解題 ネット起業!02
   


『ネット起業! あのバカにやらせてみよう』前書き17ページより

 


「IT革命とは何か」という議論がある。
 私ならこう答える。
 革命とは、主権者の交代とそれに伴う社会変革を意味する。IT革命とは、インターネットを利用した情報・コミュニケーション技術を多くの人が手にすることによって、統治や経済活動の主権が、従来の既得権者や市場支配力を持つ大企業から、市民や消費者の手に引き渡されること。それによって新たな社会の構造が形作られることである。
 この過程では情報機器のイノベーションにつれて生活が徐々に変化して行くはずだが、それは表面的で瑣末な現象に過ぎない。IT革命の本質は、それによって人々の意識が大きく変化するということにある。人々の労働や社会参加に対する意識が変わらなければ、期待されているほどの生産性の向上は決して実現できないだろう。
 コンピューター・ネットワークは、コンピューター同士が無機的に繋がっているものでしかない。しかしそれはネットワークの機能を純化したものなので、ネットを介して人々は有機的な繋がりを持ち、よりネット対応的に考え、行動するようになる。そうした意識の変化が、日本の社会を変える大きな原動力になっていくはずだ。もしもこの駄目な国に構造改革が起こるとすれば、その淵源はネットにあるに違いない。

 これから述べるのは、そうした意識変化を誰よりも早く先取りし、新しいビジネスを創ろうとしたネットベンチャーの事績についての、一〇年間にわたる物語である 。


 


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