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人間狩り (1991)ちくま文庫
人間狩り


爬行動物 Crawlers / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 Imagination(1954.7) 原稿到着1953 短編 第29作

農民がフォード製トラックを止めた。
「いたぞ。降りて見てみろ!」

アーネストは道路の表面を見た。蛇の様な体をしたものが車に引かれ、潰れていた。
体の一方は感覚気管、反対側は原形質の塊。その顔は、うなされる様な顔だった。

奴らは、ここを横切るんだ。時には、こいつの様に交通事故に遭う。町まで辿り着く奴もいる。
「放射能研究所はここから近いのかい?」
「あそこに見えるだろう。あっちのガソリンスタンドには、もっときちんとした
   死体があるぜ。石油の中に浮いているんだ」
「そんなに、たくさん、いたのか?」
「ああ、この地から逃げて行く者は沢山いる。奴らは増えているようだ。
   何とかしないと。もう、100匹はくだらないぜ」
「そんなに!」
「ああ、水爆実験地になったあの島に、かつての住民が戻っているんだ」

アーネストは更に調査を続けた。タクシーを止めた。
「あんたはFBIの人間だね?」
「いや。放射能研究所の者だ」
「あの化け物は、あんた達のせいかい。ヒギンズの農場に奴らは巣を作っちまって、じいさん困ってるぜ」
「巣?」
「巣って言っても、地下の町みたいなもんさ。みせてやるぜ」

アーネストは初めて生きている爬行動物を見た。粘土や草を地下へ運んでいた。
体長は約1m、太陽に灼けた地面をゆっくりと這う。
そして、その顔。しなびた赤ん坊。偽足が伸び縮みして動く。

「安全そうに見えるが?」
「針を持っている、巣作りを邪魔した犬が刺されて死んだ」
「こいつらが産まれる場所を知っているぜ」


彼らは放射能研究所近くの農家に行った。
「私達は爬行動物を調査しています。お宅の畑にもいると思います。彼らを小島に移動させよう
   と思います。しかし、問題があります。それは彼らの親です。我々が彼らを移住させる事を
   許すでしょうか」

家の主、ミセス ヒギンズは部屋の奥へ入った。アーネストも後を追った。
「入って」 ミセス ヒギンズに促されて部屋に入ると、男女がいた。細長いボール箱を抱えていた。

「誰だ。お前は?」
「それを、集めて小島に送るそうよ。渡しなさい」

「お前は、こいつが何を食べるのか、知っているのか?木の葉や葉っぱだ」
「まだ、生まれて1ヶ月なのよ。でも、もう仲間と暮らしたがっている」

アーネストは箱の中を見た。
30cmにも満たなかった。草の巣の中で眠っていた。

「初めて見たのは、道路でだ。それがボブとジュリーの子供だと、後で判った。ボブは
   そいつの、頭を岩で潰し、火で燃やした。そして、家を捨てて出て行った」
「じゃあ、ほとんど殺されたのか?」
「少数だろう。見た人間は沢山いる」
「私達は、あなたに頼むわ」
アーネストは箱を受け取った。

「全部、捕まえておくれ」
アーネストは農家を去った。谷間に向かった。
そこには、奴らの巣がある。奴らが這った痕跡があちこちにあった。


彼は、巣を作っていた。巣が拡がるのは、楽しかった。もう80マイルの奥行きがある。
地下街は、どんどん広がり、やがて、海を隔てた島まで辿り着くだろう。

巣は拡がっている。母親達は子供を産み始めた。
しかし、彼には心配ごとがあった。

最初に生まれて来た子供を見た時の事だ。
最初に産まれてきた子供。その丸い頭、短い胴体、硬直した体。
先祖返りしていた。恐怖に駆られた者が、その赤ん坊のを岩で潰した。

あんな事は、もう起きないで欲しい。


..............

この急展開と、落ちは、想像できましたか?紙幅が尽きたって事なんでしょうか。
物語半分で、連載中止、って言う感じですよね。
さて、ディックの好きな作家ヴァン ヴォウトの特徴に、「怪物視点」と言うものがあります。例えば、「野獣の地下牢」と言う作品があります。
そこには、まるで、「ターミネータ2」の液体ロボットみたいな、ミュータントが出てきます。何にでも変身できて、例えば床なんかにも
変身します。ハーラン エリソンだったら、キャメロン監督を、訴えている所です。

 ただし、そのくらいのシーンは、想像力の範囲内だと思いますが、ヴァンボートの場合、没入具合が凄いので、たぶん、99.9999%没入
するので、そっちの世界にワープしてしまうのです(判らなかったら『非A』読んでね)。
 その結果、当のミュータントが、「今日は調子が悪りいなあ。変身、ちょっとミスったわあ..」なんて呟くのです。ボート恐るべし。

 で、この作品にも、ちょっとだけ、怪物視点が出てきますが、ディックでは珍しい方ですね。

記:2012.06.26


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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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