「報告書」について
ニュージーランド政府観光局
○○PR 御中
7月7日
プレジデント編集部
岡本呻也
1. 私の「抗議ならびに質問書」についての返答が「報告」であるということに、私は重大な関心を寄せるものである。
2. 次に、私の「主催者はわれわれの仕事に対して根本的に無理解であるとしか思われない」という指摘に対して、ことさらに無神経を装う態度には不快感を覚えざるを得ない。
・質問1に対して、「メディアを通して四季折々のニュージーランドの姿を紹介しています」という非常に傲慢な表現の回答をしているが、土砂降りの写真を雑誌に載せることができないくらい理解できないのか。雨が降っていて、乗馬やゴルフの紹介ができるのか。降雨量の多いシーズンに連れていかれても、我々は仕事にならないのだ。おざなりな回答はやめていただきた い。
・質問2に対して、事前了解の行き違いでただの誤解だという姿勢を貫こうとお考えのようだが、私が指摘した「狭い二人部屋や、他誌の人間を同室にするということは、チームで行動している取材者の行動の自由度を減ずるということに対する無配慮」に対する言及がないのはなぜか。
もし私が事前に「二人部屋」と聞いていたとしても、「寝室が二つあるスウィートルーム・タイプの部屋だと考えるのが自然であるから、耳にも残らなかったろう。繰り返しになるが、私が問うているのは、日本人取材者に対 するニュージーランド政府の姿勢である。
・質問3、質問4について、これもまた「事前説明による了解」を唯一の釈明にしているが、これについてもメディアの仕事に対して無理解であるとしかいいようがない。私が同行カメラマンの萩原氏に、NZへの同行を依頼したのは5月9日の事である。腕のいいカメラマンは、一ヶ月以上前でなければスケジュールを押さえることができない(二流以下のカメラならその限りではないだろうが、当誌のクオリティには馴染まない)。つまり、出発の2~3日前に各種の条件を提示されても、引き返すことはできないのである。
質問3については、「車内での説明が足りず」と書いているが、バスに乗ってから「観光バスですから窓が開きませんよ」と説明されたとしても何の意味もないのだ。まったく不思議なことだが、英文でのスケジュール表にはフラーズ社のコーチによると書かれているのに、日本文には翻訳されていないのはなぜなのだろうか。その前日まで貸し切りバスで移動しているのだから、貸し切りだと思うのが当然ではないか。私は、もし事前に観光バスに乗せられると分かっていたら、乗車せずに一日中イルカを見つける努力をしていたと思う。また、私の感じた、取材行にも関わらずみやげ物屋をたらい回しにされた屈辱感について、まったく言及がないのはなぜなのか。ニュージーランドでは、ジャーナリストはこうした神経を持っていないのだろうか。
質問4について、酒代の割り勘は「了承していただけたものとして、6月8日 の夜は割り勘とさせていただきました。」と書かれているが、11日の酒代を当社が負担したことについて、NZTBは一体どのようにお考えなのか。故意に無視しているのは、私の出すぎた行動に対する無言の抗議と解釈するべきな のか。
3. 最後に、質問5に対して「ご迷惑をおかけして」と書いているが、迷惑ではない。「失礼」なのである。実に失礼なことである。私は、この点に関しては、上記の仕事上の不理解とは別種の怒りを感じている。
さらに申し添えるならば、NZTBは私が「抗議書」で指摘した5質問点についてのみ、言い訳することに汲々としているが、私が5点を上げたのは、今回のプレスツアーの不手際から感じられた、ニュージーランドの観光客受け入れ姿勢の不備をわかりやすく指摘するためである。
私にとって、今回は最悪の海外渡航であった。そして、観光旅行の渡航先としてニュージーランドを選択すべきだと、少なくとも当誌の読者に勧めることはできないと感じた。私が5質問点で問うたのは、観光客を受け入れる姿勢のあるなし、外国から客人を招いて接遇し満足を与えて帰すことができるかというホスピタリティについての、ごくごく初歩的なポイントにつながることについてである。しかし、こんな初歩的な条件についても、観光客受け入れの窓口であるNZTBは満足できる返答をよこすことができない。私の神経を、さらに逆撫でするばかりである。
象徴的なことで印象深かったことがある。それはハーバービュー・ホテルのエレベーターの真ん前に、大きな柱があったことだ。全ての客はこの柱を避けて往来しているのである。これは私にとっては信じられないことであった。何かがおかしいとしか思えない。そしてNZTBの担当者はこの柱の存在に気がついているのだろうか。そこも聞きたいところである。もし、これに違和感を覚えないとするならば、メディア対応という仕事には不適格である。
はっきり申し上げるが、日本人のような国内に成熟したサービス産業を抱え、海外にも多く出かける国民を呼び寄せて、国益として観光事業を振興しようと考えているのならば、NZTBは現在の姿勢を根本的に正さなければ難しいだろう。
私には、NZTBは「日本人は金持ちだから騙してでも呼べばカネになる。だったらバカなマスコミでも引っ張ってきて、引き回せば何かメディアに露出するから何人か引っかかるだろう」といった程度の低い認識しかもっていないとしか思えない。しかし、日本のメディアはNZTBがコントロールできるほど単純ではないし、世の中はそんなに甘くないのだ。
私のメディアの友人たちも、今回の顛末について私が話すと、一様に驚きを隠さない。NZTBは、このプレスツアーがかなり異常なものであると認識するべきである。
私は、これ以上ニュージーランドのために割く時間を持ち合わせない。ただし、「報告書」の末尾に書いてあるが、私の怒りは「誤解」ではない。「岡本様の誤解が少しでも解けるように願っ」たとしても、毎年これと同じ事を続けていくのならば、長期的に見ればNZTBの出先を日本に出し続けることは、ニュージーランド政府にとって税金の無駄遣いということになるだろう。
(この項終わり)