世界の最先端を行く都市


シンガポール:Singapore

1月24日  曇り


マドラス――>シンガポール  インディアン・エアライン 2:00〜7:00


 マドラス空港の非効率極まりない搭乗手続きで、空港には
2時間半前に着いたのに、手続きが終わったのは出発予定時刻を30分も過ぎていた。 乗客は皆、インドの官僚的手続きの非効率さを非難し、いらいらしながら待ち続けた。 結果的に飛行機は予定時間よりも1時間半遅れて離陸した。 そして5時間後には、きれいなシンガポール空港で、10分間の通関手続きの後、ホテルへ向かうタクシーの中にいた。 「このシンガポールとマドラスの効率の違いは何だろう?」

 シンガポールは「ガーデン都市」の名にふさわしく、沢山の公園の緑と海に囲まれた超近代的都市があるという印象だ。33年前に訪れた時の印象が未だ鮮明に残っているが、今のインドと同様であった当時のシンガポールのごみごみした印象とは全く別世界に作り替えられてしまっている。「30年と言う歳月は、こんなにも都市を変えてしまうものか?」と驚きと共に、一方で心の隅に旅のノスタルジーを求めてきた自分にとっては、はぐらかされたような気分にもなってしまう。(写真:リバーサイドにはきれいなレストランが軒を並べ、その後ろには金融街の高層ビルが立ち並ぶ)

 この国は、英語を武器に国際化を早くから進め、アジアの金融センターの位置を確立してしまっている。 現在は、インターネットを張り巡らし、世界の中で最も進んだCyber Cityと言う評価のようである。本来冷たくなりがちな近代都市の中に、どことなく心休まる配慮を感じる。 「将来の都市はこうあるべき」と言う理想を追求しているのかもしれない。



 しかしながら、半日もすると、「いやにあの不潔でごちゃごちゃしたインドが懐かしくなってくるのはどうした事か?」 人が求めるものは、きれいに整備された清潔な空間ではなく、もしかするとごちゃごちゃしていてどこか無責任でいられる、あのインドの様な泥臭さが必用なのかもしれない。 「このシンガポールにも、何処かにそれが残っているのではないか?」と、ノスタルジーを求めてチャイナ・タウンに足を向けた。そこには、昔の面影を残す一角が、高層ビルと好対照を成して残っていた。 「あー、自分が求めてきたものはこれなのだ。」と古く朽ちかけた建物に触れてみて、自分の持ち物のように親近感を肌で感じながら、深い記憶を引っ張り出そうと目をつむった。(写真:昔の古びた建物の後ろに高層ビルが)
 このチャイナタウンだけは、ごちゃごちゃしている中に人々が群れていて、いやに活気がある。 色もどぎつく、音楽もチャイナ風の音楽ががんがん響いてくる。 匂いも中華料理の匂いが街全体に漂っている。 人は一方で清潔な環境と便利な生活を求めつつ、他方では、歴史と風土の様な最も泥臭い部分に憩いの場を求めずにはいられない動物なのかもしれない。 



 
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