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 アジャストメント-早川文庫
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さよなら、ヴィンセント Goodbye,Vincent / フィリップＫディック 訳：大森望 のあらすじ 初出 ??? 原稿到着??? 短編 第１２４作 この前、道を歩いていたら、ある男が、車に乗せてくれた。話すこともなかったが、そいつの 車の中に着せ替え人形があったので、これは何だ、と聞いてみた。 「レヴィ社のリンダ人形さ。マテル社のバービーより良いよ。売り上げは、やがて逆転するさ」 「こんな娘が、本当にいたら良いな」 「聞いた事がある。リンダには実在のモデルがいたんだ。リンダは愛車のカマロでフリー ウェイを飛ばしていたんだ」 「ふ〜ん」 「リンダは電話交換手をしていた事がある。傑作な話さ。リンダは電話がかかって来ると、訳の判らん事を言い出す。 すると相手は二種類の反応をするのさ。怒って電話を切るタイプと笑い出すタイプにね。要はユーモアのセンスと余裕だ」 「超ヒップな交換手が電話に出たら、どう対応するかは考えるね」 「正に、超ヒップ、リンダはそれさ。何時も元気一杯。でも人間って、それでやっていけるかな？彼女も疲れたんだ。 擦り切れて．．．だから複製を作りたくなったんじゃないか？」 「あっ！先の信号は赤だよ！」 「サンキュー」男はブレーキを踏んだ。 「それでリンダの部屋は人形で一杯になった。そして毎夜、人形に助けを求めたんだ」 「人形は彼女に何をしてくれたんだ？」 「それは誰にも判らない。彼女を愛してくれた人間は回りに沢山いたんだが」 「誰も助けにはならなかったのか」 「リンダは何度か、警察のお世話になっている。ノーブラで運転をしていた時捕まった。あの時の罪状は何だっけ？ それから病院に勤めていた時に、勝手に死体解剖見学ツアーを開いた時だ。ツアーの値段は見るだけなら５セント、 触りたいなら１０セント．．．」 「本当にヒップな女だな」 「あと、墓石掃除のアルバイトをしていた時がある。ブラシとバケツを持って、墓石をゴシゴシ擦るのさ。 何故か彼女が掃除すると、墓石は古びて見えた。彼女はそれが気に入って、『世界中の墓石を古びさせてやる』って、 旅を始めたんだ。ブラシを抱えて、北へ北へと霊園を巡った」 「感謝されたのかな？」 「彼女は何を思ったのか、磨き終わった墓石にステッカーを貼りだした。『フラジャイル！』。それが彼女の 仕事の軌跡さ。カリフォルニアからオレゴン．．．そこでステッカーは尽きたんだ。その後は判らない」 男は、車を道端に止めた。そして人形を掴んで、俺の方に向けた。 俺は人形に向かって手を振った。 「やあ、リンダ！」 『ハロー、ヴィンセント！』 「僕の名前はフィルさ。ヴィンセントじゃない」 「でも、リンダ人形は、みんなそう言うんだ。ヴィンセントって誰なんだろう？ ドライブはここまでだ。リンダ、フィルに、さよなら、をしな」 『さよなら、ヴィンセント』 ．．．．．．．．．．．．．．
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三分 小説 備忘録 [どんな落ちだっけ？] |
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