子どもはおとなに比べて、催眠感受性(解離能力)が高いため
幼児期に受けた不安、ショックは心的外傷として、精神と脳に
ものすごく深い傷を残していきます。
幼少期から、日々、慢性的に心的外傷にさらされて育った子どもは
毎日の日常生活でおこっている現象を、
「これは現実ではなく、夢の世界のできごとなんだ」
「こらは自分におこっていることではないんだ」
「これはすべてうそなんだ」
「ぼくはつらくない。かなしくなんかない。しあわせなんだ」
と必死に思いこもうと、自己催眠をかけ続けます。

肉体に生じる苦痛よりも、精神に波及する苦痛、ショック、痛み
のほうが、子ども心には多大なる深い傷を及ぼしていきます。
その精神的いたみから、のがれたい一心で、子どもは現実から
逃避し、虚構の世界を、自分の心の内に無意識に築きあげてい
くのです。
精神的に避けられない苦痛から逃避することによって、毎日の、
この苦しみの事態からのりきろうと、心ががんばってくれるのです。
逃避、解離、別人格の形成、もう想はすべて、心の崩壊を守りぬく
ための生きぬくすべです。

子どもはどんなに虐待されても、精神的いたぶりを親から受けても
放任され続けても、親への愛着を断ち切ることができない生命的
構造になってこの世に生を受けてきます。
子どもは初めて出会う人間に、情愛を求め続ける本能があります。
ところが、充分な情愛を得られなかったときに、心が解離、分離現象
をおこしていくのです。
いわばこれは、心を守りぬく自然現象なのです。

うそばかりつく子ども、 ほんとうは笑いたくもないのにいつも笑顔を
絶やさない子ども、人と目を合わせようとしない子ども、
子どもらしくないおとなびた子ども、自分の意見をいわず人にあわせ
ようとばかりする子ども、おとなの機嫌をとる子ども、、、、
心のバランスを崩し始めた子どもは、こうしたありとあらゆる手段を
用いて、完全なる心の自己崩壊を防ごうとしているのです。
子どもの発する精神的SOSにとかく親は、ほとんどの場合、気づいて
くれません。気づこうとすらしてくれません。
子どものささいなサインに気づく、母性ある優しさのある親であれば、
子どもの心はこうした状態にはならないのですから。
全く耳を傾けてくれない親だからこそ、心の叫びに気づいてくれない
親だからこそ、子どもの心が深く傷ついていくのです。
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子どもの心〜心の傷