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人間狩り (1991)ちくま文庫
人間狩り


ナニー Nanny / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 Starting Stories(1955.Spring) 原稿到着1951 短編 第16作

「ナニーが居なきゃ、俺達はどうなっていた事やら」
子供達が起きてから、何の不安も無くベッドに眠るまで面倒を見るのもナニー。
メアリの、うんざりする家事を、替わりにしてくれるのもナニー。
それにナニーは厳格だ。子供達が、「お菓子をもっとくれ」と粘っても、
ナニーはへこたれない。それでいて、子供達はナニーが大好き。

「...もしナニーがいなかったら...」
「ありえん事さ」

ナニーは二階に子供達を起しに行った。子供達はナニーの体にしがみ付いて、
階段を降りて来た。そして、危険な、酔っ払いや、苛めっ子、高速クルーザから
子供達を守って、学校に連れて行くのだ。

ナニーの存在は歩き方ですぐ判る。金属的なリズミカルな音。眼は光電管。それは
ワイヤー仕掛けで動いている。その中ではリレーがカチカチと音を立てる。
そして休む時は、球形に変形する。丸い金属船だ。丸まった、金属ダンゴムシ。

ある夕方。
「ねえ、あなた。相談があるの、夜、私達が寝静まった後に、ナニーが、階下に降りていくの」
「それが、どうしたい?」
「そして、裏庭に出て行った」
「そして?」
「そこまでよ。判っているのは、ナニーは何をしているのかしら」
(管理者 注:すいません、"交通事故"です。出会い頭の、駄ジャレ!ご勘弁を。)


赤外線フィルターは夜でも鮮明な視野を与えてくれた。
家族は二階で寝静まっている。ナニーは裏戸を開け、庭に出た。季節は7月。生命の息吹が
感じられた。ナニーの緑の姿が月に光った。庭を一回りすると、何かの気配がした。

それは、隣の家からだった。青い大きな姿。それは隣家の子供を育てるナニーだった。
腕には新式の工具が着いていた。そのブルーナニーは近づいて来た。戦闘態勢だった。

ブルーナニーの製造元メコ プロダククツ社は、その頑丈さを売り物にしている。
こちらのグリ−ン ナニーはサーヴィス インダストリー製で、中級品であり、
重量面でハンディキャップがあった。二つのナニーは組み合いを始めた。


「いったい、誰がやったんだ?」
ナニーの胴体は凹み、片目は潰れていた。片腕は取れ、使い物にならない。
「ともかく修理しないと」
「こんな事がまた起きたら、子供達は心配するわ。
   それに修理している間、子供達はどうすれば良いの?」


「これは、大変です。ミッションが逝かれてます。残念ですが、費用がかかります」
「こんな、状態になった物を見るのは始めてかね?どうして、こうなったのかな?」
「この辺りの攻撃から見て、メコ社の大型品の仕業ですね。対抗品がありますので、
   修理は諦めて、新品への買い替えを勧めます。修理しても完全には元通りに成りません」
「いや、子供達が気に入っているんだ。これを修理してくれ」
「3年前の物ですし、時間がかかりますよ。二日ですが」
「ああ、構わん」


「わあああ!」
子供達ははしゃいで、公園を走った。
後ろからナニーが追いついてくる。しかし以前の様な機敏さがない。やっと追いついているだけだ。
「ナニーはどうしたの?」
「修理して来たんだけど、調子が悪いんだ。もう古いしね」
子供達は寂しそうだった。

池があった。玩具のヨットで遊ぶ子供達がいた。

「僕もヨットで遊びたいなあ」
走り回る子供達の後を、ナニーはようやく付いて来た。
ガタガタと音がし、ようやく止まった。

「ナニーは泳げるかな?池に入れてみよう」
「ダメよ!おぼれちゃうわ」

自転車で遊ぶ子供がいた。
「僕も自転車で遊びたいなあ」

のろまなナニーは退屈だった。ボビ−は座って、宇宙の謎について考えた。
宇宙の始め、ナニーがいなかった頃の宇宙の事だ。

「ナニーはいつ生まれたんだろう?」
「始めからいたのよ。じゃないと、人間は育たないわ!」
「おいぼれたナニーはどこに行くんだろう?」
「天国に決まっているじゃないの」


「あっつ」
可愛らしい少女が、湖に向かって歩いていた。
子供達は、それを見つめた。

その少女フィリスと、御付きのナニー。
「オレンジ色のナニーなんて、初めて見たわ!」
「でも、僕らのナニーの方が良いさ。なあナニー!」

しかし彼らのナニーは興奮して、歩き去って行った。あのオレンジのナニーの方へ。
オレンジのナニーもグリーン ナニーに向かい近づいていった。

オレンジのナニーは巨大だった。おそらく、この辺りで一番の大きさ。
オレンジのナニー腕が回転した。戦闘体制に入ったのだ。グリーンのナニーは
一撃を与えるチャンスを狙っていた。しかし、先手を打ったのは、オレンジだった。

「やめろ!」
「やめて!」
二つのナニーは地面を転がった。金属棒はグリーン ナニーの体に何度も振り下ろされた。
まだ午後の穏やかな日差しは続いていた。


「あなた!どうするの?」
「許せん!家のナニーが殺されたなんて!」
「バラバラになって、転がっているよ...」

父親トムは、サーヴィス インダストリ−に行った。しかし、そこには彼の気に入る商品は
なかった。しかしアライド ドメスティック社に、彼は、これだと言う商品を見つけた。

「お客様。どちらの商品でしょうか?」
「これだ!大きい方を」
「はい、パワービーム搭載型ですね。わずか15秒で相手の背後に回り込みます。
   高速度の格闘性能や遠隔カメラの搭載も出来ますが」

「しかし、良い値段だね。君達の業界が製品の交換時期を早めるために、
   互いに戦い合わせてるんじゃないかと思えるね」
「その様な事はございませんが、時代は変わります。我々は常にお客様の
   ニーズに合った商品を、提供しているのです」


アンドリュウ家の主人は、娘が顔を青くして帰って来たのに驚いた。
昨日、帰って来た時に、オレンジナニーは傷だらけだった。
しかし今日は、娘一人、ナニーは帰って来ない。

「一体、どうしたんだい?」
「黒い物がナニーを襲ったの。壊されたのよ」
「そうか、じゃあ、パパに任せておけ!じゃあ、店に行って来る。
   やっぱり最新型にする必要があったんだ。最新型にね」


..............

類型作品は「CM地獄(Sales Pitch)」や、「アフターサーヴィス(Service Call)」でしょうか?
古典の「未来のイヴ」やここでも、別頁で取り上げた「愛しのヘレン」的な感覚も皆無ではないと思いますが、
展開は、鉄腕アトム(史上最強の...)やリチャード マシソン(アイアンなんとか)みたいには、ならないようです。

記:2012.07.01


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三分 小説 備忘録

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