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悪夢機械-新潮文庫
悪夢機械


調整班 Adjustment Team / フィリップKディック 訳:浅倉久志 のあらすじ
初出 Orbit Science Fiction(1954.9-10) 原稿到着1953 短編 第27作

犬は寝ている所を、書記官に起こされた。
「おい、仕事だ」
「ふあああ、判ってるよ」

「9時から開始だ。手筈は判っているな」
「大丈夫さ。安心しろ」

「計画を確認する。復唱しろ!T137地区の改変工事。"黒もじゃ君"の担当はエド フレッチャーの呼び出しで..」
「...」
犬は、また居眠りを始めていた。


エドは、コーヒーを入れていた。
「いそがしいわ。今日は私が先に出る日ね」
「ああ、僕はまだすこし時間がある」
共働きの妻を送り出して、さあ今日は、ゆっくり出社だ。

「さあ、時間だ..?..どうした!」
「ふあああ」
犬はまた、居眠りをしていた。書記官は慌てた。
「何、してるんだ。早く吠えろ。早く!間に合わないぞ!」

エドは、庭で愛犬が吠えているのに、気がついた。
「なんだ?一体どうした?」 とドアに向かった所。

「おはようございます」
犬の様子を見ようとした所に、セールスマンがやって来た。
セールスマンは、エドを押しとどめ、生命保険の話を始めた。

そのセールスマンは、話を止めない。エドはうんざりして聞いていた。
外では、書記官が慌てていた。
「た、大変だ。計画が、計画が、狂った!彼は時間内に、このエリアを出ない!」

エドは契約を済ませ、ようやくセールスマンにお引取り願った。
「しまった!遅れそうだ」
走って、バス亭へ急ぐ。今日は街が空いていた。この時間だと、車も少ないようだ。

赤信号で止まり、ふとビルを見上げると、壁の色が変だった。
灰色で、なんと言うか、生気の抜けたような...

見ていると、ボロボロと崩れた壁が、剥がれ落ちてくる!

危ない!
前の店に入り、「大変だ!あんたの店の壁が剥がれてるよ!」と。

しかし、店員はじっと黙ったまま。

それにその肌も灰色で、まるで..死人。
エドが、その腕に触れると、腕はボロボロと崩れた。
「うわあああ」

慌てて逃げるエド。その頃は、町中で崩壊が始まっていた。

走り、逃げる。必死で。

ふと気がつくと、会社の前だった。
とにかく、会社へ入り、ボロボロの街の事...いや、この遅刻の言い訳を考えないと。

階を上がって、オフィスに入ると、そこに居たのは、秘書のエヴァンス。
「いやあ、おはよう、ミス エヴァン...ス?」

エヴァンスの体は、ボロボロと崩れ落ちた!

「おい!誰かいるぞ。手違いがあった」
白い服を着た作業員がいた。エドを見つけると駆け寄ってきた。

(誰だ!こいつらは?)
彼らは驚いてへたり込んでいるエドに向かって、麻酔銃を打ち込んだ。

麻酔銃は、急所を外れた。エドは必死で逃げた。
ビルを出て、地下道を抜け...明るい道に出た所で、意識が消えた。

エドは、会社のビル前で、へたり込んでいる自分に気がついた。
明るい日差し、車の騒音、ビルのピカピカな壁。

俺は、夢を見ていたのか?


書記官は、上司のオフィスに呼ばれた。

「どうして、男が調整中の区域に、侵入して来たのだね?」

「はい、あの男エドの家には、セールスマンが来るのですが、その直前に、愛犬が鳴くのを聞き、裏庭に出ます。
   その間にセールスマンは帰り、その後、すぐにエドは会社に行きますので、充分余裕を持ち、あの区域には、
   当該時間にいない予定だったのですが、その犬の作業に、誤りがあり...」

「そうか、それで、エドを捕獲したか?」
「いえ。現在、捜索中です」


エドは、妻のオフィスに行った。そして、今日あった事を、話した。

「僕は怖いんだ、戻るのが」
「遅刻の事なら、説明したら許してくれるわよ」
「会社の上司にじゃない。あの白い服の男達に会うのが怖いんだ」

妻は、会社まで送ってくれた。

「このビル、どう?崩れそう?」
「いや、崩れない。絶対に崩れるわけがない」
「そう。じゃあ、また何かあったら連絡してね」

妻と別れて、会社に入った。

そこには、愛想の良いガードマン。親切な秘書、普段通りの同僚がいた。
(よかった。やっぱりあれは、俺の見た幻なんだ)

しかし、彼は気がついた。机の配置が何時もとは変わっている事に。
秘書の持っているバッグが、いつもの物とは違う事に。それに社長のダグラスが、

上司のトムの、全てが、少しずつ変わっている事に。
オフィスの細かい所を探せば探すほど判った。いつもとは変わっている。

ほんの少しだが、全てが、昨日とは違う!人間も。

彼は、妻に連絡するために、電話ボックスに入った。しかし電話はつながらない。

(うわわわわあ!)
突然、電話ボックスが揺れ、ボックスは2階へ向かって上昇し始めた!
まるでエレベータのように!

気づくとエドは、広い部屋にいた。


そこには、書記官がいた。白い服の男達も。

「あなた方は、何なんだ!」
「我々は調整班。世界を正しい道に導くために、行動している」
「それが、何で、俺の会社と関係があるんだ!」

「今回の改変は、君の会社の社長、ダグラスの若返りだ。これからダグラスが買うカナダの
   土地の開発中に、古代の遺跡が発見される。それは人類史を変える大発見であり、それに触発された
   ヨーロッパで、新たなジャンルの文化が勃興し、それがきっかけの一つとなり各国の協力関係が深まり、
   世界大戦が回避されるのだ。それが、やがて..」

「...あのお...いったい何の話をしているんですか?」

「わからんのも、無理は無い。しかし、ともかく人類のためにダグラスは、
   カナダの土地を買わなければならない。しかし、彼はもう年だ。最近は引退を考えている。
   そのために彼の考えを変えるために、彼の体を、賦活させる必要ができたのだ」

「ともかく、あなた方は、今まで、歴史を改変して来た組織なんですか」
「そう言う事だ」

「なぜ、私にそんな重要な事を話すんですか。話さえしなければ、
   私の見た幻だと思ったかもしれないのに」
「もう遅い。君はもう、妻に全て話してしまった」
「遅い?では、秘密を守るために私を殺すんですか?」

「いや、そんな事はしたくない。君が、この事を黙っていてくれればいいんだ」
「守ります。絶対に守ります」

エドは家へと帰った。
「貴方、今日はどうだった?」
「え?ああ、あれは、完全に僕の思い違いだよ。今日は普通に過ごしたよ。騒がせてごめん」

「普通に過ごした?おかしいわね。今日、貴方のオフィスに電話したのよ。
   そしたら、貴方は出て行ったって、言ってたわ。あなた、今日は、本当に何があったの?」

「いや、だから、何でもないんだよ」
「嘘!本当の事を言って!あなた、おかしいわよ!絶対、変よ!」
(ど、どうしよう...)

その時、ドアのチャイムが鳴った。
「奥様、この度、発明されました新製品。この素晴らしい掃除機を一度お使いになって下さい。
   特別キャンペーンで、無料で1ケ月ご使用ができます。ご不満があれば、いつでも返品が可能です」

「あら、あなた!これ、使いたかったのよ。ねえ、無料だって、使って良いでしょ?」
「もちろんだよ!」
(良かった。これなら何とかやって行けそうだ。ありがとう。君達の作業に、めったに抜かりはないね)


..............


2011年に映画化されるそうです
(アジャストメントと言う名前で、現時点では見ていません)。

この話しは、あまりに"ありきたり"です。
このニヤリとさせる"落ち"がなけりゃ、ただの"アホ噺"ですから、でも、
きっと脚本家さんは、この"落ち"以上のアイデアをてんこ盛りに、してくるんでしょう。

それが、けっして成功につながるものではないんですが...

で、エレべータの件は、ヴァン ヴォウトっぽい気がしたんですが、どうでしょう?

記:2011.03.20


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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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