心的外傷の治療法としては、対話療法、グループ治療、認知行動療法、
薬物療法などがありますが、こんにちの精神科の治療のもとでは、心的
外傷は深いほど、薬療法によって対処していく場合が多くみられます。
しかし、薬は一時的に、不安、恐怖、悲しみを封じ込めるだけで、根本的
解決にはなりません。
それどころか、薬によって抑制されてしまうと、その効果がきれたとき、
果てない孤独感、やりばのない焦燥感がおそってきます。
薬によってからだや、脳細胞が完全にコントロールされてしまうため、
本来、人間に備わっている生命カンが大きく、くるってしまうからです。
人はみな、生きるために生まれてきます。
生きるほうへからだも心も懸命に働いてくれているのです。
その生命カンがくるってしまうと、生命のツナ、心の糸は、いとも簡単にたち
きれてしまいます。薬の服用者に自殺する人が多いのはそのためです。
脳細胞へ指令をだしている、生きぬくすべ、生きる気力が消失してしまうと、
人間の心から恐怖心がなくなってしまいます。
自分でナイフをつきつけても、電車にとびこもうとしても、怖い、いたい、と
いう感覚がまったくなくなってしまうのです。
高層ビルから飛び降り自殺する前の人間の心理は、30センチ下の段差を
ちょっとジャンプする感覚だといわれます。 落下時に意識も失うので、
いたみも恐怖もなくなるといわれます。
生きるために生まれてきた生物の中で、自ら命を絶つ行為 をするのは
人間だけです。
自然の摂理に反した誠に悲しむべき行為です。


 トラウマは、正式には Post-traumatic Stress Disorder 、外傷後ストレス
障害(略してPTSD)といいます。
 PTSDはその人が信頼していた身近な人との関わり(親や親友、配偶者
など、、)から、極度の不安や恐怖、孤独感、精神的暴力、肉体的暴力など
を与えられたとき、その事実が たえがたい衝撃として脳へ響いてくる場合
に生じます。そのときには抑制されていたとしても、長い歳月の後、同じ
ような出来事が再体験(フラッシュバック)されたときに、それが引き金と
なっていっきに現れてくることもあります。

 精神的な障害、心の傷には、PTSD以外にも、うつ病、自律神経失調症、
パニック障害、解離性障害、対人恐怖症、離人症などさまざまな症状が
あります。これらの8割以上がPTSDとの合併症としてみられる場合がある
ことから、心の傷が人間の精神、脳に 及ぼす影響がどれほどまでに強い
ものなのか、 私たちはあらためて再認識していかなければなりません。
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