カメ吉は、知らないおじさんにもらった。(ほんとの話)。
私がまだ地元の食品会社で事務員をしていた頃。
同じ会社の経理担当が、カメを拾ってきたのだ。
車で走っていて、道路に石が落ちている、と思ったら、それがカメだったらしい。
爬虫類は好きじゃないんだけど、ひかれるとかわいそう、ということで、車に乗せて連れてきてしまったのだ。
しかし、会社にはエサになるようなものはない。かわいそうなので、わりと爬虫類好きだった私が、とりあえず家に連れて帰ることになった。
飼い主が見つからなかったら仕方がない、うちで飼うしかないかな、とその時は思っていたのだが、次の日、飼い主はあっさり見つかった。
会社のすぐ近くのYさんというお宅でカメ飼ってたよ、という話を聞いて、連れていったところ、やはりその家のカメだったのだ。
Yさん宅では、ミドリガメを2匹飼っていて、ケージごと表で日光浴をさせていたのだが、どうやら誰かに蓋を開けられてしまい、逃げ出したらしい。
もう1匹はすでに保護されていたので、私の保護したカメもお返しして、それでめでたしめでたしとなるはずだった。の、だが。
Yさんが、「よかったらカメをもらってくれないか」と言い出したのだ。
聞けば、子どもが小学生の頃ねだられて買ったカメだったが、子どもはすでにあきてしまい、今ではYさんが1人で面倒を見ているとのこと。その子どもも中学生になってしまったし、もらってくれれば助かる、というのだ。
その時は、私が実家の建て替え工事を控えていて、しばらく引っ越す予定だったので、一旦は辞退した。
しかし、Yさんは諦めなかった(笑)
それから何ヶ月か後、会社帰りの私と偶然顔を合わせた彼は、再びカメの話を持ち出した。
もしよければ、今日連れて帰ってくれても構わない、という。
実をいうと、カメとの出会いに心惹かれる何かを感じていた私は、しばらく迷った末、結局カメたちを連れて帰ることにした。
本来の所有者だった娘さんの方も、最後のお別れに大して感慨はないように見えたので、こうなるのも運命だったのかもしれない。
とにかく、この日、カメ吉は私の家の住人となったのだった。
初めは2匹いたカメたち。
1匹になってしまった理由は、「カメ吉雑記」にあります。