大学の戦略とビジョンの策定
運営者 危機感があるだけではだめだと思うんです。危機感があったとして、「では何をすればいいのか、どちらの方向に動けばいいのか」という認識が必要で、そして「そこにはマネジメントの視点が必要なんだ」というところに気がついてもらわなければならないでしょう。
そしてその次は、自分たちが持っている資源を見渡してみて、強みがどこにあるのかを知らなければなりませんよね。コア・コンピテンシーを見つけるということですが、これは大学に関しては可能でしょうか。全学的に見なければならないということになりますが。
鈴木 総合大学だからね。
運営者 その中で、「この分野であればわれわれは他の大学に勝てる」、「これはちょっと難しい」という判断が必要になってくるわけです。
鈴木 強い弱いは、学会の中で認識されています。「京大はこの分野が強い、阪大はこの分野が強い」というのがやっぱりあって、企業も産学連携などをする場合学会の評価を見ながら、大学を選択していますよ。だから学問の水準に関しては、学会を中心にして産業界も含めた人たちが認識を共有していると思います。
ただし、強い分野を持ってるからといって、それをずっと追及するかどうかは、大学側の経営判断ですけどね。
運営者 とおっしゃいますと?
鈴木 例えば、阪大はナノテク分野が強いからといって、今後もナノテクに資源配分をするのがいいのか、それとももっと全然違うことを考えた方がいいのか、については経営判断が必要だということです。
運営者 そこは、大学の戦略とビジョンの策定ということになるわけで、全学的に見ながら学長に対してレポートするということになるでしょうね。そういうのも、学長室を作って何人かで研究する機能を作ればいいと思うのですが。
鈴木 そこで海外の事例を研究するとかね。
それと広報。広報にも2つあって、対外的な広報と、大学ってやっぱりユニバーシティー、つまり1つの世界ですから学内関係者および共同研究などをしている企業のような利害関係者に対する広報も必要になるでしょう。旧帝国大学であれば、教員と学生だけでも万で数えることになります。さらに関係している企業も入れるとすごい数ですから。
その人たちに、「自分たちはこういう分野のことをやりたいんだ」と主張して、お金を出してもらえるような方向にもっていくのがよいでしょう。
運営面 そこには、これまで日本の大学が持っていた傾向とはまったく違うものが求められているように思えますね。