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マイノリティ レポート (1999)早川文庫
マイノリティ レポート


火星潜入 The Crystal Cryp / フィリップKディック 訳:浅倉久志のあらすじ
初出 Planet Stories(1954.1) 原稿到着1954 短編 第70作

「通告!惑星間旅客船は、ただちにデイモスに着陸せよ!」
管制官のアナウンスが船内に響き、乗客達は驚いた。
デイモスと言えば、火星への検問所にあたる小惑星だ。
「乗客の皆様。緊急着陸致します」

「いったい、どうしたんだ!やっと火星人の奴らと縁が切れた、と思ったら臨検だなんて!」

「しかし、奴らも本当に戦争を始める気なんでしょうか?」
「彼らの軍事力で、それはないな。しかし、逃げ出すチャンスは、これが最後かもしれん」

着陸した船に、銃を構えた火星の兵士が、入って来た。
「すぐに済む。我々は君たちの大部分には興味はない。興味があるのは、3人の破壊工作員だ。
   男性2名と女性1名。さきほど、火星の都市が、ひとつ丸ごと吹き飛ばされた。全住民、建築物
   その他が、一瞬にして消え去ったのだ。この中にその首謀者がいる。我々は逃がさん!」

「この中に破壊工作員なんか、いないよ!」
大柄なビジネスマンが叫んだ。
「よし、お前からだ。このボックスの前で答えろ!お前は都市の破壊に関係したか?」
一人の兵士が金属ボックスをビジネスマンの前に置いた。
「さあ、答えろ!」

「...わ、わたしは...都市の破壊には関係していない...」
『彼は真実を話しています』
「よし、次!」


残りは5人になった。
「お前は都市の破壊に関係しているか?」


「よし、では、お前らは旅を続けて良い。しかし、我々は必ず犯人を捕まえる!」


連絡船は、高速軌道に乗った。
「酷い目に会ったな」
一人、また一人と船内バーに客が集まり始めた。
ボブもバーに向かった。彼はその途中、魅惑的な女性マーラに声をかけた。彼女もバーに行く途中だった。
「やあ!」
そこにはマーラを待っていた男。あのビジネスマンのエリクソンがいた。その後、もう一人ジャンもやって来た。

「みなさん、お知り合いですか?」
「ええ...」
「エリクソンさん、お仕事は何ですか?」
「セールスマンですよ」
「では、お持ちのカバンの中身はサンプルですか?」
「ええ、お見せしましょうか?」
「まって!まだ火星をそれほど離れてはいないわ!」
「いや、充分離れたさ。それに彼は地球人だ。我々は団結すべきだと思う」

エリクソンはカバンを開けた。
中には"ガラスの紙押さえ"(管理者:こ、ここに!)、ホチキス、クリップ...
「事務用品ですか...たしかに火星に必要だが。でも、これらを、わざわざ火星まで売り込みに
   来るとは...それに、こう言っちゃ何ですが、あの兵士の言葉が忘れられないんですよ。
   工作員は男2人、女1人...」
「この旅は長い。もう、彼にも話して良いんじゃないか?」
「そうね。彼なら」
「ボブ、我々は工作員なんだ。実は...」


エリクソン達は空中艇を降りた。
そして死木の森を抜け、砂漠を渡った。この先に目指す都市がある。
砂漠を渦巻く熱風。三人は近づく。

この都市をこんなにも近くに見るのは初めてだ。地球人が、どんなに火星に住もうとも、
この都市にだけは、近づく事が許されない、火星人にとっての、最も重要な都市だ。

巨大な都市であった。そして空にそそり立つ古代金属の柱列。赤い石が積み上げられた城壁。
中には火星を統べる宗主達、と火星にとって重要な人々が住んでいる。その頂点には12人の長老。
ロケット、宇宙砲、嘘発見器...人類の知らない技術を持っている。
彼らは、結婚する若者を装った。花嫁衣裳のマーラ。その若き夫ジャン。そして牧師のエリクソン。

火星人の農夫達の引く荷車の列に彼らは紛れた。彼方に軍用艇が見えた。
「あれを見ろ」
「戦争はもう始まるかもしれない」
「ああ、今日が最後のチャンスだ」

「お前達は何だ?」
城門で、彼らは尋問を受けた。
「この二人を、判事様の前で結婚させるのです。それが村のきまりです」
エリクソンはコインを門番に差し出した。
「よし、通っていいぞ!」

「よし、設置地図を思い出せ。この都市の中央地区を3等分させるんだ。
   尋問を受けたら、この火星通貨を使え、時間は稼げる。では、日暮れに、ここに集合だ」

日暮れに三人は集まった。
「俺のは都市の外れ井戸の傍に埋めた」
「わたしのは工場地帯の真ん中」
「よし、それなら、この都市はちょうど三等分されるはずだ!」

彼らは城を出る人の群れに並んだ。森まで戻るのはすぐだった。

「いよいよ、あの都市も見納めだ」
「うまく行けば、いつでも好きなだけ見られるだろうに」
「しかし、こんな風に見れるのは、これが最後だ...じゃあ始めよう」

エリクソンはアタッシュケースを開けた。中には沢山の配線と、中央にピラミッド。

「都市に、ピラミッドを向けろ。よし、始めるぞ。みんな伏せろ!」

閃光が空まで赤く染めた。枯れ枝は炎に焦げた。そして、風が止むと、都市は消えていた。

ピラミッドは溶けていた。エリクソンはそれを摘み上げ、そのどろどろの中から
球体を取り出した。きらめく球の中には、何かが輝いていた。

「さあ、行くぞ。すぐに追ってがやって来る!」
彼らは道を歩いた。すでに道は暗くなっていた。
前方に人影が見えた。突然、明りを向けられ、目がくらんだ。

彼らは取り囲まれた。銃を持った兵士達。そして、総監が進み出て、彼らに聞いた。
「お前達は何ものだ?」
「私らは、結婚式の帰りでして...」
「都市がなくなったのを知っているか?我々はその犯人を捜している。
   もう都市はない。残っているのは、お前らの片手に乗るくらいのものだ」

「総監!宗主様が見えました」
「この三人は何者だ?」
「村の者で、結婚式の帰りだそうです」
「いや、違うな。立ち姿が、村の者ではない。あごを見ろ、
   こいつは髭を刃物で剃っている。石剃刀ではない!」

宗主は三人に火筒を向けた。
「こやつ等を捕まえろ!」
エリクソンは、宗主の火筒を叩き落した。
「逃げろ!」

暗闇の中、三人はバラバラになった。
空中艇に先に着いたエリクソンは二人を待った。
暗闇で音がした。
(誰だ?)
ジャンとマーラだった。

空中艇に三人は乗り込み、宇宙港へ飛んだ。


ボブはエリクソンの話に聞き入っていた。
「そうか、あんた方は、都市を破壊した訳じゃない。小さくして、球に閉じ込めたんだ。だから...」
「ああ、だから『都市の破壊に関係しているか』と聞かれても、答えはNOだ。嘘じゃない」
「しかし、何故破壊しなかったんです。その方が簡単でしょう?」
「いや、火星最大の都市を人質に取った方が、交渉は有利になる」

「その球を見せて下さい」
「これですよ」
その球の中は、きらきらと輝いていた。

「ところで、ボブさん、貴方のお仕事は?」
「これですよ」
ボブは手に火筒を出した。それには見覚えがあった。あの宗主の持っていたものと同じだ」

バーのカウンターの人間が一斉にこちらを、向いた。
「都市が破壊されたのではない事は、何と無く判っていた。しかし、どうやったのかは判らなかった。
   君達の、その技術は、今後、色んな交渉に使えそうだ。さて火星の港に戻ろう。
   あ、それから、サンプルは私が預かっておくよ」


..............

"杜子春"落ちと言う事ですね。話が話だけに"都市春"落ち、なんつって。
お後がよろしいようで。


いや、いや、まだあります。
しかし、杜子春ではないですね。エリクソン達は、火星を一歩も出ていなかった、と言う"杜子春"落ちの方が、
絶対に面白いとは思いますが、ここは何か中途半端。エリクソンがボブにタックルして、球は床に叩き付けられる!
なんて、それじゃ『世界は我が手の中』になっちゃいますか?

それに火星年代記のイメージが織り込まれている事にも気づきますね。失われつつある民族の操る夢の件ですね。
今では薄くなってしまった"火星=インディアン"(いまなら、アボリジニ?)的なイメージは、本当に自然だったんですね。
恐るべし、ブラッドベリ!。


記:2012.02.14


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