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模造記憶-新潮文庫
模造記憶


欠陥ビーバー Cadbury, the Beaver Who Lacked (1987) / フィリップKディック 訳:浅倉久志 のあらすじ
初出 The Collection Stories of PKD Vol.5(1987) 原稿到着1971 短編 第113作

キャドベリーと言うビーバーは、藪や樹木を、自分の歯と脚で齧り、築いてダムを作り、
その引き換えに、ポーカーチップ得ていた。一番価値のある青チップは、まだ3枚しかないけれど。

彼の女房はガミガミ屋で、金遣いも酷い。彼の頭痛の種だ。

そして、お馴染みの精神科医に通う。
こいつらは、人の話を聞くだけで、あの青チップをたんまり稼ぐのだ。

その彼の所に、手紙が来た。郵便鳥は、
「その手紙は、中を透かしてみたんだけど、女の筆跡だね!」

こっそり、キャドベリーが、封を開けると、中には、
「親愛なる、キャドベリー様、あなたを愛しています。ジェーン ファウンドリー」

キャドベリーは、ジェーンという名前には覚えはなかったが、
そこにある返信アドレスに、返事を返すことにする。

「親愛なるジェーン。私は、今、愛情を感じられない妻との同居生活に、疲れています。
   現在、精神科医に通っていますが、改善はみられません、よかったら、私と一度、お話しませんか」
しかし、こんな手紙を書いたら、あの詮索好きの妻に、嗅ぎつけられて、しまうかも知れない。
注意しないと!

 そこに、妻がやってきた。
「珍しいわね。タイプライターなんて。誰に手紙を出すの?」

「図書館さ、返したはずの本が、まだ返していないと手紙が来たんだ」
「ふ〜ん。このジェーンって人は、何なのさ。女だね?」
「し、司書だよ。この件の担当なのさ」

「へん。そんな嘘お見通しだよ。あんたは、ラブレターに返事を書こうとしてるのさ。
   何でわかるかって?だって、その手紙を書いたのは私だもん。私がジェーンなんだよ。
   そんな無駄なタイプライターは、捨てちまえ!」

 キャドベリーはがっかりした。この妻から逃れる方法はないのだ。

 しかし、妻が作ったジェーン。もし、彼女が本当に実在したら、どんなに素敵だろう!

 彼は、
「私はキャドベリーというビーバーです。神学だけはちょっと詳しいです。神や実在について
   一緒に語り合える方は、いらっしゃいませんか?」
 そして、それを瓶に詰め、河へ流した。

 数日後、河下からゆっくりゆっくりと瓶が登って来た。

中には
「親愛なるキャドベリー様。貴方は、とっても素敵な人のようです。ぜひ
   お会いしたいと思います。キャロル」

彼は喜んだ。しかし、これがまた、妻の自演ではない、と言う証拠はないだろうか。
「親愛なるキャロル。貴方を愛しています。しかし貴方は、本当に実在するのでしょうか。
   その証拠となるものを、送って頂けないでしょうか?」

また数日経つと、手紙が来た。
開けると、中には、青チップが入っていた。3枚も!

キャロルは、愛する彼女は実在する!
キャドベリーは瓶に長い紐をくくり付け、河に流した。やがて、その瓶を拾った気配がした。
彼は紐をたぐり、キャロルを探しに出かけた。

そして出会ったキャロルは素敵な人だった。
彼女の部屋に行く。
「あのチップは返してね。会社から、ちょっと拝借して来たんだから」

彼女は同じ精神科医の患者仲間だとも判った。

彼女に"禅"の事を説明したが、彼女は
「そんな、退屈な話を、何時までしてるの?」
と取り付くしまもない。

それに、あれやこれやと、即物的な要求を、キャドベリーに押し付けて来た。

結局、女というものは、遠くから見ていては判らないが、近くに寄れば、
青チップを求めて、こちらの、精神をすり減らすものなのだ。

そして、こちらは擦り切れて、消え去り、最後に残るのは、あっちなのだ。




..............


ああ、なるほど、うちにもいますよ。青チップ好きのビーバーが。

記:2011.04.17


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三分 小説 備忘録

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