エルサレムからのHOT NEWS
−イスラエル・パレスチナの紛争の解決を願って−

この記事はイスラエルより発信されている「NONVIOLENCE (非暴力)」のホームページより、製作者 ラエド・アブサリア神父様の許可を得て「聖地のこどもを支える会」で翻訳したものです。


オリーブ・ブランチ NO.191

消え行く地平線!

ハリー・ハゴピアン博士(KOG-KSL)

「平和が地平線上から消えてしまっただけでなく、地平線そのものが消えてしまった!」

 イスラエルの教皇大使ピエトロ・サンビ大司教は、アリエル・シャロン首相が先日のイスラエルKnesset(議会)の選挙で勝った直後に、ヴァチカンラジオでこの心痛に満ちた声明を発表した。現在に至る暴力路線が、二党間の行き詰まり打開に失敗したことを強調し、教皇の書簡に聞き入る人々に、真理、正義、愛と自由の四本の柱により平和が支えられていることを思い出させた。この円熟した政治家で、カリスマ的キリスト教指導者もまた、日ごと訪れる困難にもかかわらず、外国への避難より聖地に留まることを選んだ住民キリスト者の恐るべき不屈の精神と勇気を激賞した。

 そこでもし、平和の四本柱が真理と正義と愛と自由であるなら、イスラエル・パレスチナ間の将来の平和を支えるべきこの構築物が、私には、取り消すことの出来ない損傷の危機に立っているように思われる。心配な現実のほかに、つい十日前イギリスを母体とするChristian Aidがレポートを発表したとき、もう一つの陰鬱なエコーが響き渡った。「土地を失う:イスラエル、貧困とパレスチナ人」の題のもと、恐るべき速度で貧困化してゆく占領地における今日のパレスチナ人について記述している。このレポートは、西岸地区の60%、ガザ地区の80%のパレスチナ人が貧困生活にあると述べている。また、世界食料計画が、約百万人のパレスチナ人(全住民の殆ど三分の一!)に食料を供与していると言及している。イギリス上院でこのレポートを報告するにあたり、クレア・ショート(the British Secretary of State for International Development)は、今日のガザの栄養不良のレベルは、ジンバブエや他の貧しい国々のそれに匹敵すると指摘した。

 なぜ都市や町や村のパレスチナ人にこれらのことが起こっているのか? 水面化に横たわる構造上、組織上の原因は何か? そしてパレスチナの社会から貧困を根絶するため、それらの原因に挑戦できるのだろうか。ロジャー・リッデル(International Director at Christian Aid)は最近こう指摘している。「このレポートは、貧困と絶望の程度を際立たせるためパレスチナ人の個人的な証言を用いている」と。その四本のとがった軸は、「生命と地域社会を引き裂く封鎖と外出禁止令などのイスラエル占領政策、その直接間接の結果である通路の喪失、土地のコントロール、水資源の支配」に焦点を合わせている。レポートは最後に、イスラエル・パレスチナ紛争には公正で、永続する平和が第一であると勧告し、貧困根絶のために、西岸地区とガザ地区におけるイスラエル人の違法な占拠の終結を要求している。世界銀行によれば(イスラエルによるパレスチナ領の)「更なる封鎖による過激な締め付けは、パレスチナの経済を、長期間いかなる回復の展望も忘れ去られるような貧困のわなに押しやるだろう。」

 Christian Aid レポートの序文を書き、発起会で話をしたミカエル・ラングリッシュ(イングランド、エクセターの司教)は、<希望の不毛>について述べている。聴衆に、平和へのオスロ計画が政治的であると同様に経済的であったことを想起させ、恐ろしい状態が直ちに良くなるという確信が、パレスチナ地域社会で減退しつつあることを強調した。また、現地の東方教会、カトリック、プロテスタント共同体が聖地で証ししていることにふれ、祈りと抵抗、同様に支援と支持によってキリスト教聖職者が互いに手を携えあっていることを指摘した。

 先週の初め、イスラエル独立メディアセンター従軍記者Roy Isacowitzが「シャロン象を撃つ」という題で記事を書いた。ジョージ・オーウエルの1963年の短編小説に言及し、類推を用いてイスラエルを、パレスチナ人とその土地を植民地化するものとして描いている。イスラエル人は力と強さの認知を維持してきた。面子を失うことは最大の敗北だからであると、述べている。しかしながら、認知は見るものの目の中にしか存在しない。だから植民地化するものは、対象の反応に依存するようになり、支配者は被支配者の操り人形となった。

 Isacowitzは、イスラエル人は「みな現実を見る目を失った。<我々>はみな力と強さの恵みという錯覚にのぼせあがっている」とやや悔やみながら書いている。「占領が我々の社会的分裂と経済的崩壊の第一原因だとする、明らかに広く行き渡った認識にもかかわらず、我々は、sahib(白人のだんな様)の仮面を振り落とすことは出来ない。パレスチナ人に対して面子を失うよりは、螺旋階段をころげ落ちていくほうがましだからだ。」

 ところで合衆国と西欧のある国々は今日、世界治安に対するイラクの姿勢への恐れにもっぱら取り付かれている。かつて全アラブ世界で人口比最高数のPhDを誇りにしていたパレスチナ人が悲惨な運命に捨て置かれている。彼らは、Isacowitzがいうsahibsによる、貧困や苦しみ、また同様に政治圧力と服従から身を守ることを期待されている。その植民地ルールは、本来イスラエルの占領支配者の考えと行動を硬化させる。パレスチナ人は来る日も来る日も彼らの土地を失い続け、毎日毎日人間の尊厳が盗み取られていく。パレスチナ人は現代における最も長く、最も意気をくじく占領の一つを耐え忍んでいる。しかしながら、過去の全ての占領主義のように、Rajにおけるイギリス将校のように、コンゴにおけるベルギー将校やヴェトナムにおけるフランス将校のように、イスラエル将校もまた、自由を鎮めるのに失敗するだろう。植民地化された国はいずれ変わらず彼らの独立を勝ち取るため、いかなる形にせよ暴力に訴えざるを得なかった。間違っていることは承知で、インド、ケニヤのMau MauやモザンビクのFrelimoのように。

 ノーベル平和賞受賞者Desmond Tutu大司教はかつてこう述べた。「不正義と圧制は決して勝つことは無い。権力あるものは神が権力者に与えたリトマス試験紙を覚えておかなければならない。貧しく、ひもじく、声無き人々をどう扱っているか?」今日私が恐れているのは、我々皆が加速度的に恐ろしいほど、<対峙>のたくらみに絡め取られていき、我々の本能的な思考が必ずしも世界的な倫理や国際法によって作動しないようにクローン化されつつあることだ。

 Tutu大司教の言葉を読み返し、今日の聖地の状況を見る時、世界中の人が手遅れになる前に、貧しく、ひもじく、声無きパレスチナ人を想起するよう、なお一層の努力を祈るばかりである。



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