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顔のない博物館-北宋社
顔のない博物館


消耗品 Expendable (1953) / フィリップKディック 訳:仁賀克雄 のあらすじ
初出 Fantasy and Science Fiction(1953.7) 原稿到着1953 短編 第31作

男は玄関を出る。辺りを確かめる。いない。
足早に走る。

石段の郵便受けに、二匹の蛾がいた。
「来たぞ!報告だ」
一羽の蛾がはばたいた。

「聞こえたぞ!」
男は、その蛾を叩き潰し、もう一匹も踏み潰した。

増えている!
周囲に気を配る。他には?

木には鳥がいた。
あれは、安全だ。中立者。

途中で、蜘蛛の巣に頭をひっかけた。
蜘蛛!

蜘蛛については、はまだわからない。
敵か?

彼はバスに乗った。乗客達は何も気づいていない。この戦いに...


ティルマスは言った。触覚を振りながら。
「もう計画段階は終わった。実行に移す時期だ」
「しかし、あの巨人は無力だ。他の中間達と連絡を取り合っている形跡はない」

仲間達はティルマスには、反対のようだった。

ゴッドが、隣の者に触覚を触れさせた。自分の意思を伝えるために。
「なぜ、彼は我々の計画の邪魔をするのか?計画に気づいているのか?」

ともかく、彼が、無力で哀れな存在なのは明白だった。

夜、家に帰ると、門の所に蜘蛛の巣がかかっていた。
男は手で、巣を払った。

その時、男に、声が聞こえた。
「注意しろ...家の中だ...待ち伏せている」

振り返ると、塀の上で、蜘蛛が男を見ていた。

(蜘蛛の巣?あれが強くなったら、俺は巻かれてしまうのか?
   しかし、家の中で、待ち伏せとは、どう言う事だ?)

部屋に入り、電気を照ける。
何かが変だった。

灰色の絨毯、白い壁、茶色の家具。??灰色の絨毯??

絨毯は盛り上がり、男に迫って来た。
アリの絨毯が、洪水のように彼に突進しているのだ。

男はポーチへ飛び出す。そして、ホースを掴み、そのアリの群れへ向かって放水した。

(ちくしょう!ちくしょう!こんな事は始めてだ!家の中で待ち伏せするなんて。それも大群が!)

アリは、散り散りに去った。
これは、今までの、蛾のスパイ行動とは違う。俺を、俺を殺そうとする、計画の元の行動だ。

男は、蜘蛛に感謝した。
あのまま、うっかり寝ていたら...

気が付くと、足元を甲虫が歩いていた。
スパイめ!きさまもか!

男は、甲虫を踏み潰した。

男は机に座っている。
手には殺虫剤。

この事を、この陰謀を、書きとめようとしていた。

そこに蜘蛛が来た。
蜘蛛は、男に語りかけた。

「俺は、"噛付き屋"。お前に警告したのは"糸紡ぎ"だ。俺達もアリの敵さ」
「ありがとう、君たちの仲間は素晴らしいね。特に"女郎蜘蛛"なんて」

「たしかに、彼女はリーダーだ。だが、もっと強い奴がいる。それはゴッド。アリの指導者」

「お前達の戦いはどうなっているんだ?」

「知らないのか?十億年前に地球はアリが支配していた。しかし、人類がよその星からやって来た」
「人類は、地球にとってインベーダーだったのか?」

「果てない戦争が起き、我々は野蛮な状態まで後退した。奴らも閉鎖的な組織に逃げ込んだ」
「そして、俺達、蜘蛛は人間に飼育されたのだ。奴らを押さえるために」

「巨人よ。共に戦おう。奴らの計画は強力だ。鳥やカエルを仲間にしても良い。
   そうすれば、あなた方を助ける事ができるだろう。気をつけろ。そろそろ奴らが来るぞ」

床下から、かすかに物音が拡がって来ていた。

「そうか。俺を助けてくれるんだな」
「俺?いや、そう言う意味じゃない。個人ではなく、種族として助けると言う事だ」

蜘蛛達は、攻撃の場所に移動した。窓の外では、蛾が集まっている。

床は、ぐらぐらと持ち上がって揺れ出した。


..............



冒頭の、虫を一生懸命、叩き潰している姿が、すごいです

個人と種族と言う感覚のズレをうまく処理して、気がきいた落ちになっています。
それでタイトルの消耗品と言う訳ですね。


記:2011.07.04

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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