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人間狩り (1991)ちくま文庫
人間狩り


火星探査班 Survey Team / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 Fantastic Universe(1954.5) 原稿到着1953 短編 第61作

「あれが、ロッキー山脈です。そしてここはコロラド...」
ホロウェイには、コロラドの外れでの、核爆弾の炸裂が見えた。
戦争が始まり、既に30年。地表の状況を説明するこの若い兵士の産まれる前だ。
彼の人生は、地下生活だっただろう。地上の有様は酷いものだった。

その時、轟音が聞こえた。
「ロケットだ!火星探査班が帰って来たぞ!」
火星探査班、我々の最後に頼み、金星調査は人間の居住に否定的だった。溶岩と蒸気の大地。しかし...


ロケットから、観測テープの山が取り出された。火星の大地をロボットは歩き回った。
そして、サンプルを観測結果を持ち帰った。

放射能に汚染された地球の地表では、人間は活きてはいけない。しかし、人間は地面の中で
生きていく様には出来ていない。例え火星であろうとも、人類は地表で暮らす必要がある。
地下で生まれた子供達はまるでミュータントだった。去勢された生命。彼らでは、人類に未来は
ない。少なくとも50年の間、地球の大気に漂う放射性物質は悪影響を与え続ける。

火星。
弱い太陽。大地は既に活動を止めている。死んだ惑星だ。

しかし、それでも我々には、移住する必要がある。まず人間の探査班を送るのだ!


火星の大地が急速に近づいて来た。
「このままでは大地にぶつかる。脱出するぞ!」
「そんな調子で、移民なんて出来るのか?」
「それまでには、何とかするさ。行くぞ!」

探査班は、弱い重力の中、ゆっくりと降りて行った。

途中、ヴァンが言った。
「ひとつ忘れていた事がある。火星の問題点だが」
「問題なんて山ほどある」
「いや、重要な事だ。火星人さ」
「そんなものがいると思っているのか?」
「可能性はあるだろ」


ホロウェイは、火星の大地を見た。極地は白く、かつては"運河"と言われた青緑色の
帯も見える。眼下で爆発が起こった。脱出した殻の宇宙船が地面と衝突したのだ。

ホロウェイはピストルを握り締めた。丘から見ると碁盤の目の様な地帯があった。
彼らは、そこに向かった。

彼らは小屋と簡単な防衛装置を設置した。
「驚いたな、ここに古い街があったなんて!」
「しかし、廃墟だ。彼らは絶滅したのだろう」
「地面は穴だらけ。全て掘り尽くしたんだ。ここには何も残っていない、巨大なゴミ置き場だ」
「ところで、我々の食料はどのくらい持つ?」
「ニヶ月ですね」
「それまでに、何かを見つけないと」


火星の大地は蜂の巣の様だった。シロアリの居住地だ。全てを火星から持ち出した者達。
ここは墓場だ。

「記録装置が見つかったぞ!これで彼らの事が判る!」

言語班が解析した。

「...つまり、こう言う事だ。彼らは滅亡したのではない。
   全火星文明が脱出したのだ。300年以上かかって」
「どこへだ?」
「判らない?それは記録にはない」
「しかし、どこかに、移民可能な星はあったと言う事だ」
「しかし、ここがダメだと言う事は、彼らは太陽系から出て行ったと言う事だ。
   それが我々にもできるのか?外宇宙航法が必要だ。太陽系は死んだのだ」
「しかし、記録の最後の方には、こうある、植民地は堕落した。彼らは野蛮人に退化した、と」
「それなら、これから彼らの植民地に乗り込んで、彼らを支配する事もできる」
「それは良い考えじゃない」
「じゃあ、どうするんだ?そこ以外に、植民地などあるものか?
   彼らが見つけた所以上のものを、我々は見つける事ができるんだろうか?」
「少なくとも、彼らの宇宙航法に関する資料は全て残っている。
   研究すれば、我々が彼らの跡を追う事も不可能ではない」
「よし!決まったな?」
「ああ、気が進まないが...」

ホロウェイはタワーを見つめた。昔、ここから、火星人を乗せた宇宙船が、その植民地へ
向かって飛び立ったのだ。何台も、何台もが...しかし、今、その面影はない。


「面白いものが見つかった。宇宙望遠鏡だ。
   ここになら、殖民惑星の情報が残っているかもしれない」
ホロウェイは、宇宙望遠鏡室に行った。
「彼らの殖民惑星が判ったよ。この望遠鏡は、常にそこに向く様に設計されていた。
   見てみろ。今でも見える」

ホロウェイは、望遠鏡を覗き込んだ。しかしぼやけていて、良く見えない。
「これか?ぼやけて良く見えないが」
「ああ、計算すると、60万年前だ。彼らが飛び立ったのは。
   ここの惑星の資源を使い果たし、殖民惑星へ移住したんだ」
「それで、この惑星は、宇宙のどこにあるんだ?」
「判らないかい?それは地球だよ」
「そんな!」
「しかし、彼らに出来たのなら、我々にできないはずはない。
   もっと別の惑星を探すんだ。別の」
「まだ、判らないのか。3つ目はもういらない。2つで充分だよ」


..............

なるほど、ハンプトンフィンチャー(ブレードランナーの脚本家の一人)は、この物語を読んで、あの台詞を作ったのでしょうか???
いや、そんな事はありません。実は、この落ちは、私が変えました、あしからず。あ、少し順番を変えただけですけど...すまん!

記:2012.07.07


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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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