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Mr.SpaceShip
Mr.SpaceShip


人脳宇宙船 Mr. Spaceship / フィリップKディック 訳:Katz-Katzのあらすじ
初出 Imagination Stories of Science and Fantasy, January 1953 原稿到着1953 短編 第47作

グロス司令官は言った。
「フィル君。我々はこのやっかいな敵にどう対応したら良いのだろう?」
軍事研究員フィル クラマーは壁のボードを見せ答えた。

「これが敵の防衛網 生体地雷です。この触手で彼らは反応します。生きているのです。
   しかし、我々の船は機械的なジョンソン制御です。機械では生物の知恵に勝てません。しかし」

「重巡洋艦が今週、戻って来ました。そこで面白いデータがあります。始め、地雷は重巡洋艦
   とは20マイル離れていました。しかし、その近づくとその距離は1/4に縮まっていたのです。
   つまり、彼らは自立して動くのです。修正して、攻撃するのです。今回は修正が足りなかった」
「なるほど」
「つまり、電子回路で制御された船では自己爆破できる地雷から逃れられません。
   この地雷のトリガーは、機械ではなく、意思を持つ=生命体です」

グロス司令官は付け加えた。 
「地雷網は5万マイルの幅がある。そこで、修理や維持もされている。この地雷は勝手に増える。
   卵を産み、増え、地球船を破壊する。それで奴らは餌は一体何なんだ?」

「たぶん破壊された我々の船でしょう。捕食生物の知恵で攻撃されては、電子回路では勝てません」
フィルは書類を開けた。
「そして、私には提案があります」

「興味があるね」
グロス司令官は言った。

「我々も生命体を利用すれば良いのです。同じような武器を作りましょう」
「どんな生命体を使うのだ?」

「人間の体に勝るものはありません。それより優秀なものを知っていますか?」
「しかし人間の体は弱いだろう。寿命も短い」
「体全部が必要ではありません。頭脳さえあれば良いのです」

「頭脳を取り出すのか...」
「技術的には既に行われています。頭脳は数回の転移が出来ます。体が破壊されたと場合に
   人工体に入れる手術はできます。人口体の替わりに宇宙船に入れる事も可能です」

部屋は静かになった。

「素晴らしい考え方だね。後の問題は誰の頭脳を使うかと言う事だ」


"Yucconae"はプロクシマ ケンタウリの辺鄙惑星から、接触して来た。
まるで鉛筆の様な"YUK"の宇宙船に、地球の巡洋艦は破壊された。そして戦争が始まった。

両者は自分達の惑星系の周りに防衛網を造った。しかしYUKの方が優れていた。
地球船の攻撃は、まるで歯が立たなかったのだ。


フィル研究員の所にグロス司令官から連絡が来た。待ち合わせたフィルの所にグロスがやって来た。
フィルは驚いた。一緒にやって来た女性に。それはドロレス、別れた元妻だった。

「やあフィル。久しぶりね」
「ああ、君は元気そうだね。どうしたんだ?」
「グロス司令官がこのプロジェクトの重要な役をくれたの。長官なのよ」

「さて、君の提案を進める事にした。詳しく説明してくれ」
グロス司令官は言った。
「新しい船はジョンソン制御の替わりに人間の脳を備えている。頭脳用の配管槽に電子回路が
   繋がれている。脳細胞には栄養が与えられ、微小電流が増幅される...」

ドロレスは聞いた。
「船には人間としての意識はあるの?」
「生きてはいるが、意識はない。動物や植物、昆虫は判断が速い。しかし
   意識はない。個人としての人格やエゴのない、高速な反応能力を持つのだ」

「本当かしら?」
「問題はあるかもしれないが、戦争を終わらせる事ができるなら、やる価値はあるだろう」

グロス司令官は言った。
「では、被験者の所に行こうか」
「それは、俺には関係ない事だ」
フィルは言った
「いや、関係あるよ」
「どう言う意味だ?」
「ともかく行こう」

彼らは、田舎に行った。巨大な樫の木の陰の家に着いた。
「保安省の者です。トーマス教授にお会いしたいのですが」

「どなたですか?」
「保安省の政府からの用件です」
グロス司令官はフィルを見た。

「大学の時に会ったマイケル トーマス教授を覚えてる?」
フィルは驚いた。
(トーマス教授?生きているならもう70歳以上...)
暗い部屋の中、萎びた老人が横たわっていた。注意深く見ると、老人の目は彼らは、じっと見ていた。

グロスは言った。
「トーマス教授?私は保安局のグロス司令官です。この人はたぶん、ご存知だと思います」
曇った目がフィルを見た。

「知っている。フィル クラマーだね。立派になったな」
その声は貧弱だった。
「結婚したんだって?」

「はいドロレスと結婚しました。でも離婚しました。今日は仕事で伺ったのです」

「教授、ここに来たのは」
グロス司令官は言い出した。

しかしフィルは遮った。
「いや、まず教授と話をさせてくれ」


フィルは教授と話した。学生時代の尊敬する恩師だった。
「教授、私たちが働いたプロジェクトについて話しませんか?YUKの防衛網を破り、彼らと話合えたら。
   それが、できれば戦争は終結に向かうかもしれない」
「話を続けてくれ。やってみる価値がありそうな話だ。私は君を信じているよ」

話を聞いた教授は、船の原理を書いた紙の最初の頁を、もう読んでいた。
「決心したら伝えるよ」


「私はトーマス教授をまるで、実験動物の様に見てしまった」
「彼はやるかしら?」
「やって欲しくはないが...」


数日後グロス司令官から連絡が来た。 「教授は承諾したぞ。なんだ嬉しそうじゃないな」
「ああ、彼が決断するとは思っていなかったのでね」
「8月中旬に向けてプロジェクトは完成するぞ。もうすぐだ」


説明会が始まった。この後、船はテスト運転に入る。 「皆さん。この船は、ジョンソン制御ではなく、生きている脳によって動くのです。脳に意識はありません。
   しかし、その能力は、機械の比ではなく、危険な状況に適切に合わせます。どんな人工物より勝るのです...」
グロスは聴衆に説明していた。


フィルは聞いた。
「操縦は大丈夫か?」
「離着陸は普通の船と同じだ。自動制御は安定した空間で行うものだ」
操縦士は言った。

「ただ、ひとつ疑問、どうして、操作方法が変更されているのか?」
「変更されている?」

フィルは計画書で調べた。操縦士は、回路の変更点を指摘した。言った。
「その変更は、君の計画書にはないな。何故だろう?」
グロス司令官が制御室に入って来た。

「グロス、誰が変更を指示したんだ?」
「教授だよ。幾つか有益な改善アイデアを出してくれた」

グロス司令官はパイロットに向かって言った。
「さあ。重力を逃れて実験を始める。準備は良いか?行くぞ」

途方もなく大きなうなりが鳴り、船は飛んだ。彼は壁の一部につかまった。
キャビンはきしんだ。ジェットは暴れた。
船は飛び、フィルは目をつぶった。息を止めた。スピードは上がり、彼らは外宇宙へ向かっていた。


フィルは制御配線の下。金属カバーを外し、結線状態を調べた。
「なんだ、この変更は!本来は制御室へ行く回路が、発進すると、自動的に切り替わる。すべて教授の脳へと!」

グロス司令官は言った。
「すべて頭脳へ?」
フィルは言った。
「たぶん教授は電子回路は信じていないのです。遅いのでしょう。一切の処理の遅れを許さないのです」

「すぐに月に着く、そこで降りよう」
彼らは眼下の空港を見た。

操縦士が着陸しようとした。しかし、制御はできず、船は月を通り過ぎた。月は後ろに消え、
船は外宇宙へ向かった。前へ前へと進んで行った。

「どうした?」
「全く、判りません。制御できないのです!」

フィルはマイクを掴んだ。
「音声で脳へ指示が出来るが、彼が従うだろうか?」
「やってみよう」

「スピードを落とせ」
ゆっくりと船は曲がり始めた。タービンが止まって動きが弱くなった。
「ここまでは問題ない」
グロス司令官は言った。

フィルは更に指示した。
「月へ向かって戻るのだ」


タービンの振動が聞こえる。船は回転した、また月へと戻る!

「し、しかし、少し速過ぎるぞ」
操縦士は言った。
「こんなスピードで、うまく制御できるのか?」

左舷一杯。月は大きくなる。操縦士は急いで制御盤に向かった。盤に手を伸ばす。船は急停止した。
しかし、鋭角に進路変更し、皆は床に吹き飛ばされた。 進路は急に変わり、言葉もなかった。

操縦士は操作盤を見つめた。
「俺は何もしていないのに!」

船はスピードを、どんどん上げた。
「操縦をマニュアルに戻した方が良い」
「だめだ!戻らない!」
スイッチを換えても、何も起きなかった。

「教授は配線を変えさせて、全ての制御が可能になったんだ。温度制御も
   ハッチを空けて、中の"ゴミ"を吐き出すのも自由だぞ。我々には、何も術が無い」

船はコースを変えなかった。月から離れて行った。
フィルはマイクで言った。
「制御を戻せ!指令だ!戻れ」

「だめです。ハンドルは全く動作しません!」

「我々はどんどん進んでいる!」
「このままでは、外宇宙への、第一防衛線に数分で着く。突破しようとすれば、撃たれるかもしれない!」

「しかし、この船は我々を、何処に連れて行くんだ?」


防衛線との無線がつながった。
「私はドゥワイト操縦士です。我々の船は今から防衛ゾーンに高速で突入します。撃たないで下さい!」
防衛線から、機械の警告音声が返って来た。
「防衛ゾーンに立ち入る事は禁止されています」
「出来ないんです。制御を失った」
「では、我々には高速追跡船がある。脱出すれば、それが君達を拾ってくれる。
   君達を見つける事ができれば。宇宙照明弾は持っているか?」

「ある。よしやってみよう!スピードはどんどん上がっているぞ。ここに留まるのは危険だ!」

フィルはマイクを取った。
「教授!フィルだ。聞いてくれ!船を止めてくれ!聞こえるか?」」

抑揚がなく機械的。生命感のない声が金属のスピーカーから、聞こえた。
「...フィルか?キミをニンシキできない」
「教授!私です。フィルです」
フィルはマイクのハンドルを握り締めた。
「船の制御をこちらに下さい。教授!我々は地球へ戻ります!戻らなければ!」
「フィル。キミョウなカンカクだ。ワタシのシコウ..ワタシのコエはキコエルか?」

「教授!お願いです」
「ワタシはハイセンをヘンコウした」

突然、通路のドアが開閉した。音は様々な箇所から聞こえた。ドアは開き、閉じ。ライトは点滅。
「どうなったんだ?」
非常用耐火システムから水が吹き出た。緊急脱出口が開き、空気が音を立てて、吐き出される!
脱出口は閉まった。船はまた静寂に戻った。突然、止まった。

乾いた無表情の声が壁のスピーカーから流れた。
「ワタシにはスベテがセイギョカノウだ。フィル、キミとハナシがシタイ」

「この船は危険だ!我々は全く制御できない」
彼らは出口へ向かった。細く、青い船が、信号を点滅させながら、彼らの傍を飛んでいた。

「地球の追跡船だ。飛び出そう。拾ってくれるぞ!」

彼は備品棚に走りハンドルを回した。ドアが開き、宇宙服が床に落ちた。
彼らは夢中で思い宇宙服を着た。彼らは全員でハッチを引いたが、びくともしなかった。

グロスは必死に辺りを探した。
「破壊銃はないか?ぶち破ってやる!」

「キミタチはハッチにイルノカ?」
無表情な声が聞いた。通路を漂い、渦巻く。彼らは見た、彼の周りで光るものを。

「ハッチを開けてくれ!」
フィルは言った。「お願いだ!」

静寂があり、長い沈黙、そしてゆっくりハッチは開いた。空気が流れ、彼らは宇宙空間へ押し流された。
一人ずつ飛び出し、噴射で飛んだ。少し経ち、追跡船に回収された。


「終わった」
助けられたフィルは呟いた。

航海士は聞いた。
「君達の船に何が起きたんだ?急に飛んで行ってしまったが、誰が乗っているんだ?」

「あの船を破壊する必要がある」
グロスは厳しい声で続けた。

「彼=船はどうするつもりだろう?」
グロスは聞いた。
「トーマス教授はどういう人間だったか覚えているか?彼は危険だ!」
「彼は戦争に反対していた」
「誰でも嫌いだろう」
「ああ、しかし彼は古いタイプの人間だ。ダンテやミルトンを読む、聖書も。
   政治的な事には関与せず、政治的信念などなかった。丘と自然を愛していた」
「たぶん転移が彼の精神を異常にしたのだろう」

「では、なぜ彼は配線を変えたのだろう?」
「たぶん、もっと長生きしたかったんだろう」


「防衛域外部隊は、船を探知した。攻撃が始まるぞ!」
教授の船は地球の防衛隊に取り囲まれていた。


「???すいません司令官。奴に逃げられました。制御スクリーンを見て下さい」
「彼は素晴らしい戦術士です。予測できない動きで、逃げ切りました!」
「船の動きを調べると、古い戦術、そのままです。しかし、とても有効でした」

彼は新しい体を得たのだ。古びた弱い体から巨大な鉄とプラスチックへ。彼は強く巨大になった。


月に着いたフィルに連絡が来た。
「フィル クラマーさんですか?こちらは、ニューヨーク中央病院です。あなたの奥さんが
   事故に逢い、大変危険な状態です。フィルさん。至急こちらに、来られますか?」

彼は地球への連絡線を探した。しかし緊急船はなかった。
辺りの航海船に連絡網を回すと、エンジン故障で地球へ戻る修理船が見つかった。

フィルの要請で、やって来た修理船は巡洋艦だった。フィルは乗り込んだ。

傾斜板を登り、フィルは階段を上り、メインデッキに入った。メインデッキのタービンが唸り、
宇宙空間へと飛んだ。フィルは周りを見て驚いた。誰もいない。これは無人船だ!

「え?まさか!教授の船とは!」
船が大きな音をたて空間に飛び出した。月と地球は一瞬で背後に消えた。
彼は何も出来なかった。


彼は聞いた。
「連絡をしたのは教授ですか?ドロレスは本当に?」

壁のスピーカーは無表情に言った。
「キミのオクサンはアンゼンだ。ビョウキはウソだ。スマナイ」

船はスピードを上げた。凄いスピードで空間に飛び込んだ。さらにスピ−ドは上がる。
最終防衛網に突入して超えようととしていた。フィルは気分が悪くなり屈んだ。
「スピードをアゲテ、スマナイ。モウスグ、ジユウにナル」
「YUKの船はどうだ。彼らは、この辺りにいるか?」

「ナンドかチャンスをノガシテイル。カレラはキョウミブカイ」
「興味深い、とは?」

「カレラはワタシが生体地雷にチカイ事をシッテいる。ワタシはカレラにチカヅいてケンキュウしたい。
   カレラのキカイのソザイはスベテ『活性物質』だ。カレラのキカイはスベテ、イキテいる」

「地球人は何時も戦っていた。始めは自分達同士で、やがて火星人と。そして今はYUKと。
   しかし、それが人間の社会の必然なのか?そうではない。戦争をしない人間だって沢山いる」
「ワタシは100ネン、ウゴキツヅける。ジンルイのアタラしいコロニーをツクルのだ
   『フェアチャイルド探検隊』のホウコクしたワクセイ。ソコにイッテみよう」

フィルは壁のスピーカーを見た。
「どうやって貴方は人々を地球から離させ、私たちの元に呼ぶのですか?貴方の理論では、
   今の世代は救えない。次の世代から始めないといけないのでは?」

壁のスピーカーから、乾いたクスクス笑いが起きた
「イジュウシャはタクサンはヒツヨウない。ヒトクミでヨイのだ」

通路の奥、ドアが開いた。音がした。フィルは振り返った。
「ドロレス!」
「フィル!あなたは何をしているの?連絡を受けたの、貴方が月探検で負傷したと」

フィルはゆっくりと立ち上がり、外を見た。この手がつかむ、船は無数の光のかけらの中を
進む。輝く星の中を、沢山の太陽、惑星、恒星系、銀河、果てのない宇宙。それらが待っている。

フィルは振り返る。
「我々は何処に向かっているか?」
彼は、怯え震えている妻に向かって笑った。その大きな瞳は不安で一杯だ。
「何処に行くかは判らない。まず教授の言う所へ向かってみよう」

そして始める。数年振りに彼はドロレスを抱き寄せた。初めは彼女は体を硬くしていた。
震えて怯えていた。やがて、緊張は解け、その目から涙が落ち、頬を流れた。

「ドロレス!」
「フィル!もう一度、私達はやり直せるかしら?」
彼は彼女にキスした優しく、情熱的に。

宇宙船は無限に向かって飛び続けた。路はない。虚空が先にある。


..............


離婚常習者のディックらしい話ではありますが、なんだこりゃ?って感じも否めません。

結局、なんだかんだで1ヶ月くらいかかってしまいました。

記:2011.07.14


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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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