エルサレムからのHOT NEWS
−イスラエル・パレスチナの紛争の解決を願って−

この記事はイスラエルより発信されている「NONVIOLENCE (非暴力)」のホームページより、製作者 ラエド・アブサリア神父様の許可を得て「聖地のこどもを支える会」で翻訳したものです。


オリーブ・ブランチ NO.192

イラク戦争のために祈る
(Munib A.Younan司教の説教)

エルサレムルーテル教会司教
聖ステファノドミニコ教会、エルサレム
2003年2月19日

聖職者の皆様、兄弟姉妹の皆様、

 私はこういう質問を受けました。「なぜキリスト教会は正義の問題に介入するのですか。なぜ教会は平和のために祈り、記事を書き、態度で示すのですか。それは政治干渉ではありませんか。キリスト教会の役目は福音を説き、教会の中で祈ることではありませんか?」と。

 私はこの質問に驚き、答えなければならないと感じました。「キリスト者はグロリアとキリエを歌いながら、正義について人間の問題に目を閉じることが出来るでしょうか?」

 生きているキリスト教会とは、福音を伝え秘蹟をとり行うことに忠実であり、と同時に、教会が存在している世界や社会に向け預言的メッセージを送る、そういう教会のことです。キリスト教会がその聖なる呼びかけを実現するとき、その言葉と行いで平和の助けとなる環境をつくり出すのです。平和のための共同体として忠実に生活し活動することにより、教会は聖霊の働きにより、平和のために奉仕し、守り、和解し、熟慮する、平和のための存在となるのです。このようにして教会は、世の良心となります。

 沈黙しないで平和がないのに人々が「平和、平和」と叫ぶようなときに真実を話すなら、教会は平和を守る存在です。このように預言的教会はいつもこの世の不正義の荒波に逆らって泳ぐのです。

 ディートリッヒ・ボンヘッファーはこう言いました。「名指しして罪を指摘し人々に罪に対する注意を喚起することは、教会の守護職の一部です。正義は一時的に、または永遠に国を高めるからです。もし教会がこれを怠るなら、不正の血の罪を背負うことになります。正義のみが戦争、災難、虐殺などからこの世と人類を救います。」このようなわけで預言的キリスト教会は、イエスの言葉を宣言します。わたしは、平和をあなたがたに残し、わたしの平和を与える。わたしはこれを、世が与えるように与えるのではない」と。(ヨハネ14:27)

 私達は今日、祈り、預言の声を上げるため教会に共に集まっています。真理、正義、平和、和解の声であるエルサレムの声が響き渡るよう、エルサレムの生きた教会として集まっています。私達は、真実が自由をもたらすから話すのです。今日私達は、私達の預言の声を、他のキリスト教世界(合衆国、ヨーロッパ、スカンディナビア、アフリカ、アジア、オーストラリア)の預言の声に和するため集まっています。これらの声が一緒になり、荒野の声となりますように。

 兄弟姉妹の皆様、東方正教会、東方正統教会、カトリック、福音教会の四つの家族である私達のキリスト教会は、戦争がどのようなものか経験しているので、いかなる戦争にも反対です。私達は、破壊、死、抑圧、不正義、そして家の取り壊しまで、どのようなものか知っています。その苦しみが正義、平和、真理と和解を証しする声となるようにメンバー全員と共に苦しんでいる教会です。

 私達には戦争は要りません。戦争は、子ども、女性、老人といった無実の人々を殺す破壊手段だからです。そしてどの国であれその社会的生産基盤を破壊します。そればかりか戦争は、人間の人道主義を殺し、私達の中にある神のイメージを破壊してしまいます。このため、マーティン・ルター・キングが言ったことを私たちも言います。「もし人生が生きるに値し人類は生き残る権利があると思うなら、私達は、戦争に変わるものを見つけなければなりません。ある日、宇宙船が太陽系外の宇宙空間を通ってすごい速さで進み、ミサイルが成層圏を通って死の高速路を切り開くのを誘導するなら、どの国も戦争で勝利を宣言できません。」

 私達は戦争を望みません。政治的、平和的手段や努力がまだ十分に模索されていないと信じるからです。私達は神が21世紀の人類に、力の論理ではなく、論理の力で違いや危険を解くだけの理性を与えてくださったと信じています。

 私達にはイラク戦争は要りません。パレスチナ・イスラエル紛争が政治家の裏庭になることを良く知っているからです。私の恐れは、中東問題の芯にある、この紛争の正しい平和的解決がないかぎり、平和、安全と正義が中東で実現しないだろうということです。

 戦争や破壊の計画に努力や貴重な時間を無駄にする代わりに、責任に応えて立ち上がり、全ての国に例外なく国際的合法性を実現しなければなりません。もし国際的合法性が実現されるなら、正義は行われ、中東諸国は尊厳、自己決定、平等、和解のうちに生きることが出来るでしょう。

 私達はイラク戦争を望んでいません。イラク戦争が西洋とイスラム世界間の戦争と取られるかもしれないからです。この戦争は宗教的政治的過激主義を急増させる恐れのある宗教戦争であるかのように見えるかもしれません。私たち、パレスチナ人であるキリスト者は、それが宗教紛争ではなく、権力の紛争であることを良く知っています。このため、私達は政治的決定者に要請します:中東にそのような体験をさせないでください。

 兄弟姉妹の皆様、私達は今日、生きた良心を持ち平和のために働いている全ての方、政府や教会関係、そして色々な宗教の代表者に挨拶を送りたいと思います。あなた方全員の声は世界に戦争の重大性について警告し、私達の地域に平和だけを求めます。それは高く評価されるだけではなく、破壊から人類を救う声です。

 預言者ミカの声をまじめに受け止めてください。先ず、ミカは正義について話します。「主は多くの民の争いを裁き、はるか遠くまでも、強い国々を戒められる」と。そして、破壊的武器を技術的、建設的な道具に変えることについて語ります。彼らは剣を打ち直して鋤とし 槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず もはや戦うことを学ばない。(ミカ書4:3)

 今日私達はエルサレムから、武器、破壊、殺戮、流血に費やされる世界中の全資金が、世界の絶えざる貧困を根絶するために使われるべきであり、さらには、教育のため、戦争や恐れの文化の代わりに平和の文化を構築するため、そして諸国に橋をかけるために使われるべきだと呼びかけます。多分わたしの呼びかけは、預言者ミカがそうであったようにナイーブでしょう。それは、戦争の太鼓が大きく打ち鳴らされている時に、非現実的に聞こえるかもしれませんが、正義の実現によってのみ平和と安全は享受出来るのです。

 兄弟姉妹の皆様、神がどのような戦争であれ防いでくださるように、そしてこの世の指導者を、人類を救う責任ある行動へ導いてくださるように、今日強く祈り求めましょう。国々の指導者のために、彼らがその権力を正義、平和、真理、和解を実現するために使うよう主の山上の説教を思い出して共に祈りましょう。平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる。(マタイ5:9)

 様々な見解に勝る平和があなた方の心と精神を主イエス・キリストに留めてくださいますように。アーメン。



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