3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

マイノリティ レポート (1999)早川文庫
マイノリティ レポート


世界をわが手に The Trouble With Bubbles / フィリップKディック 訳:大森望のあらすじ
初出 If(1953.9) 原稿到着1953 短編 第64作

ネイサンとジュリアは高速を飛ばしていた。
『太平洋横断トンネル』の道路サインが見える。アジアと陸続きになる、大トンネルが完成したのだ。

彼等はコンテスト会場に着いた。
「世界をわが手に」、一年で一番、最高の日だ。今年の優勝は誰だ?

演題では中年女性のローラが出品作を抱えて説明していた。
ローラは彼女の作った"バブル"を顕微鏡で拡大した画を皆に見せた。

たしかに傑作だ。
一つの恒星系。さらに倍率を上げる。
中心惑星には海があり、陸地には都市がある。極微小な世界。黄金と鋼鉄の都市には住人が。
無数の人間が忙しく動き回っている。

ローラは"バブル"を胸に抱えている。

「すごい"バブル"だ。あの"老魔女"は、あれを作り上げるのに60年もかけた。優勝も不思議じゃないぞ」

壇上には、他の候補者達が何人も登壇する。誰も胸に"バブル"を抱えている。
ローラの様子がおかしい。口を開け、はあはあと息をし出した。時々腕は痙攣した様にびくっと揺れ、顔の表情も歪む。

「あ、あぶないわ。出ましょう!」
しかし、遅かった。興奮したローラは大事な"バブル"を床に叩き付けた。球は金属とガラス、歯車にシャフトと砕け散る。

他のコンテスト参加者にも、それは伝播した。会場の至る所で、自分の"バブル"を叩き付ける者が現われた。
辺りは、大混乱になった。

丹精込めて、長年育てた"バブル"を。

ネイサンとジュリアは会場から逃げ出した。
友人のバートも、"バブル"を抱えて、逃げ出して来た。
「まだ、無くしたくない!」


朝、ネイサンは家で友人バートと食事をしていた。
「君の"バブル"は素晴らしいね。僕なんかジュラ期より先に進化した事はない。もう16個も育てているのに...」
「しかし、昨日のコンテストを見る限り、俺が優勝する事はない。ジュラ期は出場の条件だが、彼等は、都市文明まで
   行っている。それにローラが、ドンタツって訳でもない。他の競争者とは僅差だ」
「しかし60年も!」

「ああ、あれが彼等の人生、そのものなのさ」
「でも、それは壊してしまうなんて!」

「ああ、太陽系の調査が進み、どれも、生物の痕跡などないと判った。人類はひとりぼっちだったと判った。それから、
   太陽系外へ。しかし、見つかるものは、砂漠と岩ばかり。人間はいよいよ一人ぼっちになった。そこに現われたのが
   世界球="バブル"だ。無いなら、造れば良いと」
「『世界を造る』たしかに、どんな芸術にも勝る、創造的な行為だ」
「しかし、それがおかしくなった」

「やがて皆、子供が虫の羽をむしる様に...破壊する」
「創造エネルギーは閉じられた空間で腐って行く。それは長く潜伏しているが、やがて臨界点に達し...やはり、
   この"おもちゃ"は危険だ。禁止すべきだ」


彼らの友人の議員ハルから、世界球を非合法とする議案が出された。

「世界球の中の生物は想像のものではありません。微少ではあるが、現実の存在です。それを我々が弄ぶ事は
   許されません。我々が少し乱雑に扱っただけで、彼らの世界は、大きな天災に晒されます。この様な事は人として...」

しかし、議論は起きず、議決は否定された。
今や、全世界に販売網を持つ、製造メーカのワールドクラフト社には誰も反対しないのだ。

ハルは敗北に打ちひしがれていると、ニュースが飛び込んで来た。
星系探査団が、アークトゥルス人とコンタクト出来、そこには、我々も棲める惑星があると言うのだ。

ハルはネイサン達と高速道路を走っていた。
「よし、これで、世界球に対する興味も失われるぞ!」
「時間の問題だ。これで良い!」

その時、道路は封鎖された。
「どうしてんですか?」
「この先、通行止めです。太平洋横断トンネルの中間で、大地震が起きました。今までに有り得ない程大きな地震です。
   10箇所で崩落しています」
「トンネルの中は、車で一杯でしょ?」
「なんて事だ!まるで神のいたずら...」
「え?何って言ったの?」
「いや、なんでもない。なんでもないんだ」

..............

これは、もちろん『フェッセンデンの宇宙』ですよね。間違いないし。落ちもそれほど、変化なし。
いや実を言うと、私は、「ああ、これがハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』なのだな」と思って読むより、先にこっちを読んで
しまったのです。そう言う人間が、『フェッセンデンの宇宙』を読むと、教授はボールを何時壊すんだろう?ばかりが、気になるのです。

記:2012.02.16


  3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




・ホーム
・ディック1トップ
・インフォメーション
・掲示板
・お問い合わせ