「解離性同一性障害」
    Dissociative Identity Disorder (DID)
   
  1980年頃から「多重人格」という診断名が日本の精神科医の間でも聞かれるよ
 うになりました。
 しかし多重人格の分身に人格形成がなされているというはっきりとした確証がもて
ないため、1994年に「解離性同一性障害」(DID)という呼び名に変更されました。
 (多重人格・・・Multiple personality Disord  略 MPD)


   この症状はひとりの人間の中に2人以上の同一性または人格が存在する状態で、
 その人格は相反する二面性を有することが多く、小児や異性の人格が含まれる場
 合もあります。
  本来、他の人格が形成されてる状態においては、主格は記憶が全くないことが
 一般的ですが、共通の記憶を有していたり、意識が同時進行してはっきり認識で
 きることもあります。
  「私がはなして、私が行動しているのに、もうひとりの私がいつもそばで見ていて、
 何か私にささやいている気がする」という感じです。

  解離性同一性障害はいつも解離しているのではなく何か強いストレスや抑圧、
情緒不安などが生じたときに引き金となって発症し現れてきます。
 その瞬間意識がとんだり、頭にもやが、かかったようなもうろうとした感覚(頭痛、
 めまい、動悸など、、)になることもありますが、人格が交代する瞬間は本人にも
 はっきりとした自覚はできず気づかない間に変わっていくのが一般的です。
  DIDは心的外傷(トラウマ)性精神障害のひとつなので原因をさかのぼると幼少期
の家庭環境、生育史に多いに関係してきます。
 トラウマ(PTSD)と共に、慢性、重症の外傷性精神障害の代表に入り、特に幼少期
 における親からの精神的虐待、性的虐待によって愛情を注がれず、思いを抑圧さ
 れ封じ込められて育った人たちのケースにみられます。
  男性より圧倒的に女性のほうが多いのは、女の子のほうが根が辛抱強く、自分を
 封じ込め良い子でいようと演じるすべを本能的に知っているからです。
 自我がだせず自分で自分を殺し、閉じ込めているうちに、自我の内にもうひとりの
 人格、もうひとりの自分が完璧に形成されていくのです。
  
  子どもにとって家庭は生きる世界の全てです。
 その家庭が残酷で愛情のないものだと察知したときから、子どもは無意識に、その
 つらい環境内で生き抜くすべを身をもって学んでいくのです。
 つらいことは見ないように、気づかないようにしよう。親からどんなにいやなことされ
 ても傷つけられてもがまんして逆らわないようにしようと心に誓うのです。
 そう思わなければつらすぎてやっていかれないからです。
 精神が狂わないように子ども心にもうひとりの自分を形成していく準備を始めている
 のです。