CEOのオフィス
 




 

ソニーのネットワーク戦略 2.

麻倉怜士

2000.5.4


 出井社長はこう言った。
「ブロードバンドのインターネットが一般的になった時、お客さまとさまざまなプラットフォームにて直接につながり、その個人が本当に必要なコンテンツやサービスを提供するのがこれからのソニーです。その意味では“パーソナル・ソリューシュン・カンパニー”ですね。といっても、ソニーなんだから、徹底して楽しいことを提供する会社でありたいと思っています」。

 この出井発言には、今のソニーを理解するキーワードが満載だ。

 まず●「ブロードバンドのインターネット」(出井社長)。
 ソニーでのただいまの流行語が「ブロードバンド」であり、例えば、ソネットはブロードバンド時代のAOLになりたいという文脈で語られる。ソニー・コンピュータ・エンターテインメントの久多良木社長は、こう言う。
 「われわれは尖兵として、ソニーの新規事業を物凄い勢いで牽引します。家庭内でワイドバンド・ネットワークの実現への最短のプラットフォームは、なんといってもプレイステーション2でしょう。それを舞台に斬新なエンターテインメントを実現し、プレイステーション・コムを始めとして、どんどん新しいネットワーク事業を立ちあげたい。そこでは、ソネットなどのBtoBのインフラを共有することになるでしょう。それに次世代を睨んで最先端の半導体の開発にも、どんどん突っ込みますよ」。

 ソニーは、「ブロードバンド時代になったら真価を発揮する」ネットワーク技術を驚くほど豊富に持つ。それがilink、アペリオス、DRC、PAW,プレイステーション2、実社会インターフェイス,メディアクルージング……はいずれも、そんなネットワークの面白さをさらに開花させる。これらについて、その発想から応用の可能性まで、詳しく取材した。

詳しく取材したのはこの人

●「お客さまとさまざまなプラットフォームにて直接につながり」(出井社長)という言葉では、「プラットフォーム」がキーワードである。それを自分が作る、自分が運営するというのがソニー流だ。なぜ、ソニーがプラットフォームビジネスをしなければならないか。伊庭副社長が解説する。
 「デジタル技術が急激に発達してきたことが流通の重要さを促しました。例えば放送では電波資源は有限であり、したがって限りのある電波を有効活用しなければならないのですが、その道がデジタル技術により開かれ、そこに新しいプラットフォームができ、我々も参画したんです。それがスカイパーフェクTV!です。プラットフォームを作るという明確に意識的なことは、日本の特異性にも拠っています。
 アメリカではすでにケーブルテレビが普及し、インターネットも広く使われ、また衛星放送も普及し始めています。それぞれに存在価値があり、コンテンツプロバイダーはこのうち有効な手段を選び流通させることができます。つまりアメリカではプラットフォームビジネスという概念が無いとしても、すでにビジネスとして新しいメディアは成り立っているのです。だからアメリカのソニーはコンテンツ供給と端末供給が主なミッションです。ところが日本では、その部分が薄いので、強く意識して流通を立ち上げなければなりません。流通過程の重要性はむしろアメリカよりも上だと思っています」

 ソニーははるか先を見て、その未来の仕組みを構想するなかで、いま欠けているものは何かを自問自答し、それを補うという作業を行っているのだ。日本のソニーに欠けているものが流通とサービスである。つまり、コンテンツと端末を結ぶ伝送こそ、これからソニーの攻めるべき分野ということである。フジテレビへの出資も、その一環である。
 このへんの戦略は松下電器のそれと比べてみると、特異なところがよく分かる。松下電器はプラットフォームを自分で運営したりしない。コンテンツもやらない。その代わりに追求するのが「エンド・トウ・エンド・ソリューシュン」である。これは送り側と端末側の両側の仕事を行うことで、新しい付加価値を獲得する松下独特のビジネスモデルである。
 それが効力を発揮した嚆矢がDVD事業であった。かつてDVDのプレス工場を西海岸に立ち上げる際に、そんな無駄は許されないと社内的な反対があった。しかし当時の担当者は意地になって進めたことが、いまの松下のDVD事業にとって物凄い力になっている。
 松下は今、そのソリューシュン・モデルをさまざまな分野で応用している。DVD,ゲーム再参入、放送がそうだ。放送局の設備、撮影、編集機材という送出側と、テレビという受けて側の家庭のユーザー用の機材の両端を担当し。BtoCという形のインフラをつくる。それをプラットフォームとして、その上で、さまざまなサービスを展開するのだ。そこにショッピング、予約などの社会サービスを組み合わせる。その部分は、他社との協業で行う。

 ソニーに話を戻すと、デジタル・ネットワーク時代において、ソニーとユーザーをつなぐのが「プラットフォーム」である。
 それがあって始めて、●「個人が本当に必要なコンテンツやサービスを提供する」(出井社長)
 ことができる。ソニーのコンテンツは、ソニー・コンピュータ・エンターテインメントのプレイステーションのゲーム、ソニー・ミュージックエンタテインメントの音楽、ソニー・ピクチャーズの映画という具合に映像、音楽、インタラクティブと、現代のエンターテインメントとして必要なアイテムを押さえ、次にそれを家庭と個人のもとまで届ける手段を開発する。それがスカイ・パーフェクTV!,ソネットの放送とインターネット、そしてケーブルテレビのプラットフォーム群だ。

 

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