国家主権の危機.1


キティホーク(先月撮影)

 アメリカ合衆国が、世界の為政者たちに呼びかけて、アフガニスタンのテロ勢力に制裁を加えようとしている今日、日本が行動を決定するにあたって、意識しなければならないものはいったい何でしょうか。

 われわれは、
何を攻めるべきなのでしょうか。
どのように攻めるべきなのでしょうか。
あるいは何を守るべきなのでしょうか。

 こう考えたときに、われわれが行動を決定するにあたって、唯一守るべき目標は何か、それは「日本の国家主権」ではないかと思います。
 私は、わが国が主権国家としての実質的な権利を今後も守り続けることができるように、状況に応じて態度変更していく必要性を強く感じるようになりました。理屈は後からどうでもつければいいと思います。

 今日の状況は、湾岸戦争の時とは全く異なります。
 われわれは、冷戦の最大の受益者として、戦争状態を認識せずに冷戦時代を過ごし、その報いとして冷戦が終わった時もはっきりとした時代の替わり目を感じることなく、「今後もアメリカは自由世界の盟主たりえるであろうし、また世界の唯一の超大国としての道を歩むであろう」と勝手に思い込んできました。
 しかし90年代を通じて、アメリカは大きく戦略を転換してきました。フィリピンから基地を引き揚げましたし、電子兵器などの発達が戦略を完全に変更しつあります。ロー・インテンシティブ・コンフリクトへの対応力も強化してきましした。
 その結果として、今回の戦争では、あるいはイスラム諸国に対する十字軍というイメージを払拭するためもあるのでしょうが、アメリカは同盟諸国に対して実際的な参戦や支援を求めてきています。アメリカは、一国優位のこれまでの姿勢を転換したと、はっきりと認識するべきではないでしょうか。

 アメリカは、今後は日本など外国に対する軍事協力を求める場合に、この枠組みを多用することになるでしょう。その時に、「指揮権はアメリカが握るものの、実質的に戦闘行為を行うのは同盟国」という新しい形の同盟戦争のスタイルをつくる布石が、今回引かれつつあると思います。

 特に、日本の海上自衛隊、航空自衛隊に関しては、アメリカ軍との共同訓練にあたって、アメリカ軍の空母機動部隊の一部に組み込まれて作戦行動するという訓練しか行って来ていないそうです。イージス艦が収集した情報は、自動的にアメリカ軍と共有されます。つまり、この情報に基づいてアメリカ軍はミサイルを撃つことがあり得る。このような形での作戦行動を行った場合、これは自動的に集団的自衛権が発動されるのみならず、戦争行為の発動自体が、日本国首相ではなく、アメリカ軍の指揮下によって行われてしまうという、シビリアンコントロールの概念を超えた事態になってしまうわけです。「後方支援」など、絵空事。イージス艦が出航した時点で参戦です。
 これはもう既に主権国家としての地位を放棄した状況だと言えるでしょう。アメリカはよもや今回、同盟国に対して、このような愚は侵さないと思います。しかし、今後行われる戦争においても、アメリカが、そのようにやさしい姿勢を示し続けるという保証は全然ありません。しかも、今後の紛争は、日本の鼻先である東アジアで起こる可能性が低くはないわけです。

 ここで誤った姿勢をとってしまうと、招来取り返しのつかない事態を招いてしまう危険性があります。

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