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宇宙の操り人形 (1992)ちくま文庫
宇宙の操り人形


地底からの侵略 Surface Raid / フィリップKディック 訳:仁賀克雄のあらすじ
初出 Fantastic Universe(1955.7) 原稿到着1951 短編 第24作

エドワードは仕事中、思わぬ来客を受けた。それは、彼の息子ハールだった。
「突然どうしたんだ?」

「...この部屋は、盗聴されていませんか」
「当たり前だ!で、何の用だ?」
「地表に出て、『まぬけ』を狩る計画ですよ」

「!...お前、どこで、それを知った?...そうか無線の盗聴だな...」
「ええ、偶然聞いてしまいました。でも誰にも言っていません。何時ですか?部隊の数は?」

「まだ、日程は決まっていない。母船と小型車が30台。70名規模だ」
「素晴らしい!僕も参加させて下さい!」

「ダメだ。地表は、お前ら冒険好きな若者が思うより、はるかに危険なのだ。それに、奴らも充分、こちらの脅威を
   感じている。だから、禁止なのだ...しかし、工場は人手不足だ。だから危険を犯しても行くのだ」
「放射能汚染は、どんな具合なのですか?」
「放射能汚染は、今や問題ない。しかし強力な紫外線は、極めて有毒だ。遮蔽幕はかかせない。あとはブラスターが
   あれば大丈夫だ」
「お父さん、連絡を待っています。ぜひ、一緒に行かせて下さい!」


同僚のターナーはエドワードに言った。
「立派な息子さんじゃないか。連れて行っても良いだろう」
「ああ、そうしようと思っている。ところで研究は進んでいるか?」

「ああ、あの地表の『まぬけ』は、かつては我々と同じ種族だったのだ。彼らのしゃべっているのは古代語だ。
   我々には理解できんがね」
「では、我々は伝説の最終戦争の中で生まれた『テクノス』なのか」
「そうだ。あの戦争の中で生まれた。新たな生命。ネアンデルタール人に対するホモサピエンスだ。我々の祖先は、
   地中で生活する事を選んだ。今ある第三階層までが創られた。そして、様々な発明をし、それを『まぬけ』どもが
   使ったんだ、戦争の道具として」

「『まぬけ』の戦争は激しさを増し、いつか、地表には出られない程になった。我々は第五階層まで潜った。
   そして、我々が、地表に調査隊を送って見ると...そこは放射能に汚染された、死の世界だった」
「しかし...地表で、生き延びた奴もいたのか...」
「ああ、それが『まぬけ』だ。動物のような生活をしている。植物を育て、何とか食っている。
   我らとはもう姿は異なるし、我々に比べ、おそろしく短命だ」


ハールの所に、父親から呼び出しが来た!
彼は、遮蔽幕にサングラスを持ち、意気揚々と出かけた。

母船が彼を待っていた。乗り込むと母船は昇降台を上へ向かった。
「どこに着くんですか?」
「古代、アルプスと呼ばれた場所だ。ヨーロッパの一部だ。我々が、彼らに与えた道具で、復興も微力ながら
   進んでいる。水爆に破壊され、溶けた大地。100年以上前だ。我々は彼らに道具を与え続けている。そして大地は
   徐々に復興しているのだが...先は長い。


彼らは地上に着いた。見渡す鉱滓の海。遠くに森がある。

「太陽を直視するなよ」
彼らは、遮蔽幕を回りに張り、調査を始めた。

同行の者達の姿は見えないが、地面に新しい足跡が作られていくのがわかる。
彼らは『まぬけ』達の村落へと近づいた。

草で作った小屋。動物の匂い。水浴びをしている者達。その肌は赤銅色。獣だ。

ハールはその姿を見つめる。気がつくと、本隊とは随分離れてしまったが、彼は村の様子を調べた。おしゃべりを
する女。狩られた動物。血。鏃を研ぐ男。遊ぶ子供。老人が輪になり話をしている。中年の男女は畑を耕していた。

老婆が若い娘の髪をくしけずっている。腕には刺青。掲げられた布には、不思議な紋様が描かれていた。

同じ布を彩色している女がいた。その真剣な様子にハールは近づいた。見えない彼に、女は気がつかなかった。
この紋様の意味を聞いてみたかった。

ハールは女の前で、遮蔽幕を落とした。


女は悲鳴を上げた。ハールは慌てて遮蔽幕を戻し、逃げ出した。
村落から逃げ出すと、父親達がいた。

「何をしとるんだ!奴らが怒っているぞ。調査は中止だ。馬鹿な事をしやがって!」


ジュリーは、老婆から体に油を塗って貰った。しかし、鼓動はまだ止まらなかった。あの恐ろしい生き物。人間の様にも
見えたが、青白く金属の輝きを持っていた。手足は、病気の様な細く不気味だった。

そして、あの目!

目には輝きがなく、ただ黒い底なし穴だった。

長老が言った。
「お前が見たのは、伝説のゴブリンだ。人から生まれ、しかし人を避け、地下で暮らす。暖かい太陽を嫌い、冷たい金属
を好む。しかしもう安全だ。もう忘れろ。我々には、やるべき事がたくさんあるのだから」


..............

ディックとしては、ストレートですね。初期の作品(第24作)と言う事もあるのでしょうが、本当の初期作品に比べると。
逆に『よくある』感じになっています。職業作家として、こなれてきたのでしょうか。

話のついで、ですので、ディックの短編を、私の考える年代ごとの特徴で並べると、
-1951前[プレ]=妄想系異質 『ルーグ』や『安定社会』『ウーブ(ワブ)』  (... すいません。いちいちリンクは貼りません)
1952-53[初期]=落ち系名作 『干渉者』『報酬』『変種第2号』
1953-54[中期]=妄想落ち名作『にせもの』『父さんに似たもの』『非O』
1955-81[後期]=妄想破綻作 『フヌールとの戦い』『電気蟻』『父祖の信仰』
となると、私は思うのですが(我ながら、この年代の区切りは、凄いですが。でもファンとしての実感です)

で、どの時代が好きか。と言う事ですが、...ま、そら、全部です。あ、意外に平凡...しかし平凡に真実あり!!

記:2012.05.02


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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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