マハーバリプラムは石窟寺院とは異なった「南インドの寺院建築様式である石造寺院が現存する。7世紀ごろ作られた」と言う事で、マドラスの大都会を脱出する事にした。 バスは駅の近くにあるバスターミナルから出るとホテルで聞いたので、先ずターミナルまでいって、目指すバスを探した。 このターミナルからは、おそらく50個所以上の町村にバスが出ているらしく、目指すバスがなかなか見つからない。 やっと探しあてたバスは、窓ガラスが入っていない、垢で光っているおんぼろバスで、「アーこれだから、たった15ルピーで70Kmも運んでくれるわけだ」と自分を慰めた。
南インドは一年中夏だから、窓ガラスなど必 窓ガラスが必要ない事は、海岸沿の快適なアスファルト道を走ってみてすぐに納得した。 明るい太陽と砂浜と、どこか南スペインのバレンシア地方を走っているような錯覚を覚える。 高い椰子の木が点在している点だけが異なる。 ぽつんぽつんと、マドラスの金持ちの別荘の様な豪奢なきれいな建物が海側の広大な敷地に点在し、「本当にこれがインド?」と思わせるような美しい景色だ。 約2時間の素晴らしいおんぼろバス旅の後、マハーバリプラムに着いた。
バス停から海岸に向かって500mも進むと、海岸寺院(Shore Temple)が現れた。 小ぶりだが木目の細かい彫刻が美しい。 一部は潮風に風化されて、その彫刻もシャープさを失っている処もあるが、切り石積みの三角形の均整の取れた美しい寺院が砂浜に建っている姿は、何故か感動を覚える。
この寺院への道端には、石仏彫刻をしている職人さんが沢山働いている。 親方風の人が、若い職人をしかっている。 この職人さん達は、来る日も来る日も毎日鑿と金槌で彫刻を作っている。 「インドには未だこの様な職人の徒弟制度が残っているのだ!」と感心しながら、次の石彫寺院に向かった。
「南インドは北インド、や中インドと全く異なったタミール文化圏だ」と言われる。 人々が小柄で、非常に穏やかで、おっとりしている。 日本語とタミール語はかなり同音同訓の語があると言われている。 「おそらく南インドのタミール人が、昔潮流に乗って、日本に辿り着いたのではないか?」と言われている。 仏教以前から交流があったらしい。 「日本人の得意とする、木目の細かい職人芸などの歴史も、もしかするとここタミールの人達が、仏教と共にこれらの文化を日本にもたらした可能性があるかもしれない。」と独り合点しつつ、日本の仏教文化との共通点に共感が湧いてきた。
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