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ウォーゲーム (1992)ちくま文庫
ウォーゲーム


偉大なる神 Great C / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 Cosmos(1953.9) 原稿到着1951 短編 第9作

毎年、3つの質問を持った者が、一人、グレートCの所へ向かう。
しかし、その旅から帰って来た者は今までいなかった。
そして、メレディスの番が回って来た。

メレディスは族長から、問題を教えて貰った。
貴重な銃も持った。水と食料。
族長は、彼に手袋をくれた。
「これは、我々の最後の手袋だ」
「置いて行きましょうか?」
「いや、お前が戻って来ると信じているよ」

シェルターの出口付近に見送りが集まった。
そこは、とっくの昔に朽ち果てていた。

部族全体で一年間考えた難問を確認した。
「グレートCは、これらを全て答えられるでしょうか?」
「わからん。さあ、行け!」

メレディスは、森の方へ歩いて行った。
『大破滅』の後、森は巨大な昆虫が棲む様になった。
腰のガイガーカウンターはガリガリと音を立てる。
ここは『廃墟』。危険な場所だ。だがグレートCは、ここにいる。彼は銃を握り締めた。

毎年、一人の若者が三つの質問を携え、グレートCに会いに行く。一つでもグレートCに
答えられない質問があれば、グレートCは活動を止める。全て答えられた時は、若者は自らの体を、
グレートCに捧げなくてはならない。今まで、この伝説の儀式から帰って来た者はいない。

壊れた街を通り、神殿へ進む。ネズミやトカゲ、鳥がいる。こいつらは伝染病を運ぶ。注意が必要だ。

半壊した大きな建造物の前にメレディスは立った。
『連邦政府第七研究所。通行許可書を提示』その意味は彼には判らなかった。

建物の中に進んだ。奥へ進むと、部屋の脇にはこう書かれていた。
『コンピュータ部門。関係者以外出入禁止』

メレディスは更に進んだ。
そこには、たくさんの椅子があった。腐食していた。ここなのか?

「お前は誰だ」
落ち着いた声が響いた。
メデディスは凍りついた。
「そこにいるのは誰だ」

カチカチとリレーの音がした。

「僕は、問題を持って来た者です」
「...そうか、もうそんな時期か...問題は難しいか」
「はい、みなで考えました」
「しかし、私に知らないことは無い。大破滅の前は、沢山の科学者が私に質問を尋ねた多くは、
   何日も計算しなければならぬ問題だった。しかし私は答えを出した」

「あなたは、いつ産まれたのですか?」
「それは、三つの質問の一つか?」
「いえ」

「では私が聞こう。お前達の部族は何人だ?」
「数百人います」
「随分大きくなったな。お前には子供はいるか?」
「ええ、8人」
「それは良い。大破滅の前は、もっと多くの人間がいた。生活も豊かだった。大きな町があり、
   森は少なかった。男はお前の様に髭を伸ばしてはいなかった。白服を着た科学者が沢山いた。
   アルバート アインシュタイン...さあ、第一問は何だ?」

「雨です。雨はどこから来るのでしょう?」
「雨の元の大部分は海から来たものだ。海水は蒸発し空中へ登る。その動因は太陽熱だ。
   水は粒子となり、空を上昇し、上空の冷たい空気で凝結し、雲になる。
   充分な量が集まると、水滴となり落ちる。これを雨と呼んでいる」
「それは...正しいのですか?」
「ああ、今のは簡単な質問だった」

「あなたが嘘を言わないと信じています。では、もっと難しい問題です。
   どうして、太陽は空を動いているのに落ちないのでしょう?」
グレートCは笑い声を上げた。
「よく聞け、太陽が動いているのではない。太陽の周りを地球が動いているので、そう見えるだけだ。
   地球だけではない。太陽の周りには、地球を含めて、9つ(!)」の惑星が、回っているのだ」

メレディスはその答えを聞いて、心臓が締め付けられた。
「とても信じられません。我々が動いているなんて!」
メレディスは混乱した。空のこと、太陽のこと、どうして、それが判るのだ。

「で、では、これは貴方にも答えられないはずです。何故なら貴方が産まれる前の話だからです。
   世界は、いつ、どうやって始まったのですか?」
「幾つかの説がある。最も満足すべき説は星雲説である。この説では、段階的収縮が...」
メレディスは、話を聞いていなかった。何故、知っているのだ。見る事ができないものを!

「...その他の説としては、第二の惑星が、この惑星に近づき...」
グレートCは、この質問への答えを楽しんでいる様だった。
かつて、『科学者』達と話したのは、この様な話だったのかもしれない。

「..では私は、お前の質問に全て答えた。前に出なさい」
メレディスはおずおずと前へ進み出た。台の上に登ると、そこには、人骨、服、ヘルメット、缶詰
などが置いてあった。今までにここに来た50人以上の若者の遺品である。
メレディスは更に、金属の梯子を登った。

グレートCの輝く金属の体。しかし、その一部は漏れ出る雨水で腐食していた。

上に辿り着き、メレディスは下を見下ろした。グレートCの内臓に当るそこには、
容器があり液体が渦を巻いていた。

「跳べ!」
メレディスは気が遠くなった。
「跳べ!」

メレディスの体は、容器の液体へと落ちて行った。
グレートCの天井の表面は、再び閉じた。

数時間後、吐き出された物が、遺品の列に並んだ。

三日後、ケントはメレディスが戻らない事を確信した。
「また、やられたか」
「私達はこんな事をいつまで続けなくてはならないの?」
「大破滅が奴の燃料系統を破壊したのだ。そのため、彼も狩りをする必要が出てきた。我々、人間と同じだ」

「どうして、あんなものがいるの?」
「かつて人間が造り上げたものだ。しかし強大になり、『大破滅』をもたらした。いつか奴が
   解けない問題を出してやる。さあ、始めよう。来年まで、もう時間はないぞ」

..............

この作品は、コンピュータに対する恐怖と捉えるべきか、スフィンクスの話のヴァリエーションと捉えるべきか
ですが、ここでは、やはり、まだスフィンクスの方が強いですね。ただ、こう言う所から始まっているので、
ディックの短編作品には、後期の長編の持つ妄想要素(話を長くするために、繰り返し、自己撞着に陥って行く感じ)
がなく、読みやすいです(と、言うか『違和感』がない、その『違和感』が良いと言う人もいますが、私は...)

記:2012.05.30


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三分 小説 備忘録

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