術水準を維持するためには、膨大な国費が投入されているはずだ。フランス政府は、観光収入で元が取れると考えているか、もしくは文化は手厚く保護するという断固とした信念を持っているのだろう。ロイヤル・オペラの代表のおばさんが泣きながら辞めていったり、「新オペラ座をイングリッシュ・ナショナル・オペラと共同で使用せよ」と勧告されて、ロイヤル・オペラとENOがいがみ合っているイギリスの現状を考え併せるとあまりにも対照的だ。

 パリには多くのホテルやレストランがあり、食う寝る所に住む所には困らない。そこに私のようなカモが金を落としていく。しかしイギリス人はそうは考えないようだ。従ってホテルもレストランも多くはない。

 イギリス人があくまで実質本位なのに対して、フランス人は生活を拡張しようという傾向が強いのではないだろうか。
  例えば象徴的なのは地下鉄の駅名で、ロンドンなら銀行があるから"BANK"、記念碑があるから"MONUMENT"と味もそっけもない。どこの銀行か、なんの記念碑かは問題にもされない。質実剛健というより、ちょっと足りないのではないかという感じすらする。
 一方パリの地下鉄はというと、"シャンゼリゼ・クレマンソー"、"シャルル・ドゴール・エトワール"、"グラン・アルシュ・デ・ラ・デファンス"、果ては"ラ・コーヌーブ・1945年8月15日"と不必要に長い。ギネスブック入りを狙っているのだろうか。こうしたものが、両国の国民性の違いであることがロンドンからパリに来るとよく分かるので面白い。

 そしてまた、「レ・ミゼラブル」「オペラ座の怪人」「マルタン・ゲール」といったロンドン・ミュージカルが、フランスを舞台にしているののはなぜか。おそらく外国に対する憧れが傑作をつくるインスピレーションを産んでいるのではないだろうか。非常に近いところで、違う文化を持った国々がせめぎ合っているというのは、ヨーロッパの不思議な力の源泉なのである。

 バレエの幕間に、となりの席に座っているおじさんが「私はオペラ好きでね」といって話しかけてくる。……僕はバレエは嫌いなんだよ。今日は第2幕の方が1幕より良かったな。パリのオペラは大きなカンパニーなので、ガルニエとバスチーユで同時に上演できるんだ。この指揮者はロシア人で、ここで「エフゲニ・オネーギン」も指揮してるよ。先週見た「薔薇の騎士」は素晴らしかったな。ザルツブルグでやったやつを、そのまま持ってきたんだよ……。
 うーん、そうだったのか。それが見られないとは残念至極。悔しいので「俺はクライバー指揮のウイーン、シュターツ・オパーで観たことがある」と言って黙らせる。

 プログラムはF60とやや高いが、舞台の素晴らしい写真がいっぱい載っているので損した気にはならない。

 舞台がはねると11:00と遅い。ハラペコだが、地下鉄に乗ってシャンゼリゼへ。地上に出ると、シャンゼリゼ通りは、すべての街路樹が電飾されていて壮麗の極みである。そして道の両端の光の行列が収斂する遥か彼方に、凱旋門が夜間照明に照らされて浮かび上がっている。言葉を失う美しさである。シャンゼリゼから凱旋門方向を見ると、やや道が傾斜しているので街路についても見晴らしが利き、これがシャンゼリゼ通り独特の景観を作り出しているのだが、この傾斜は計画的に土木工事をしてつくったものなのだろうか。

 ここを散策するのは最高だろうが、メトロは12:30までしかやっていないと駅員が言っていたのでまたメトロに乗って東駅に帰ってきて、12:00、店の前に積まれているシーフードにつられて駅前のレストランに入る。メニューはフランス語なので見てもさっぱり分からない。店員を呼んで、オニオンスープと、牡蛎や海老の盛り合わせと白ワインを頼む。F305。はーっ、さすがにスープがうまい。あまり早くパリに来ると、イギリスの食事が苦痛でたまらなくなるところだった。

 牡蛎は金属の台の上に皿を乗せて、その皿に氷をたっぷり乗せてその上に恭しく乗ってくるのが面白い。テーブルのスペースを節約するため、その台の下にパンを載せたテーブルが置かれている。たっぷり牡蛎を堪能して1:30、店を出て北駅の方へふらふらと歩いていく。
 レストランの前でメニューを読んでいると、店員に中に入れと言われたので、ビールを一杯だけ飲むことにする。しかし、バーに並んだ隣人達は僕に背を向けて話しているので、話しかけることもできない。ロンドンのパブのようにはいかないようだ。

 明日のことを考えると、これ以上遊んでいられない。2:00ホテル着。


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