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地図にない町 ディック幻想短編集(1976)-早川文庫
地図にない町


おもちゃの戦争 The Little Movement / フィリップKディック 訳:仁賀克雄 のあらすじ
初出 Fantasy and Science Fiction(1952.11) 原稿到着1952 短編 第13作

男は、汗びっしょりで、道路脇に座っていた。両手で、箱を抱えていた。
箱のふたが浮き、中から頭が出た。

ブーンと言う金属音。現れたのはブリキの兵隊。もう一つも首を出す。
「おい、俺が先だ!」

男は、震えながら、人形の兵隊を取り、ネジを巻いた。硬く。
そして、声を上げた。

「あなたのお子さんへ、お土産はどうですか?」
「待て!あれはダメだ」

男は、口ごもっり、そっぽを向いた。近寄ってきた買物客は、不思議な顔をして、去って行った。

「おい!あいつらだ。あれを呼べ」
男は、その親子連れに直接、声をかけた。

寄ってきたのは父子連れ、子供はすぐに人形を気に入り、男は50セントで売った。
人形は、この子の家に入り込んだのだ。


人形は考えていた。工場で習った通りの方法でうまく、操れそうな子供の家に潜り込めた。
大人は要注意だ。奴らは、我々の目的を見抜く。しかし子供なら、我々の言う事を聞かせる
事ができる。

僕達だけの秘密だ!と言えば、それを守る。うまく利用すれば、大きな効果を得る。

「ねえ、ねえ。君に仲間を紹介するよ。ウサちゃんと、クマくん。ブーちゃんも仲間さ」
「君の名前は何って言うの?無ければ付けてあげるよ。みんな仲間だ!じゃあ、
   君の動きを、みんなに見せてよ」

少年は、人形のネジを巻いた。

人形は床を歩きながら、積み木を集め積み上げた。
それから、その山の上に登った。

少年は、その見事な動きに釘付けだった。
それから、少年に言った。
「俺が怖いか?ふふふ、別に怖くは無い。俺とお前は仲間だ。約束ができるか?」

少年はうなづいた。
「なら、俺がしゃべれる事は、大人に言うな。そうすれば、お前に役に立つ事を色々と
   教えてやる。その代わり...」

「その代わりに?」
「俺の事を、『ご主人様』と呼べ。いいな!」
少年はうなづいた。

「ではまず、俺のネジを巻け!」
少年は人形のネジを巻いた。


人形は工場と連絡を取っていた。
「他の奴らの状況はどうだ?」
「良くない。うまく、潜り込めたのは一握りだ。大人の攻略に行ったものは、全て
   破壊された。大人はネジが切れるまで、待ち続けるからだ。犬も全てバラバラにされた」

確かに、大人を攻略するのは難しい。良い例は人形売りだ。奴らは、常に逃げ出そうとする。
隙を見て、ネジをゆるく巻こうとする。

工場は言った。
「第二段階に移行しろ」
「しかし、まだ準備は完全ではない。特に、ここの大人達を先に始末しない事には」

「時間はない。正直に言おう。現在、無事なのは、君を含め三人だ」
「三人?どうして、それほど計画とのズレが?」

「人間を甘く見すぎていたのかも知れない。しかし、逆転を狙うには、第ニ段階の
   成功しかない。移行しろ!」


人形は少年に言った。
「明日、学校が終わったら、トイランドに行ってもらいたい。そこで言うんだ。
『包みを取ってくる様に言われました』と」

「おもちゃ屋さん?僕、お金を持っていないよ」
「お金はいらない。受け取るのはおもちゃだ。機関銃や戦車の部品だ」

「わかったよ」
「忘れないでくれよ。これは大事な事なんだ」
「ああ、わかったよ」

これで、うまく行く。もう一つの別のおもちゃ工場を、支配下に置くのだ。
次の工場では、もう少し大きな兵隊を作る。我々の体は小さすぎる。

「ご主人さま!怪しい動きがあります。こちらへ来て下さい」
クマくんが言った。
「どうした?」
「上です!上、こちらに来て下さい」
人形が上に行くと、ウサギもブタもいた。

「どうした、お前達?」
三匹は既に攻撃の態勢を取っていた。

「???お、お前ら、そうか、他の人形に起きたのもこれだったのか!」

ウサギの足に蹴られ、人形は落ちていった。


バラバラの欠片を、三匹は隠した。
「銃と戦車が来るらしいが、大丈夫かな?」
「隣の家への救援で、初めて人形をやっつけた時の事を思い出せよ」

「そうだ隣の家のパンダは役に立った」
「奴を呼ぼうぜ」


..............


つまり、何が言いたいかと言うと、ネジを巻いて動く奴は、怖くない、と言う事ですね。


記:2011.09.17


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三分 小説 備忘録

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