タコツボ化を防ぐ「組織に横串を刺す専門職」
運営者 それで、そのような「知」の流れを作り出すためにはどうすればいいのかということを、東京財団を振り返って教えていただきたいと思うんです。
鈴木 難しいテーマですね。
つき詰めて言うと、お金と人と情報と組織が必要だということになります。
それで願わくばその人材も2種類必要で、実際に研究をしてくれる人と、アドミニストレーターと。そこにはリーダーシップが必要ですし、コンビネーションの能力も必要ですし、今おっしゃった編集者的な能力も必要でしょう。
今井賢一さんがおっしゃっていった、エディトリアル・クリエィティビティ(編集的創造性)ということなのでしょうが、その編集的創造性を社会の中でどのように作り出していくべきか、発揮していくべきかを考えることができる人が必要です。
それらの相互関係の中から、知的なものは生まれてくるわけですから。
運営者 日本人は、例えば携帯電話とか、精密電子製品を作るのがうまいのですが、ではなぜ「知」を生み出すシステムを作り出すのは下手なんだろうかと思うんです。
目に見えるものは器用にいじるのに、目に見えないものは作れないんですよね。今言ってるような編集的な能力といった概念は、うまく相手に伝わらないですよね。
鈴木 それはね、日本はやはり職人の社会ですから、何かを極めるのが目標であり、よいことだったんです。でもそのばらばらの職人の社会に「横串」を通す人がいなければ、「知」をうまく生み出すということはできないんですよ。
横串を通す人という職種は、日本にはないんです。
運営者 最近調べて知ったのですが、アメリカだとアカデミック・アドミニストレーターという仕事があって、これは職業として確立されているわけですが・・・。
鈴木 アメリカだと、そういう人たちが生きていける環境があるわけです。
そういう横串的な職業というのは、大学にもあるし、政府の中にもある、そういう世界ですからね。企業の中にも、われわれから見るとわけのわからない職種がある、そういう人たちが食べていける横串的職業がいっぱいあるということです。
運営者 組織に横串を刺す専門職ですか。タコツボ化を防ぐということですかね。
もうひとつは、人とモノとカネの資源配分を考えるときには、それらをトータルで見て、評価して、差配できる人がいなければマネジメントできるはずもないということがあるのですが。
鈴木 そのためには、もちろん個人の能力も必要ですが、能力ではカバーできないものがいっぱいあるんです。