エルサレムからのHOT NEWS
−イスラエル・パレスチナの紛争の解決を願って−

この記事はイスラエルより発信されている「NONVIOLENCE (非暴力)」のホームページより、製作者 ラエド・アブサリア神父様の許可を得て「聖地のこどもを支える会」で翻訳したものです。


オリーブ・ブランチ NO.185

ベツレヘムの沈んだクリスマス
             
Hans Hollerweger(ハンス・ホーレンウェルガー)

 イスラエル軍の外出禁止令下に置かれた一ヶ月の過酷な生活の後、英語の教師であるスーザン・アタラ女史は高校2年生の学生たちに、「クリスマス発祥の町に、今年クリスマスは来るか?」という題材で作文を書かせました。今日ベツレヘムにおいてキリスト教徒は少数派です。けれどもベツレヘムの聖ヨセフ女子学校に通うキリスト教徒の学生が書いた手書きの作文を読むと、普段は知ることのない二年に及ぶ紛争下で生活をしてきたパレスチナ人たちの視点に触れることができます。

 「クリスマスを、外出禁止令下で軍用ジープと恐怖と共に過ごさなければならないなんて、特にベツレヘムにおいては、不合理であり受け入れがたいことです。」 Dalia Qumsiehはこう書いています。「少なくとも平和にクリスマスを過ごせるよう求めることは私たちの権利です。クリスマスは平和と愛について考える時です。しかし残念ながらベツレヘムではクリスマスは占領について考える時となってしまっています。」

 別の生徒、Amira Lamaはなぜ国際社会が介入しないのか疑問を投げかけています。「いったい世界はどうなっているのでしょうか?何が起きているのでしょうか?毎日泣き叫びながら目を覚ます小さな子供たちのことを本当にかわいそうに思います。私は毎日兵士たちの夢を見ます。パレスチナ人の自爆テロ犯がエルサレム在住のイスラエルの学童や通勤者の乗ったバスを爆破して以来、外出禁止令が敷かれています。ベツレヘムの人々は爆弾テロリストは市外の人間だと言っていますが、イスラエルの当局者は市内の人間だと言っています。」

 「できる限り、クリスマスのお祝いがしやすいように」と、昨日クリスマスに先立って外出禁止令を解除するとイスラエル兵が発表しました。ベツレヘム町役場の担当者のJamal Salmanは、これは望ましい第一歩ではあるけれど、解除がクリスマスの時だけでなく、恒久的なものでなければならないことも強調しています。このことだけでは、2年に及ぶ戦闘と深刻化する貧困によって町にたれこめる陰気なムードを取り除くには十分ではないと彼は語っています。また外出禁止令の影響は子供たちにも及んでいます。100年の歴史で初めて、聖ヨセフ学院でクリスマスの装飾が行われませんでした。というのも、外出禁止令によって女子学生たちが自宅に拘束されてしまったため、飾り付けをする時間がなかったのです。ここしばらく、たまに予告なしに外出禁止令が解除される時以外は、生徒たちはずっと家に縛り付けられた状態が続いています。禁止令が中断されるとすぐに、生徒たちは急いで学校に行って先生に会ったり試験を受けたりしますが、またすぐに監禁状態に戻されてしまいます。聖ヨセフ学院の生徒たちが作文を提出してきましたのは、先週の金曜日、禁止令が一時的に解かれた時のことでした。

 この作文課題は、アタラー女史がここ2年間続けているものです。フルブライト奨学生であり聖ヨセフの卒業生であるアタラー女史は、日記や作文を書くことを課題として生徒に与えています。アタラー女史は、作文を書くことによって、傷ついた心を癒すことはできなくとも、少なくとも戦争あるいは最近のイスラエル軍の占領によって、混乱の思春期を強いられていることに対して、生徒たちが気持ちを整理するための一助となればと考えています。「外部の状況を変えることはできなくても、生徒たちの心を助けることをしたい。」とアタラー女史は語ります。

 アタラー女史と学生の許可を得て作文を読んでみましたが、その内容は祝日を失われてしまったことへの怒りと投げやりな気持ちで満たされていました。しかし中には、世界がどんな扱いをしようと、霊的に意味のあるクリスマスにしようと固い決意を示している作文もありました。

 「クリスマスがやってきても、状況は悪化する一方です。けれども私たちは尊大であってはならず、イエス様のように謙虚でなければなりません。クリスマスの本当の意味を理解していれば、クリスマスは素晴らしいものです。クリスマスとは、互いを助け合い、楽観的に考え、子供たちの心に幸福を広めることです。今年のクリスマスは、家族と共にクリスマスをお祝いできないかもしれないので、悲しく思います。けれども、あらゆる問題に立ち向かえるよう神様が力を与えてくださるように、できるだけ祈らなければなりません。」 
別の生徒、Roula Muslihは作文の中で果敢に抵抗することを誓っています。クリスマスの日には、今までにないくらい幸せな気持ちになると彼女は言います。「主なる救い主、イエスが生れるのですから!このことは、銃撃戦があっても爆撃があっても、外出禁止令があっても変わることはありません。外国の人々には私たちのことをかわいそうだと思って欲しくありません。イスラエル兵が受け入れようが入れまいが、私たちはクリスマスを必ず迎えるわけであり、イエスは必ずお生まれになるのですから。」
 イスラム教徒の学生Shatha Ta'amrehは、断食明けの祭りであるイード・アルフィトルについて同じような感想を書いています。この祭りの時には外出禁止令は解除されませんでした。

 「母はいつもの通りにコーヒーやクッキーを用意しましたが、誰も来ませんでした。3歳の弟はいつものように叔父さんがやってきてお小遣いをくれるのを待っていましたが、叔父さんは来ませんでした。私の周り中の生活が逆さまになってしまったような気がしました。町には人っ子一人おらず、遊んでいる子供もいませんでした。世界中のイスラム教徒にとってはおめでたい日なのに、泣いたらいいのか、それとも楽しい振りをしなければならないのかわからず、心の中に大きな穴が空いてしまったような気がしました。」

 こうした作文についてどう思うかと、イスラエル防衛軍の司令官Jacob Dallalに聞くと、軍としてもベツレヘムにはいたくないのだけれど、パレスチナ当局が対イスラエル攻撃(自爆テロ)を防ぐことができなかったために、軍が町を侵攻しなければならなかったのだと言っていました。

 「私たちだって完全に撤退したいと思っている。しかしもし軍の存在がなければ、エルサレムの町でバスの爆破がまた起きてしまう。学生たちが不便を強いられているのはわかるが、エルサレムにテロ攻撃があるよりもよっぽどマシだ。」




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