日本伝承医学的考察心理学



 人は心にゆがみが生じると、そのゆがみは必ず体にも派生して
いきます。かたくなに閉ざした心ほど、そのゆがみはとてつもない
強度となり、しこりとなり、中核にこり固まっていきます。
 幼少期から長い歳月をかけてこり固まったしこりは容易には解き
ほぐすことはできません。どんなカウンセリングや薬を試みても、か
たくなに閉ざされた心の扉を、人為的に、作為的に開くことはできな
いのです。閉ざされた心をノックし、開けることができるのは、同じ心
をもって、命がけで向き合うだけ真心だけのような気がいたします。

 根底から心底体当たりで人の心髄にぶつかったとき、人の心は
ゆさぶられます。心のゆさぶりはときとして悪になり、善になり、感動
となりより大きな波紋として心内に広がっていきます。
 「心がゆさぶられる」ということは、根底からゆさぶるだけの、外部
からの大きな心のゆりが必要なのです。うわべだけの机上論をいくら
まくしたてても、どんな名医の治療家のもとに通っても、心のしこりを
ときほぐすことは果てしなく不可能に近いのです。

 「人体は皮膚という袋からできていて、内臓も骨もすべてその骨の
中に浮かんでいる」(日本伝承医学人体液体論〜)といいます。
心もこれに同じです。心膜という膜に包まれ、傷ついた哀しみ、苦しみ
憂い、喜び、これらのすべての感受性が見えざる潜象の臓器となり、
膜内に浮かんでいるのです。

 幼少期からの小さなしこりは、まるでガン細胞のように体の成長と
共に大きくなっていきます。思春期になって自我に目覚めたとき、その
しこりの大きさに人は初めて気付き、なんとかそれを打ちくだこうとし
ます。そうした行為がいわゆる反抗期、反発、非行といわれるものに
なります。傷ついた心、心のかなしみをなんとか自力で打破しようとす
るのです。反発は、思春期の自我の目覚めの中で、必死に生き延び
ようとしている生への対応の姿なのです。ですから、家庭や学校が阻
止しようと働けば働くほど、かたくなに反発した心は行き場がなくなり、
ますます強固に閉ざしていきます。逃げ場を失った心は、おいやられ
れば、追いつめられるほど、貝のように固く閉じていきます。

                                     



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