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パーキーパットの日々 (1991)早川文庫
パーキーパットの日々


植民地 Colony / フィリップKディック 訳:大瀧啓裕のあらすじ
初出 Galaxy(1953.6) 原稿到着1951 短編 第5作

ローレンス少佐は顕微鏡を机の上に出した。
「本当に、この星には、有害な生命体はいないな」
「ええ、温暖で自然が豊か。しかし、人を脅かすような動物は、猛獣から病原菌に至るまでゼロです」
「ああ酒場や売春街までないなんて、奇跡だね」

「ここは、きっとエデンの園なんですよ。我々はここで産まれた。しかし、追放された。でも、この星もやがては
   行楽者で溢れる。彼らのために、自然が壊される。彼らは、この自然を楽しんで、替わりに木を折り、ツバを吐き、
   ゴミを撒き散らして、環境をダメにする...」
「そんな、自然を探すのが俺達の役目さ。そして、安全、これが一番大事だ。
   さあ、今日は大気に有害な毒素がないか調査だ」

振り返ったローレンスは、机の上の顕微鏡を覗いた。サンプルに付着した細菌状の生物を調べるのだ。

しかし突然、顕微鏡の鏡筒が伸びて、ローレンスの首を絞めた。息が出来ないローレンスは転がり、顕微鏡を
引き離そうとした。しかし顕微鏡は、ローレンスの喉に食い込み、離れない!
やっとの事で、振り切ったローレンスは顕微鏡を投げつけ、それに分解銃を撃った。
顕微鏡は原子の塊になり消えた。

「どうしたんですか?いったい?」
「け、顕微鏡が...」


司令室のドアが激しくノックされた。中から不愉快なステラ船長が出てきた。
「ローレンス。会議中だ」
「いや、大変な事が起きました。研究室に来て下さい。顕微鏡が...」

「この顕微鏡が、どうしたのかね?」
「???」
分解したはずの顕微鏡はそこにあった。
「私には、これはただの顕微鏡に見えるが、君の話では"殺人顕微鏡"な訳だね。おい、これを調査しろ。
   気をつけろ。とても凶悪な奴だから!しかし、破壊した顕微鏡が無傷であるとは、何とも奇妙な話だねえ?」
「い、いや。ただ、顕微鏡が...」
「ローレンス君。少し休んだ方が良い。すっきりするぞ」


ローレンスはシャワーを浴びに行った。俺は幻覚を見たのか?あんなにはっきりとした幻覚。俺はどうしたんだ。

頭を拭こうとタオルに手を伸ばした。タオルを引いたが、引かれたのはタオルではなく、ローレンスの方だった。

ローレンスは、壁にしたたかに頭を打った。
立ち上がり、そこにかけられた2本のタオルには手を触れずに、制服を着た。ズボンを履き、
上着に腕を通した所で、腰のベルトがローレンスを締め上げた。
ローレンスは転げまわった。そして腰の破壊銃に手をかけると、ベルトを消滅させた。

そして、疲れ果て、椅子に座った。しかし、その椅子の肘掛が彼を襲った。6発打って、ようやく椅子は消滅した。

こ、こんな事はありえない...


向こうから船長が小走りに近づいて来た。
「せ、船長...私は...私は...」
「何だ。ローレンス?今は、忙しいんだ。君の話を聞いている暇はない」
「でも、聞いて下さい!」
「後にしてくれ。大変なんだ。カーペットがテイラー大尉に襲い掛かった!」

テーラー大尉は脚を、カーペットに入れてもがいていた。必死に暴れる大尉に同僚は、何をふざけているんだ?
と笑った。しかし、そのカーペットから出た大尉の脚が溶けているの見た時は笑っていられなかった。

「このタオルが、私に襲い掛かったタオルだ。昨日まで安全だった」
「このカーペットだって、家内のプレゼントだ。何も問題なかった」
「しかし、タオルは私を襲い、縛り上げた。私は破壊銃でタオルを分解した」
「私だって、強力な酸で俺の脚を溶かしたこのカーペットを、破壊銃で消滅させた。」
「じゃあ、これらは、一体、何だ?何故、無傷で、まだ、ここにあるんだ?」


「調べたけど、これらの品の、構成物質は何も変わっていないわ。貴方達を襲ったものは、たぶん"別"のものよ」


ドッズ中尉は、手袋を探し、ドレッサーに手を伸ばした。そして驚いた。同じ手袋が二組あるのだ。
そこでアナウンスが鳴った。
「全員に告ぐ。緊急事態だ。すぐに集合!」

(わかったよ。どうせこの手袋は夕べ、酒を飲みに来たボブが忘れて行ったんだ)
ドッズ中尉は手袋をした。彼は手に引っ張られた。そして、腰の分解銃を掴むと、銃口を頭に向けた。
「どう言う訳だ!」
ドッズ中尉の頭は消えた。

既に十名の命が失われていた。
「とんでもない惑星ですね!このままでは、我々百人は、あと数日で全滅する!」
「たいした事じゃないさ。宇宙の各地では毎日の様に、数百人単位で兵士が減る惑星が沢山ある。ましな方さ」

「でも、彼らは、完全に擬態する。この星を支配している生物は無機物に擬態する生物。だから、この星には
   動物がいない様に見えたんだ」
「しかし、思うところ、奴らは単純な単細胞生物だ。砒化水素には弱いに違いない。この研究室は、すべての
   調査物の点検場所だ。ここに奴らの痕跡があるはずだ。この部屋に砒化水素をまいてみよう」

モリソン司令官達は、ヘルメットを被った。そして部屋を閉め切り、砒化水素がまかれた。

始めに形を変えたのは、実験材料を入れたキャビネットだった。それから、ブンゼン バーナー、レトルト管、薬品棚、
ピペット、乳鉢...様々な物が、変形し、ドロドロに溶けた。

「撃つな!砒化水素は可燃性だ!」


「どうしましょう?砒化水素は大量にはありませんし、銃も使えない」
「ともかく、こんな物騒な奴らが、地球に入ったら大変だ。当面、撤退するしかあるまい」
「しかし撤退と言っても、奴ら何に化けて、我々に付いてくるか判らない」
「ともかく、救助信号を出そう」

「船長。やはり、これしかありません。全ての物を置いて行くんです。宇宙船も研究資材も、我々の服すらもです。
   奴らは人間には擬態できない。だから、男も女も身一つで救助艇に乗り込む。これは徹底しないと...」
「しかたあるまい。みんなにそう伝えろ!あと15分で救助艇が来るぞ」

「船長!急いで下さい!もう救助艇は着陸しています」
「そうか。慌てていたし、着陸音も静かだったので、全然気が付かなかったな。おい、順に救助艇に乗り込め!」

乗組員は男女共、裸で、服も武器も何も持たず、順に救助艇に乗り込んだ。最後に船長が乗り、ドアは閉まった。


15分後。予定時刻ちょうどに、救助艇は着陸した。
デイヴィス艦長は、部下に尋ねた。
「彼らは、どこだね?本当にこの着陸点で間違いないのかね?」
「ええ。しかし???悪い冗談でなければ、良いんですが...」


..............

初期作品ですが、古典と言えるホラーになっているのですが、ユーモアも入っていますね。私には、途中の件や
最後の全裸シーンなど、お笑い要素が多いと思うのですが、かなりの恐怖話として読む人もいる様です。

記:2012.02.04


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三分 小説 備忘録

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