7世紀の海岸寺院


マハーバリプラム:Mahabalipuram

1月22日 晴れ

マドラス<――>マハーバリプラム    バス・70Km:(15ルピー/\40)


  マハーバリプラムは石窟寺院とは異なった「南インドの寺院建築様式である石造寺院が現存する。7世紀ごろ作られた」と言う事で、マドラスの大都会を脱出する事にした。 バスは駅の近くにあるバスターミナルから出るとホテルで聞いたので、先ずターミナルまでいって、目指すバスを探した。 このターミナルからは、おそらく50個所以上の町村にバスが出ているらしく、目指すバスがなかなか見つからない。 やっと探しあてたバスは、窓ガラスが入っていない、垢で光っているおんぼろバスで、「アーこれだから、たった15ルピーで70Kmも運んでくれるわけだ」と自分を慰めた。

 南インドは一年中夏だから、窓ガラスなど必 窓ガラスが必要ない事は、海岸沿の快適なアスファルト道を走ってみてすぐに納得した。 明るい太陽と砂浜と、どこか南スペインのバレンシア地方を走っているような錯覚を覚える。 高い椰子の木が点在している点だけが異なる。 ぽつんぽつんと、マドラスの金持ちの別荘の様な豪奢なきれいな建物が海側の広大な敷地に点在し、「本当にこれがインド?」と思わせるような美しい景色だ。 約2時間の素晴らしいおんぼろバス旅の後、マハーバリプラムに着いた。

 バス停から海岸に向かって500mも進むと、海岸寺院(Shore Temple)が現れた。 小ぶりだが木目の細かい彫刻が美しい。 一部は潮風に風化されて、その彫刻もシャープさを失っている処もあるが、切り石積みの三角形の均整の取れた美しい寺院が砂浜に建っている姿は、何故か感動を覚える。 





この寺院への道端には、石仏彫刻をしている職人さんが沢山働いている。 親方風の人が、若い職人をしかっている。 この職人さん達は、来る日も来る日も毎日鑿と金槌で彫刻を作っている。 「インドには未だこの様な職人の徒弟制度が残っているのだ!」と感心しながら、次の石彫寺院に向かった。 






「南インドは北インド、や中インドと全く異なったタミール文化圏だ」と言われる。 人々が小柄で、非常に穏やかで、おっとりしている。 日本語とタミール語はかなり同音同訓の語があると言われている。 「おそらく南インドのタミール人が、昔潮流に乗って、日本に辿り着いたのではないか?」と言われている。 仏教以前から交流があったらしい。 「日本人の得意とする、木目の細かい職人芸などの歴史も、もしかするとここタミールの人達が、仏教と共にこれらの文化を日本にもたらした可能性があるかもしれない。」と独り合点しつつ、日本の仏教文化との共通点に共感が湧いてきた。


インド映画:          
 
 インドの映画製作は年間800本に及び、
 アメリカの製作本数を抜いて
世界一である事は余り知られていない。
 この映画が、未だテレビが全家庭
に普及しわたっていない
 インド大衆の最大の娯楽になっている。
 
今日22日は土曜日で、夕方の7時半頃映画館に行ったが
 既に最終回の切
符は売り切れており、近づいてきたダフ屋と値段交渉となった。
 35ル
ピーの定価の切符を「60ルピーで買わない?」と言ってきたで、
 「OK、
買った。」と50ルピー(\130)渡した。
 渋々了解したようで、とにかく
切符が手に入った。
 「Sathyam」というタイトルの映画で、会話はヒン
ドゥ語である。
 内容は理解できなくても、映画の内容とそれに反応する
聴衆が見たかったので、
 何の映画でもよかったのである。
 中に入ると、500席ぐらいのシートは全て大人、子供、そして女性客で満席となっている。
 インド映画は、日本でもテレビで何度か見た事は
あるが、
 比較的娯楽色が強く、勧善懲悪的な単純なものが多かった。
 今
日の映画も看板から判断して、それに近いものを選んでみた。
 言葉は全
く解らないが、内容は大筋理解できる。
 アランドロン張りの二枚目と岡
田真莉子似の美女が、歌あり、ダンスあり、
 アクションあり、スリルあり
の勧善懲悪調で、
 単純で派手なストーリーでハッピーエンドとなる。
 観
客は映画の内容にはまり込み、拍手や悲鳴、笑い声で答える。
 言葉の解らない
ない私さえ、3時間にわたって、飽きずに最後まで楽しまされた。
 底
抜けに明るく近代的で、インドの貧しい人にも希望と夢を与えてくれるインド映画は、
 庶民の娯楽として最高の位置にあるようだ。


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