その他、我々はイルカの見られないイルカ・ウォッチングや、魚の釣れない魚釣りも体験した。
悪印象を列挙してきたが、反対に私が今回の旅程を通じて一番感心した見学は、プケティ・カウリ・フォーレストの公園の作り方である。原生林の中に15分で周遊する通路を敷設しただけの小さな公園だが、この通路の設計や展示方法は、絶対に日本の公園管理者が思いつきもしない、非常に優れたものであった。これには正直、脱帽した。
私が接したニュージーランドの人々はみんな醇朴であり、それでいて強い自立精神を持っていて、日本人よりもはるかに大人びた、尊敬すべき存在だと感じ取ることができた。特に環境保護に対する高い意識、核兵器に対する嫌悪感、こうした健全な国民意識には感銘深いものがあった。
我々ジャーナリストの使命は、お互いの国の良い点を紹介し合い、お互いを高め合うための情報交換を仲立ちするというものである。その目的のためなら、いかなる犠牲をも払う用意が常にできている。ただ、今回のツアーでは、その機会を全く与えられなかったというのが正直な感想である。
また、我々ジャーナリストは、その使命を全うするために世界各地に出かけていき、その国の優れたもの、珍しいもの、価値あるものを多く吸収して、あらゆる物事の善し悪しを見極める価値観を函養している。この点において、日本人ジャーナリストは世界の主要な国のジャーナリストに対して、一歩も引くものではない。
その末席に身を連ねる者として、上記の5点に関しては、全く理解を致すことができない。
また、出発前日に「取材記録」なる紙にサインを求められるという経験も初めてのことであった。なるほどもしあれが「食事」と呼べるものであったと仮定すれば、すべてこの「取材記録」通りに事は運んだことになる。しかし、だからといって私の受けた「ニュージーランドは最悪の国」という印象は揺るぎもしない。これは一般的なツアー旅行業者が抱えている問題点とまったく変わるところがないので、これが政府によるジャーナリストの招請で なければ何の問題ともならないことだろう。ただ単にリピーターが一人減るだけのことである。
もしニュージーランド政府が、日本のジャーナリストはこのような理不尽な応接をしたとしても、それを批判する能力見識を持ち合わせていないだろうと判断しているとするならば、それはたいへんな間違いである。こうした国辱的な誤解は、誤解の一言では片づけられず、看過し難い。
厳重に抗議するとともに、納得できる説明を求めるものである。