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模造記憶-新潮文庫
模造記憶


この卑しい地上に Upon the dull Earth (1954) / フィリップKディック 訳:浅倉久志 のあらすじ
初出 Beyond Fantasy Fiction 9(1954.11) 原稿到着1953 短編 第66作

シルヴィアは、精霊を呼ぼうとしていた。桶に一杯の羊の血。
それに彼らの嫌いな金属は一切、身に付けず。

恋人のリックは、彼女のその姿に戸惑っていた。光と熱のエネルギー体のような"精霊"。
それを呼び、楽しむシルヴィア。彼女はまるで、"魔女"ではないか?

やって来た"精霊"と共に楽しく踊るシルヴィア。しかし、"精霊"は危険な存在である。

「もう、やめようよ。こんな事」

しかし、神秘的な"精霊"を呼ぶ精神力は、彼女の自慢であった。自分は特別な存在なのだ。
私も、ただの人間ではなく、彼らと同じ、高い次元の存在になりたい!

そして、翌日。自宅の地下室に、"精霊"を呼び寄せた。危険だとリックは注意するシルヴィアは聞かない。
そして、シルヴィアは不注意に指を怪我してしまう。

「リック!大変!私、怪我しちゃった」
"精霊"達の動きがおかしくなった。シルヴィアの血に興奮したらしい。

そして、"精霊"達は彼女を連れて行こうとした。

「助けて!助けて!まだ、あっちへ行きたくない!」
とシルヴィアは叫ぶが、強力な光と熱に包まれ、

リックが気が付いた時には、黒焦げになったシルヴィアの焼死体があった。


リックはシルヴィアを生き返らせるために"精霊"を呼ぶ。
血の餌を与え、呼んだ"精霊"達の中の一人がシルヴィアだった。"精霊"達は、シルヴィアが、
自分達と同じ仲間になりたいのだと勘違いして、シルヴィアを"精霊"にしてしまったのだ。

しかし、シルヴィアは、今、本当に生き返りたいと思っている。

"精霊"が人間に戻る事はできる。しかし、それには生き返るための、生身の体が必要だ。
しかしシルヴィアの体は燃えてしまい、使う事ができない。

かつてイエスが、何もないところから、人間の姿になった事はあるのだが、
この"精霊"達には、そこまでも力はない。

しかしシルヴィアは懇願する、"人間に戻りたい"と。

そこで、"精霊"達は、うまくいくかどうか判らないが、彼女を人間に戻そうとする。

シルヴィアには妹がいた、姉ほど器量は良くなく、また純粋でもない女。
妹はリックに言う。姉はもう死んだのだ。生き返る事なんてない、と。

その時、妹に突然変化が現れた。顔が硬直し、痙攣したかと思うと、その顔が崩れ出した。
驚くリック!しかし妹の顔は、やがてまとまり、聞きなれたあの声が。
「リック!大変!私、怪我しちゃった」

そこにいたのは、シルヴィアだった。
「リック!わたし、戻れたわ!人間に」

喜ぶリック。シルヴィアは妹の体を通して、戻ってきたのだ。
「でもリック。彼らは"生きた体"を使ったのよ。
   もう彼らには制御する力が欠けているんだわ。大丈夫かしら?」

「でも君さえ帰ってきてくれれば僕はそれで良い!」
「私達は大変な事をしてしまったのかもしれない」

シルヴィアの家には彼女の両親がいた。
しかし、今、ソファに座っているのは...

男物の大きな服を着た、シルヴィアと、
エプロンをかけて家事をするシルヴィア!

「リック!大変!私、怪我しちゃった」

リックは、驚いて逃げ出す。しかしシルヴィア達は、次々と追ってくる。
「どうして行ってしまうのリック?私は貴方のために戻ってきたのよ!」

車で逃げ、ガソリンスタンドに入る。給油の男はシルヴィアではなかった。ほっとするリック。
しかし、給油を終えて振り向いた男の顔は、既にシルヴィアだった。
「リック!大変!私、怪我しちゃった」

"精霊"が変えた変化は、波紋のように広がり、今や世界中に。

きっと、ニューヨークのビルではシルヴィア達がオフィスで働き、
中国では、共産軍兵士のシルヴィア達が行軍。

イングランドの工場では、シルヴィア達が溢れ、
アフリカでは半裸のシルヴィアが、野生の狩にいそしむ。


疲れ果てたリックがアパートに入り、顔を洗う。
ふと顔をあげると、見慣れた顔があった。
「リック私、戻ってきたの。助けてちょうだい。お願い」



..............


いやあ、これ良いですね。この増殖のイメージ。最高です。
この感覚、うまく伝えられなかったら、ごめんなさい。

ビヨンド・ファンタジー・フィクションと言う、アメリカのファンタジー小説雑誌に
載った作品。この雑誌には、けっこう名作が載ったみたいです。

記:2011.04.11



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三分 小説 備忘録

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